もくじ
イボ(尋常性疣贅)とは?
いぼとは、皮膚より突出する「出っ張ったできもの」のことをさす俗称です。一般的に皮膚科において「いぼ」とは、「尋常性疣贅(verruca vulgaris)=ウイルス性いぼ」のことを云います。
ウイルス性疣贅(イボ)の原因は、「ヒト乳頭腫ウイルス(ヒトパピローマウイルス;HPV)」によって起きるウイルス感染症です。現在、いぼウイルス(HPV)には、DNA配列から220種類以上の型があることが判明しています。
好発部位は、手指や足底・足趾などのキズがつきやすい露出部です。顔を触ってしまった傷口から「いぼ」ができたり、アトピーによる掻爬に伴い肘窩、膝裏などに「いぼ」が多発することもあります。
症状としては、周囲の角質化傾向を伴った「ざらさらとした結節(しこり)」を形成し、血管が角質に侵入するために表面からは「赤黒い点々」として見えるようになります。角化の強いものでは、「魚の目、タコ」との鑑別が難しくなり、角質をしっかり削って判定しないと区別がつきません。
手足以外の角質化傾向が弱く皮膚が薄い部位では、表面に突起がある「乳頭腫状」になります。診断のためには、ダーモスコピーで乳頭腫内に血管の侵入があることを確認します。通常、いぼでは痛みは伴いませんが、しこりが大きくなってくると皮膚が圧迫されて「痛みや違和感」が出てくる場合もあります。
大きさは「小豆粒大~一円玉大」のことが多いのですが、大きくなると1つのいぼで最大で「ゴルフボール大」になることもあります。長く放置した「いぼ」では、周囲に拡大して多発・集簇する「大きな局面」を形成します。
治療は、感染した表皮基底細胞である「いぼの芯」を除去することです。保険適応として主として「液体窒素による凍結療法」が用いられます。足底疣贅などでは周囲の角質化した部分を削り取ってから治療を行う必要があります。スピール膏などのサリチル酸外用・ヨクイニン内服も保険適応です。
発症初期のものでは、液体窒素凍結療法が非常に有効なのですが、長年放置してしまい「大きくなったいぼ」では難治性になってしまうことが問題です。活性型ビタミンD3外用などと伴に、「モノクロロ酢酸、グルタラール、フェノール等の腐蝕治療」も併用されることがあります。
その他のオプションとして、ブレオマイシン注射、インターフェロン注射、イキモミド外用、レーザー治療などが各々の医師の判断で用いられることもあるようです。
父(先代院長)のあとを継承し、いぼ治療には「こだわり」を持って治療にあたってきました。難治となってしまった「いぼ」では、なかなか「これだと治る!」という決め手となる治療がないとされる一方、「いぼの芯の取り方」には多くの「コツ」があります。当院では、なるべく患者さんの費用負担を減らすべく保険適応である「液体窒素凍結療法をしっかり行う」ことで治していく方針で「イボ治療」に対処しております。
角化の強い難治性のイボでは、サリチル酸外用・活性型ビタミンD3外用に加えて、腐蝕療法の一つである「モノクロロ酢酸」も用いております。経過の長い「いぼ」では、一度に治すことは困難ですが、一緒に頑張っていきましょう。自己判断での、市販薬治療はやってはいけないと事となります。かえって、イボが大きくなってしまったり、難治性となってご来院する方が多くなっております
以下、いぼの種類、鑑別疾患、原因、症状・治療法などにつき詳しく解説していきます。本ホームページはブログ型となっており、「いぼ治療情報」につき適宜追加していく予定です。
イボって、そもそもなんですか?
「いぼ」は、皮膚から突出したしこりを指す「いわゆる俗称」ですので、ウイルス性のイボ以外にも様々な疾患を包括する言葉となります。
尋常性疣贅診療ガイドラインに基づく「皮膚科におけるいぼ(疣贅)の定義」には、下記の3つが含まれます。
ウイルス性イボ(尋常性疣贅)
いわゆる「いぼウイルスによる感染症」であり、本来の狭義の意味では「いぼ=ウイルス性疣贅(尋常性疣贅)」のことを云います。下記の2つのいぼは「加齢により出来るイボ」であり、原因がそもそも異なります。
軟線維腫(アクロコルドン;首イボ・脇イボ)
首、脇の下など皮膚が柔らかい部位に出来る加齢に伴う「イボ状の突起」です。基本的には良性ですので「様子をみても」構いません。ご希望がある場合には、小さなものでは液体窒素凍結療法が奏功します。沢山ある場合や色白の女性の方では、色素沈着などが残ることが問題となります。大きくなってしまうと直径1~3cmほどの大きさになることもありますが、その場合には局所麻酔下での切除手術が適応となります。
脂漏性角化症(老人性イボ)
顔面や手背などの露出部で日光が当たりやすい部位にできます。お若い方ですと20代から発生することもあります。別名で「老人性疣贅」とも呼ばれますが、通常は30代後半からできることが多くなります。基本的には加齢変化によって出来る良性の出来物なので、「放置しても」構いません。ご希望がある方には液体窒素凍結療法で対応致します。
実は上記の3つは混在することもあり、診断にはダーモスコピーが役に立ちます。やや大きめの軟線維腫のうえに刺激が加わり、ウイルス性いぼが併発することもあります。また、ご高齢の方では、顔や頭にできた脂漏性角化症の一部に「乳頭腫状のウイルス性いぼ」が出来ている例もみられます。
疣贅(いぼ)の種類は?
