巻き爪とは?

 巻き爪pincer nail)とは、爪の側縁が、①爪脇の皮膚(側爪郭)に喰い込んだ状態、もしくは②爪自体(爪甲)が正常範囲を超えて片側~全体に渡って巻いてしまう状態をさします。医学的には陥入爪(ingrown nail)との呼び方が一般的となり、爪が皮膚にあたり炎症や肉芽を作ることをさす場合が多くなります。

 症状が悪化すると、炎症が起こり痛みも出てきます。爪を短く切りすぎたり、端を切り残してしまうと棘状に残った爪(爪棘)が皮膚に刺さり、感染を起こして二次的に爪囲炎や化膿性肉芽形成を起こし激痛を伴うようになります。巻き爪は軽症例も含めますと非常に有病率の高い疾患で有り、全人口の約10%の方が巻き爪に悩んだことがあるとされています。

 

巻き爪の治し方について

 足爪の両側がくるりと、巻き込んでしまうと「痛みや炎症」を起こしやすくなります。痛みを我慢していると、さらに「爪端」が皮膚に喰い込んで炎症や化膿を引き起こしたりして、悩んでしまいますね。一般的には、「皮膚科や外科の病院」などで、「抗生剤内服や抗菌剤外用」が処方され、場合によっては「爪を一部切られてしまう」ことが多くなります。

 

 また、炎症が酷くなると「外科的な治療」として、「爪端を一部切り取って、生えなくしてしまう治療=陥入爪根治術」が行われることがあります。炎症が酷くなる前であれば、最近では「ネイルサロンや接骨院」でも、様々な巻き爪矯正が行われており、選択枝が沢山あるようにもみえます。

 一方で、選択枝が沢山あるということは、「一体どれがちゃんと治せる方法」であるのか、決め手になる治療法がないとも云える状態です。患者さんからしてみれば、何処の病院にいけば「きちんと治してくれるのか?」が分からなくなってしまいますね。

 

当院で行っている「そがわ式(SH法)巻き爪矯正」

 

 現在、当院ではSH法(そがわ式)を中心とした巻き爪矯正装具「巻き爪・陥入爪」を治しております。他院で治らない高度の巻き爪・肉芽腫を形成した陥入爪などお困りの際は、ぜひご相談ください。
(※月木午前に巻き爪矯正外来実施・詳しくはページ下をご覧ください)

 

 本ブログでは、「皮膚外科医として多くの巻き爪手術」を経験し、かつ「様々な矯正療法」を取り入れて巻き爪治療に当たってきた院長が現段階で、「ベストである」と考える治療について綴っていきます。

巻き爪と陥入爪の違いは?

 巻き爪とは、「爪が巻いてしまって起こるトラブル全体」をさす俗称です。一方で、巻き爪の医学的な正式名称は「陥入爪」と呼ばれ、皮膚科や形成外科の教科書に「巻き爪」という項目はみかけません。

 巻き爪は、英語では「pincer nail」と訳されており、「ペンチもしくは蟹などのハサミ」をさす言葉である「pincer」は、まさに爪が蟹のハサミのように「くるっと巻く様」を現しています。陥入爪は、「ingrown nail」と英訳され、「ingrown=中に成長する」から「肉に喰い込む」という意味となり、まさに「肉に喰い込む爪=陥入爪」となるわけです。

 爪が巻く状態である「巻き爪」と爪が爪縁の肉に喰い込む状態の「陥入爪」は、別々に生じる場合もあれば、「巻き爪であり、かつ肉に喰い込んで陥入爪」であると云ったように同時に起こることもあります。「巻き爪」であり爪が巻いているが痛くない状態や、「巻いていない爪」肉に喰い込んで炎症を起こし「陥入爪」となってしまっているケースもあります。

巻き爪の原因とは?

巻き爪はどうしておこるのか?