ウイルス性疣贅の中にもいくつかの種類があり、尋常性疣贅がもっとも多くなります。ミルメシア・扁平疣贅・尖圭コンジローマなどの有病率がこれに続きます。
尋常性疣贅
もっとも多い「ウイルス性いぼ」が尋常性疣贅となります。足にできた角化の強い「いぼ」は難治性となり治療に反応が悪いため、「足底疣贅」と別呼称で呼ばれることがあります。大きくなると盛りあがって角質化が強くなったり、一カ所に多数集まって出来たいぼのことを「モザイク疣贅」と呼び、とくに難治であらゆる治療に反応しにくいとされます。いぼ治療後に生じる「ドーナツ疣贅」や爪周囲にできる「爪囲疣贅・爪甲下疣贅」も治療に難渋することが多くなります。一方で、顔首によくできる「糸状疣贅」は液体窒素療法に反応しやすいです。
扁平疣贅
顔面、手の甲に良く出来る「盛り上がりの少ない褐色を呈する平たいイボ」のことを指します。若い年齢層にできることがあり、「青年性扁平疣贅」とも呼ばれます。液体窒素療法には反応はよいのですが、露出部のため治療後に生じる炎症性色素沈着が問題となります。ヨクイニン内服が奏功する例があり、まずは内服療法で治療すると良いでしょう。
尖圭コンジローマ
肛門周囲や亀頭・外陰部など皮膚粘膜移行部にできるカリフラワー状に盛りあがったもので、主としてHPV-6/11の感染によって生じます。亀頭包皮にできると脂漏性角化様の形状をとる場合があります。性行為によって移ることがある「性行為感染症」のひとつです。
ミルメシア
主に小児の足底・手のひらに出来ることが多いドーム状に盛りあがった「いぼ」です。通常のいぼよりも、やや硬く中央が噴火口状に陥凹することが特徴です。あかみや痛みを伴うことが多くなります。
色素疣贅
別名「くろいぼ」とも呼ばれ、HPV-4/65の感染症です。黒色調を呈するいぼが「江川らの提案」により別分類とされました。
点状疣贅
手のひら、足の裏などに見られる直径1mm程度の白色調の点状角化病変を呈するいぼです。健常者の中にも、数個の点状イボがある方もいますので、数が多くない場合には治療しなくとも問題ありません。数が多くなってしまった場合や患者さんのご希望がある場合は、細かないぼの「ひとつひとつ」に液体窒素をあてて治していきます。
足底表皮のう腫
足底部の硬いしこり・ウオノメを主訴として受診される患者さんにみられます。HPV-57/60が検出され、のう腫形成の原因としての「いぼウイルス感染」が示唆されています。荷重部にできることが多く、形成外科での手術をお勧めするようにしております。
疣贅状表皮発育異常症
遺伝性で高発癌型の特殊型のいぼとなります。
イボ(尋常性疣贅)の原因・どうしてできるの?
いぼの原因は、パポバウイルス科のヒト乳頭腫ウイルス(human papilloma virus;HPV)による表皮細胞の感染です。HPVは直径55nm(ナノメーター)ほどの二本鎖環状DNAをもつ正20面体の球形ウイルスです。主として、HPV-2の感染がいぼの原因となりますが、その他では4,7,26,27,57型などが患部から検出されます。
一部の粘膜部に親和性の高いHPVは、子宮頸がんの誘因となることが分かっていますが、通常型の尋常性疣贅では、「いぼが癌になることはない」とされています。
いぼができる詳しい発生機序には不明な点もありますが、
- 主として環境中に「いぼウイルス」が多数存在していること(自然発生)、
- 器具などでの間接接触・他人からの直接接触感染・掻爬による自家感染、
- 皮膚の微小な外傷から侵入し皮膚・粘膜上皮の「幹細胞」に感染を起こすこと、
- 表皮は常に代謝されるため、表皮基底細胞が「感染のターゲット」であること、
- いぼに対する免疫力には個人差があり、難治性となる方がいること、
- 深い「いぼの芯」は、表皮基底細胞の存在する「毛穴の奥や汗腺」にも入り混んでしまうこと、
などが臨床的な経験から推察されています。
表皮基底細胞に感染を起こした部分を「いぼの芯」と呼びます。表皮基底細胞の細胞分裂と伴に、いぼウイルスの複製が進行し、顆粒層にて成熟ウイルス粒子が完成するとされます。そして、表皮角質細胞が垢(落屑)として脱落すると伴にいぼウイルスが患部から排出されて、他部位への感染を引き起こします。
いぼの構造としては、いぼウイルスに侵された感染細胞に加えて、表皮内で「肉芽種=血管のかたまり」を形成して、反応性に増殖した角質や乳頭腫状に盛りあがった局面を形成します。治療の手順としては、いぼ表面の角質化した部分を削り取りつつ、イボ本体の肉芽種を壊死させていくことです。いぼが治ってくると、肉芽種も縮小していき、「イボの芯部分」が現れてきます。
いぼが完全に取れると、皮膚は元通りの平坦な状態にもどるか、もしくは「いぼのあった部分」が軽く陥凹して治っていきます。
疣贅の好発年齢・疫学は?
とくに、小児の手掌や足底などに「いぼ」は好発します。一方ではっきりした原因は分かりませんが、生まれたばかりの赤ちゃんにみられることはありません。小さなお子さんでは、4,5才くらいの幼稚園児くらいから見られることがあり、小学生の「いぼ」で来院される患者さんも頻繁にみられます。
小児の患者さんの特徴としては、単発~数個までの「いぼ」であることが多く、多発してきたり、拡大・集簇することは稀となります。ミルメシアという「蟻塚いぼ」タイプのやや大きないぼができることもあります。お子さんでは、痛みを伴う「液体窒素凍結療法」を行いにくいのですが、幸いにも「活性型ビタミンD3外用やサリチル酸」などの外用療法である程度小さくしていくことが可能です。イボ自体も小さなことが多く、液体窒素療法を行うと治療に非常に反応しやすいことも特徴です。
小学生高学年~中学をすぎる頃になると、「ご自身でいぼをいじって」しまった結果として、指などに多発したり、やや大きないぼとなって来院される患者さんが多くなります。手指や足の爪回り・足底の大きめとなったものでは、通常の「液体窒素凍結療法」が効きにくくなってしまいます。
成人になって「いぼが初めて出来る方」もおり、早めに受診された方では液体窒素治療が数回で済む場合もあるのですが、ご自身で「スピール膏などの自己治療」を行ってしまったりすると、徐々に大きさが拡大したり、他の部位への感染も起こしてしまいます。成人でのいぼの特徴としては、ごく初期の小さなものでは「液体窒素療法の比較的反応がよい方」がいる一方で、すこし大きくなったり、多発してしまうと「軽めの液体窒素凍結療法」を繰り返しおこなっても治りにくくなってしまうことです。
当院でも20代から40代くらいまでの「多くのいぼの患者さん」がご来院いただいております。一方で、50代以降になると、手指、足底などの方の割合が減っていき、顔首頭などの「いわゆる糸状疣贅」や「乳頭腫状いぼ」の方が多く見られます。70代以降で手足にいぼが出来る方は非常にめずらしくなり、80代で手足のいぼで受診された患者さんは今までに経験がありません。推論として「いぼ」には、出来やすい体質がある方がおり「繰り返すことがある」一方で、加齢と伴に何らかの免疫的な機序が働いて、徐々に出来にくくなるものと考えられます。
ウイルス性いぼの症状・好発部位は?
潜伏期間は1~3ヶ月程度と考えられており、初期の小さなものでは鑑別が難しい場合があります。潜伏感染するともされ(不顕性感染)、半年程度経過してから「はっきりとイボ」としての症状がでてきたり、イボの治療中にも周囲に小さないぼが現れてくる場合もあります。
はじめは、小さな小丘疹として初発して、増大するとともに周囲が角化したり、疣状に隆起して2,3mm程度~2,3cm大になることもあります。単発性のこともありますが、多くのいぼでは、数が増えて「多発性」となり、一つのいぼの周囲に次々と「新しいイボ」が発生して、集簇・癒合した局面を形成します。
足底や指先では、角化傾向のつよい「ざらざらしたイボ」となることが多く、皮膚が柔らかい場所では、「表面に細かい突起」がある乳頭腫状のいぼとなることが多くなります。その多くでは、痛みなどの自覚症状がないことがほとんどですが、足底や指先などで大きくしこり状になってしまうと、歩行時や手を使うときに違和感や痛みがでてくることもあります。
「いぼ」は表皮の基底細胞レベルに至る小外傷から発生するとされ、好発部位としては「擦れたり、傷がつきやすい部位」にできることが特徴です。
- 足指先などで靴と擦れたり、当たる部位。
- 足底では、「タコ・ウオノメ」のある角質に傷がついて。
- 足趾の趾間部では、「趾同士」が擦れてキズがついて。
- 指先では小外傷などが原因となって。
- 手指の爪回りでは「ささくれ・甘皮」をいじってしまった傷から。
- 老人性いぼ、軟線維腫を触って傷がついた結果として。
- アトピーに伴う肘窩、膝裏の掻爬に伴う掻き傷から。
- 髭周りの毛穴の髭剃りなどの小外傷から増えて。
などのパターンがあります。
さらに、掻爬・小外傷にともなうケブネル現象で「線状に配列」することもあります。以前、受診された患者さんでは「サッカー」で転んでスパイクで傷がついた部分に一致して、線状にいぼができている方もいらっしゃいました。
鑑別疾患について
いぼの鑑別疾患として、最も多いのが「魚の目・タコ」となります。一見、角質表面が粗造であっても削ってみると「角質」が取れたあとの皮膚がきれいで「単なる魚の目」であったりすることもありますし、魚の目と訴えて来院される患者さんの中で、削ってみると「ウイルス性いぼ」であったということも良くあります。見た目での診断は困難であり、角質層をしっかり削っていく技術がないと鑑別が困難でしょう。
顔面・頚部の疣贅(いぼ)での鑑別疾患は、汗管腫・脂漏性角化症・ほくろなどを初めとして「基底細胞種・有棘細胞癌・悪性黒色腫」などの皮膚癌の鑑別が必要となります。
疣贅の診断はどうするのでしょうか?
いぼの典型例では診断は難しくありませんが、視診を含めた理学的所見をしっかり確認するようにします。いぼの感染経路となる微小外傷を起こしやすい「靴の擦れ・手荒れ・髭剃り」などの確認を行います。
足底などで角化の強いイボでは、角質層のみを出血させない「ぎりぎり」で削って、下床に見える乳頭腫構造や角質層への血管の侵入がダーモスコピー上で確認できると「いぼと診断」する根拠となります。いぼの初期では、指紋の皮丘部分にできるために、「皮紋を開大」させる所見がみられます。顔面のイボにおける他疾患との鑑別にもダーモスコピーが役立ちます。
いぼの診断では通常は生検まで行うことはしませんが、もしも少しでも悪性所見が疑われた場合には「皮膚生検」を行う必要も生じます。いぼが非常に多発する例では、「基礎疾患として免疫不全」などを疑って、HIV(エイズ)をはじめとした性感染症のチェック・血液検査をおこなう場合があります。特殊なケースとして、いぼ(疣贅)という最終診断がつきにくい場合には、大学病院等でPCR法をもちいたHPV遺伝子型同定検査が行われることもあるようです。
いぼの治療法・取り方は?
おもに、液体窒素によるいぼ冷凍凝固療法が”有効性と保険適応があるため”に多く用いられます。一方、手掌や足底などで液体窒素の効果が不十分なときな外科的切除や炭酸ガスレーザーも行うこともあるとされます。よく苡仁内服(ハトムギエキス剤)、活性型ビタミンD3製剤、モノクロロ酢酸、グルタラール外用、ブレオマイシン局注などが、治療による反応を見ながら、各々の医師の経験と判断により適宜追加されて行われます。現在のところ、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)に特異的に効果を示す抗ウイルス薬はありません。
イボ治療の原則として、「基本的に表皮基底細胞レベル」のウイルス感染であるため、治療後に「瘢痕や醜形」を残すような治療法をできる限り避けるようにします。通常、一つの治療法のみ行っていて反応が悪い場合には、「そのまま治療を続けても無効」である場合が多くなります。
※以下に各治療法について当院での使用頻度順に解説していきます。なお、参考として尋常性疣贅診療ガイドラインの推奨度を記載します。
液体窒素による凍結療法(推奨度A)
マイナス196℃の液体窒素を綿棒に含ませて患部を冷凍凝固させる「綿棒法」がおもに用いられています。医院によっては、専用容器による液体窒素スプレー法を行うこともあります。顔などの小さないぼでは、液体窒素で冷却したピンセットで掴んで患部を冷やす「ピンセット法」も行われます。
通常行われることの多い「綿棒法」では、いぼの大きさに合わせて「数種類の太さの綿棒を作成」しておいて、いぼの大きさ・深さに応じて使い分けていきます。一部の医院ホームページではスプレー法の方がすぐれているとの記載もみかけますが、綿棒法においても充分治療効果をあげていくことが可能です。液体窒素療法は、「いぼが取れるまで」2週間おきに繰り返し施行していきます(下記の写真参照)。
液体窒素治療においては「綿棒を圧抵する」との記載もみかけますが、これは誤りです。組織を凍結するためには綿棒の大きさを選択し、もしくは組み合わせて「いぼ部分に軽くあてがって」、イボの芯に向かって冷気を流し込むイメージが良いと当院では考えております。決して、圧を掛けておしつける必要はありません。
いぼ冷凍凝固法のあとは、「疼痛や水疱形成を起こすことが良くない」との考えもあるようです。液体窒素凍結療法の効果を最大限に挙げていくためには、1,2日程度痛みが残るくらいが「丁度良く」、軽めの血豆(水疱)を作るイメージで凍結した方が治療に対する反応が良くなります。治療ガイドラインにおいても、治りにくい「足底疣贅」に対して、すこし強めに液体窒素を行っていくことが推奨されています。
ガイドライン記載の液体窒素療法の有効性は、0~69%と大きく開きがあり、これは「治療を担当する医師によって手技の熟練度が一定しない」という問題があることを示しています。凍結の強度は、部位や病型によって適宜調整していく必要があります。治療間隔は、2週毎が一般的ですが、3週間を超えると治療効果が落ちるためあまり間隔を開けすぎないようにします。
いぼ剥ぎ法(推奨度C1)
いぼ治療の大家である江川清文先生が提案した方法です。局所麻酔を行った上で、眼科用メスを使って「疣贅組織をいぼの芯まで」完全に剥離切除する方法です。いぼの芯部分がどの深さにあるかを、見極める「経験と腕が必要な技」であり、誰でも出来ることではないと思われます。切除後は、芯部分を電気メスにて止血・凝固して治療を終わりますが、疣贅組織を取り残すと再発する「難易度の高い手技」となります。
当院でのいぼ剥ぎ変法①
顔面、手背等の柔らかい部分以外では、「疣贅に感染した部位でいぼ表面周囲の角化を伴う」ことが多くなります。当院では、角化の強い足底疣贅などの大きないぼに対して、いぼ本体の肉芽種(血管の塊)をぎりぎりで残して「角質部分を完全除去」してから液体窒素治療を行っております。通常、角質除去には局所麻酔は必要ありません。
角質化の強い「いぼ」では、硬くなったいぼ表面から液体窒素を当てても治療効果を挙げることが出来ません。液体窒素凍結療法は、凍結を行う深さを「いぼの芯」のある必要充分な深さレベルまで施行することが肝要となります。
当院のいぼ剥ぎ変法②
皮膚の柔らかい部分に液体窒素療法を行うと壊死した「いぼ」は、痂皮化して2週ほどで自然に取れた状態となり、脱落することが多くなります。一方で、爪周囲や足底疣贅では角質化がつよくなり液体窒素療法後に自然に角質層は脱落しません。したがって、治療のたびに、壊死に陥ったいぼ組織と角質を削り取っていく必要があります。
この時に、前回行った凍結療法が不十分ですと「いぼが壊死に陥らずに」、削るとすぐに出血してしまって治療が進みません。ある程度の「血豆」になるくらいの液体窒素をあてていくと、いぼ組織が壊死して「少しずつ小さくしていく」ことが可能です。残存するいぼの表面を「出血がすこし見えるぎりぎり」で削っていく技が必要となります。
ヨクイニン内服・漢方薬(推奨度B)
ヨクイニンとは、ハトムギの皮を除いた成熟種子を乾かしてできた生薬で、古くから肌の水分を維持し美肌効果があり「いぼ」に有効とされ、日本国内では保険適用を有しています。いくつかの症例報告での検討があり、有効性は8割前後とされます。有効な場合には「いぼの周囲に赤く炎症がおこり」、ポロリといぼが自然に取れたというお話を聞きます。いぼが多発している方には、当院では初診時から処方をさせて頂いております。
副作用は、胃部の不快感や下痢などの消化器症状であり、軽微なものに留まります。投与量は錠剤で1日18錠、散剤で1日6gが適応ですが、「用量依存性に効果を現す」とされており、内服可能な場合にはしっかりと継続することが大切です。
活性型ビタミンD3外用(推奨度C1)
2004年江川らが、Brtish J Dermatologyにて、免疫抑制状態の「難治性いぼ」に対して、「サランラップによる密封療法」を行って有効であった症例を報告しています。活性型ビタミンD3外用は、「過剰な角質化の抑制」だけでなく、いぼ本体の消退効果も期待出来ると当院では考えております。
また、2007年Inabaらは、活性型ビタミンD3外用に加えて、サリチル酸絆創膏(スピール膏)を併用して18例中、13例で治癒した症例報告を行っています。とくに、本療法は10才以下の小児に対して有効なことが多い印象です。
サリチル酸外用(推奨度A)
サリチル酸は、「硬くなった角質軟化作用」に加えて、イボに対する免疫賦活作用があると考えられています。英国いぼガイドラインでもサリチル酸外用は高い推奨度であり、その後の報告においても「液体窒素凍結療法群で49%の治癒率、サリチル酸外用で19%の治癒率」であったとされています。サリチル酸外用は「角化傾向の強いイボ」に対して「液体窒素凍結療法」と組み合わせて用いられる場合があります。
海外では、50%程度の高濃度のサリチル酸クリームが市販されているとのことですが、国内で手に入るのは、処方薬としての10%サリチル酸軟膏や50%サリチル酸絆創膏(スピール膏)があります。なお、特定の大学病院においては50-60%の高濃度サリチル酸軟膏が院内製剤で処方されることもあるようです。
副作用としては、皮膚びらんなどの化学損傷などを起こすことがあり、高濃度のものを使用時には周囲皮膚への刺激に注意が必要です。
化学的な腐蝕療法(推奨度C1)
モノクロロ酢酸
酢酸同様の「腐食作用・蛋白変性作用」がある強酸性の液体です。比較的古くから皮膚科医のあいだでは使われており、ガイドライン作成委員である江川清文先生も「有効性を実感している」と成書のなかで述べています。お子さんに対する「痛くない治療」として有名ですが、深い疣贅の患部に直接使う場合には、治療時に疼痛が強く出る場合があり事前の説明と注意が必要になります。
あくまで強酸であるため、眼に触れたりしないように充分な事前説明が必要となりますが、当院では「深めのいぼ治療」に於いて、「いぼ本体がみえてきたとき」に液体窒素凍結療法と組み合わせて使用すると「イボの芯」まで良く効いてくる印象です。海外ガイドラインでの推奨度は高くないものの、液体窒素凍結療法と同等の有効率であったとするもの、本法では足底疣贅に80.5%の有効率であったとする報告があります。
グルタールアルデヒド
20%ステリハイドⓇ液を綿棒などを用いて疣贅の表面に塗布します。皮膚が褐色になるまで塗布を行っていきます。一方で本法は、いくつかの症例報告での有効性が述べられているのみに過ぎず、アレルギーによる感作のリスクなど人体に有害であるため、ガイドラインでも積極的には推奨されていません。
フェノール
いぼ治療に有効なことがあるとされ、高い腐食作用をもち、たんぱく質を凝固します。疣贅治療に保険適応はなく、腐食作用が強いため治療に当たっては注意を要すとされます。当院では行っておりません。
いぼ地蔵参り(オプションとして)
日本各地には、「いぼ取り」に有効とされる「いぼ地蔵」が各地に残っています。当院では、いぼ治療には確実に「なんらかの免疫的な機序」が働いて治ることがあると考えております。治りにくい「いぼ」では、近くのいぼ地蔵にお参りして、「治そうと強く念じること」が、いぼが治る免疫的機序のきっかけになることがありえます。お近くのベテランの皮膚科の先生からも、治りにくかった「足底疣贅」の患者さんが、「浅草のいぼ地蔵(塩地蔵)」にお参りしたあとで、2,3ヶ月してから「いぼが自然に取れた」とのお話をお聞きしました。
外科的切除(推奨度C1)
疣贅の数が、1-2個に限定され、かつ即効的な治療の要求がある場合には、局所麻酔下に行う単純切除も選択枝の一つとされます。当方の経験となりますが、以前に勤務していた総合病院の皮膚科部長からの指示で、手掌の非常に大きな単発性疣贅(直径4cm前後)に対して、「外科的に切除し皮膚移植」を行ったことがあります。単にいぼの数が限定的な場合は、通常の液体窒素凍結療法で除去できますので、「キズ跡が必ず残るリスク」とのバランスを考慮しつつ、外科治療の適応を慎重に検討していく必要があります。
いぼ治療を行っていると、患者さんによっては同じ部位に「繰り返し再発してしまう方」がいます。液体窒素療法を一定回数以上強く行っていくと、いぼを治療したあとが「瘢痕状」となってしまい、「傷跡の瘢痕部にいぼが出てくる」という悪循環に陥ってしまうことがあります。その場合は、一般的な治療では非常に時間が掛かってしまう可能性があるために、「いぼの再発」を防ぐために「瘢痕ごと大きく切除する外科的な治療」を行う適応もあると考えます。
※当院では対応しておりませんので、大学病院等への紹介となります。
電気凝固法・レーザー治療(推奨度B)
尋常性疣贅診療ガイドラインでは、標準療法で効果がない場合の選択枝として推奨されています。通常は、高周波電気メス(保険適応)や炭酸ガスレーザー(自費診療)などで「いぼ組織ごと」焼き取ってしまう治療となります。どちらの治療も「どこのレベルの深さにいぼの芯があるか」を見極める担当医師の経験値が必要と考えられます。有効率は諸家の報告では50%~100%とまちまちであり、治療後の瘢痕形成、疼痛、再発などに注意が必要です。
◆参考サイト;http://medical.radionikkei.jp/maruho_hifuka/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-170105.pdf
※当院では対応しておりませんので、ご了承お願い申し上げます。
ブレオマイシン局所注射(推奨度C1)
元来、抗がん剤として用いられるブレオマイシンを「いぼ治療」に応用した方法です。有効性が液体窒素凍結療法より高かったという報告がある一方で、プラセボとの有効率との差がないとする報告もあります。難治性の角化の強い足底疣贅で他療法が無効例に選択枝の一つとして挙げられるとされています。
近年では、抗がん剤としての薬剤の環境汚染や施術者の曝露などの問題があり、取り扱う大学病院も減少しているようです。当院でも以前は行っていたこともありますが、副作用としての疼痛や色素沈着・爪周囲での使用時に骨融解などが挙げられており、現在はお取り扱いはありません。
民間療法(推奨度C2)
ナスのへた、いちじくの乳液などの報告があります。 患部に塗布していると「イボが自然に取れた」との症例報告もあります(2019宮崎)。
暗示療法(推奨度C2)
さまざまな民間伝承の、いぼに有効であるとされる治療がありますが、治ると思い込ませることが一定の効果を示すことがあるとされます。
その他の治療
接触免疫療法(B)
海外での報告が数例報告されています。わざと、局所の皮膚をかぶれさせる薬剤を塗布して炎症を起こさせることによって、いぼを治そうという方法です。尋常性疣贅診療ガイドラインでは「推奨度B」となっておりますが、国内での追試が少なく有効率が不明です。自然治癒する確率よりも「有効性の低い16%の治癒率」であったとの報告もあります。(2018石地)
その他
以下の治療法がガイドラインに挙げられておりますが、どの治療も有効性に対するエビデンスが低く、追試も少ないため、詳細な説明は省略します。
レチノイド外用・内服(C1)、イキモミド外用(C1)、シメチジン内服(C1)、インターフェロン局所注射(C2)、ポドフィリン外用(C2)、光線力学療法(C1)、超音波メス(C1)、5FU外用(C1)、プラセボ効果(C2)
※以上、当院では対応しておりません。
一方、足底や指先などの「大きく深いイボ」では、軽めに液体窒素凍結療法を行っても反応が悪く、治りにくくなってしまうことも事実です。当院では、患者さんの治療の自己負担費を減らすべく「保険適応のある角質除去+液体窒素凍結療法」を中心とした治療をしっかり行うことで難治性いぼ治療に対応しております。
いぼの芯取り方・治った判定はどうするの?
いぼが治る経過として、おもに液体窒素凍結療法後の経過について説明します。①顔首などの乳頭腫状のイボ・比較的小さないぼと、②手足・指先などで角質化のつよいイボでは、以下の様に治り方が違います。
顔・首などの露出部、小さなイボの場合
液体窒素療法を行うと1日程度、ピリピリとした痛みが続きます。通常、2,3日後より、イボ本体の肉芽腫が壊死におちいると黒く色が変わり、乾燥壊死となってきます。しっかり液体窒素を当てた場合には2週間ほどで壊死したイボ組織と正常皮膚の境が徐々に剥がれて皮膚から浮き上がってきます。
途中で無理に触ってしまうと、出血したり残ったイボが再度大きくなってしまうことがありますので、剥がれそうな痂皮化したいぼを触らずに「そーっとしておく」のが治すコツです。2~3週程度で、「そのままポロリと取れて」、黒変・壊死したイボが芯ごと脱落してきます。
液体窒素・いぼが取れるまでの写真
完全に治っている場合には、患部は平坦となり正常皮膚に戻ります。もしも、イボの芯が残っている時には中心部分に小さな塊が消えずに残ってしまいますので、再度ご来院いただいて液体窒素療法を繰り返していきます。
※当院スタッフに出来た小さなイボですが、液体窒素療法の実際から「いぼが取れるまでの経過を動画(経過写真付)」にしました。ご参考になりましたら幸いです。
足底や爪周囲などの角化の強いイボの場合
足底や角化の強い手の平・指先などでは、いぼの芯がより深くなってしまっていることが一般的です。深い「いぼの芯」まで治療効果を及ぼすためには、液体窒素治療も「やや強めに当てていく必要」があります。治療後の痛みは2,3日続くことが多く、壊死したイボが内出血を起こすために「軽い血豆・水疱」ができるのが効果的な治療の目安となります。痛みの感じ方には個人差がありますので、ご希望の方には痛み止めを処方しております。
治療効果があった場合には、いぼ部分が血豆の状態から、乾いた痂皮となっていきます。しっかり治療を行うと壊死したいぼが正常皮膚から浮き上がってくるまでに、「2週間」ほど掛かりますので、基本的な治療間隔は2週間おきとなります。角質化の強い部分のイボでは、自然に脱落することはありませんから、再診時に、壊死したイボ組織を周囲の角質ごと削り取っていく必要が生じます。治療がうまくいった場合には、黒変した角質が一層取れて小さくなり、中心部分にいぼ本体の表面がみえてきます。
角質除去を適切に行わないと、「どこにイボが残っているのか?、どのくらいの強さで液体窒素治療を行うと適切であるか?」の判断ができません。治ってくると、中心部にみえる「いぼ本体」も徐々に縮小し、芯部分が完全にとれると、「やや凹んで治癒するか、もしくは平らな正常皮膚」が出てきます。
★液体窒素凍結療法が不十分な場合
「角質除去が不十分な状態で液体窒素療法を行った場合」、もしくは「いぼがまだ深いのに液体窒素療法が不十分な場合」には、なにも変化が起こらないことがあります。軽めの液体窒素凍結療法を毎週行っても意味がありません。大きめのいぼでは、ある程度の強さで液体窒素を当てていかないと何も変わらない場合があります。治療を行っていても「まったく血豆になったことがない場合」には通院する医院を変えた方がよい場合もあるでしょう。
イボに使える市販薬
残念ながら、大きくなってしまったイボに著効する市販のお薬はありません。手足に角化があるいぼで、かつ小さな早期のものでは「市販のサリチル酸製剤」が有効な場合があります。商品名としては、絆創膏タイプの「スピール膏」、液体やジェルタイプの「いぼコロリ」が代表です。入浴後に患部に塗布・貼布して、絆創膏などで保護・密封しておくと徐々に角質が軟化・剥離して取れてきます。角質が取れるに従い、いぼが縮小してなおることもあります。
注意点は、使いすぎによって「皮膚の過剰な剥離や化学熱傷」となって爛れてしまうことがあることです。皮膚の剥離が強くなった場合には、適宜使用をお休みした方がよいでしょう。
いぼに有効とされている「ヨクイニン」も市販されています。ヨクイニンをしっかり飲んでいる方では時々、著効例を経験します。
治療期間は、どのくらいで治りますか?
いぼを一度に取って欲しいとご希望される患者さんがいらっしゃいますが、一回のみの治療でいぼを完治することは困難です。非常に初期のいぼや、小さな乳頭腫状のいぼでは、2,3回の液体窒素療法をしっかり行うことで治る場合もあります。
一方で、通常タイプのイボに於いては、「2週間おきの液体窒素凍結療法」を少なくとも5,6回は繰り返していくことが必要ですから、早くても2,3ヶ月の治療期間が必要となってきます。治療を途中で中断したり、医師が治ったと判断しないうちに通院しなくなってしまうと、1,2ヶ月で元の大きさに戻ってしまう場合が多くなります。治療を中断しないことも大切です。
角質化の強い足底・爪周囲のいぼでは、大きさ自体を小さくすることも困難なことがあります。適切な角質除去および、必要に応じて「活性型ビタミンD3やサリチル酸外用」を併用する必要があります。ある程度角質除去を行ったあとには、「やや強めの液体窒素凍結療法」を行うことが必要です。
あと、どのくらいで治りますか?
患者さんから良くある質問として、「あとどのくらいで治りますか?」ということをお聞きします。なかなか、一概にお答えすることはできませんが、
- いぼの深さによって治療に対する反応が変わること
- イボに対する治りやすさにも個人差があること
- 液体窒素凍結療法などの痛みに対する感じ方にも差があること
- 通院をどのくらいにマメにおこなっていただけるか?
などの条件によって治療に対する反応は変わってきますので、大きないぼでは具体的な治療期間を予測することは困難です。大きないぼでは、半年~1年近くの治療期間を必要とする場合もありえます。
いぼを放っておくとどうなるの?
イボ(疣贅)は、基本的には悪性疾患ではありませんから、絶対に治療をしないとダメな訳ではありません。また、ウイルス性いぼを放置しておくと、通常は「癌化」することもありません。ただし、特殊なケースでは「いぼに見えても悪性疾患」であったり、ご高齢の方では「悪性腫瘍との鑑別」も必要になる場合もあります。
一般的な尋常性疣贅(いぼ)では、気にして触ってしまうと他部位へ移ってしまったり、周囲に拡大して増えてしまうことも多くなります。さらに、短期間で自然治癒することは「めったに」起こらないために、放置すると徐々に難治性となってしまうことが多くなります。初期の小さないぼでは、液体窒素凍結療法に対する反応も良好で比較的少ない通院回数で治すことが可能ですので、皮膚科でいぼと診断されると「治療」を行うことをお勧めされます。もしも、治療をご希望されなかったり・すぐに通院が困難な場合には「触らずにそーっと」しておいた方がよいでしょう。
実際に手足のいぼは、70~80歳台の高齢者ではめったにみることがありません。これは、臨床経験上からの推察ですが10~20年の長いスパンで免疫がついてくると「いぼの自然消退・自然治癒が起こってくるもの」と考えられます。
いぼ・やってはいけないことは?
いぼウイルスは「環境中に普通に存在する」と考えられていますので、いぼに掛かりやすい方は、予防として特に「手先・足先」などへの刺激・小外傷を生じることは、「やってはいけないことの基本」となります。
いぼでやってはいけないことは、
- 裸足で硬い床やプールサイドを歩かないようにする
- 足趾などの当たりの悪い靴を避ける
- サイズが合った靴で、足のサイドや足底が擦れないように工夫する
- 爪周りの甘皮は丁寧にカットして引きちぎらない
- 細かな手を使う作業では、手袋などで保護を行う
- 肌荒れがあるときには「刺激の少ない電気カミソリ」で軽めの髭剃りとする
- 皮膚が薄い肘の内側などを掻爬しない
など、皮膚にキズがつくこと・擦れてしまうことは「やってはいけない」とても重要な事項です。
これは、「いぼ治療中においても大切なこと」となり、皮膚が刺激されやすい部位の「いぼ」は確実に治りが悪くなる印象です。治療が終わり、「いぼが治った後」においてもしばらくは、ガーゼ保護などをしっかり行って「キズがつかないよう」にしておきましょう。
その際、必ず「ウイルス性いぼ」について詳しく記載してある医院を選んで受診をしましょう。美容系の首いぼや老人性いぼ等の専門クリニックへの受診はやってはいけないこととなり、「ウイルス性いぼ=尋常性疣贅」を治してもらうことはできません。病院が見つからない場合は、「広域地域名+ウイルス性いぼ」などで再検索を行い、ウイルス性イボ治療に「より専門的なクリニック」を選ぶことが、いぼを治すための最短コースとなります。
まとめ;いぼ治療に対する当院の考え
いぼが難治性となってしまい、経過が長引くと液体窒素単独ですとなかなか治らないことが問題です。ウイルスに感染した”イボの芯”は皮膚の深い部分に食い込んでしまうことも多く、ある程度痛みがでることは仕方がないのですが、問題は液体窒素単独ですと”足底や指先など角化の強い部分”ではすぐに角質が厚くなってしまい、なかなか元となる芯までたどり着けないことが一番の課題となります。
当院では、液体窒素療法をしっかり行うことを前提に、イボ削り療法や角質除去外用・各種腐食療法をメインに難治性のウイルス性疣贅を治しております。非常に深いイボの芯は毛穴や汗腺の奥にあると云われており、治療が終盤に近づいて来て、痛みが強い場合には局所麻酔を併用させていただく場合があります。
※「いぼ」を沢山治して”ウイルスの芯”がどのように、どのあたりにあるか分かるようになると、ブレオマイシン局注やレーザー治療単独では効かない理由がわかるようになります。どちらの治療も深い疣贅の芯をピンポイントで攻めることが困難だからです。
※注)当院でも、局麻下電気焼却やブレオも行っていた時もありましたが、現在は治療の選択肢には入っていません。
⇒疣贅が深い場合は、皮下の汗腺部分・皮下脂肪の浅いレベルでの戦いになります。指先や爪周り、手掌・足底の神経、血管などの解剖に強い皮膚外科を経験している医師が治療にあたるべきと考えます。
●当院ではウイルス性いぼ治療専門外来を
随時お受けしておりますが、難治なイボの方・数が多い方は大木医師担当日にご来院ください。
大木皮膚科
〒143-0023東京都大田区山王1-4-6 パーク山王1F
電話;03-3776-2220
※他院に通院していても、なかなか治らない”イボ”、是非ご相談ください。お困りの方は、メールでのご相談も受け付けております。
※担当医師が男性のため、女性の外性器、肛囲の疣贅治療は産婦人科へお掛かりください。
※参考資料;尋常性疣贅診療ガイドライン 2019