 巻き爪の原因としては、

  • ヒールやパンプス等の狭めの靴による圧迫
  • 切りすぎた深爪による皮膚への刺激、
  • 指先にしっかり体重が掛からない歩き方
  • 爪が巻きやすい体質
  • 外反母趾、浮き指
  • 過度な運動やスポーツ・外傷

などが挙げられます。

 足の親指はとくに歩き出すときに体重が掛かる部位のため、足爪踏み込む力を支える働き(=巻く力)が強くなっています。爪の切り方が悪かったり、外部からの圧力、体重の掛かり方によりバランスが崩れること悪化要因となります。とくに、喰い込んだ爪を切ろうとして「さらに短く爪を切ってしまう」ことが症状を悪化させる原因です。

爪は何故巻いてしまうのか?

 巻き爪の原因を考えていく前に、何故ゆえに爪は巻いているのか考えた事はありますか?じつは、ほとんどの動物の爪は「巻き爪」です。イヌやネコが爪を研いだり、ライオンが獲物を捕らえるときに爪を立てるなどの役割があります。一方で、人や猿の一部では、手先や足先でものをつかんだり、踏ん張って支えるために「平爪」となっています。元来、動物の爪は巻くものであり、「巻き爪=巻きやすい爪」先祖返りのひとつとも考えられています。

爪の外反変形とは?

 靴の圧迫等がながく続くと、外反母趾と同じ機序で、母趾IP(指趾間)関節の外反が生じることがあります。IP関節の外反と伴に、爪自体も母趾の軸に対して外反してしまうことがあります。爪自体が外反してしまうと、①外側爪縁部との当たりが悪くなる、②足趾が根本的にしっかり踏ん張ることができなくなるなど、巻き爪の再発リスクが増えてしまいます。

 なぜ、IP関節外反が起きてしまうか、はっきりした機序は不明ともされますが、経験上、手指・足指の先はわずかな力が継続して掛かると簡単に変形してしまうことが多くなります。

 

巻き爪・陥入爪の症状は?

 巻き爪の症状としては、「爪が巻いて喰い込む」ことによって、①痛み、②周囲の皮膚の腫れ、③肉芽種形成、④化膿・出血などを起こすことがあります。

 具体的には爪が巻いてしまうと、まずは爪端が周囲の皮膚(爪縁)に喰い込んで来ます。さらに、歩くことで足趾を踏ん張る力が爪周囲の皮膚に掛かると、爪郭部の皮膚が爪を押し上げる力「すべて爪縁部のみ」に集中することによって痛みや炎症が起きてしまうのです。

 爪の巻き具合は、軽度に巻く程度~爪がほぼ90度に曲がってしまうケースまで様々です。爪が巻きやすい方では、180度以上巻き込んでしまうこともあり、「弯曲爪」と呼ばれます。爪の巻き方も、

  • 全体に彎曲が起きるドーム型タイプ
  • 爪の中心部のみ強く巻く三角型タイプ
  • 爪端のみが巻いてしまうステープル型タイプ

などに分類ができます。

 周囲の炎症・肉芽形成の程度「爪の巻き具合」は必ずしも一致しません。老人施設などを往診すると、ほとんど歩かないために、「爪が両端まで360度」巻いていても痛みを感じない方もいます。一方で、爪の巻き具合が軽度~中程度でも歩く刺激によって、痛みや炎症が強く生じる場合もあります。

 

 爪の切りすぎによる深爪によって、爪が巻く力と爪縁部が爪を支える力のバランスが崩れてしまうと、余計に爪縁部の食い込みが強くなり、かつ爪端部分が視認できなくなってしまうために炎症のコントロールがつかなくなってしまうことが多くなります。自己処理による深爪によって爪の端を切り残してしまうと、爪が棘状にのこってしまい(=爪棘)、肉芽形成などの酷い炎症・疼痛を生じることがあります。

 巻き爪で困ってしまうことは、足先にしっかりと力が掛けられなくなってしまうために、「歩き方のバランス」が崩れてしまうことです。痛い足先をかばうように歩くことによって、過度に踵部分に力が掛かったり、膝・腰などに負担が及んでしまいます。さらに、痛い方の脚をかばって歩くことによって、反対の正常側の脚全体にも負担が及んでしまうこともあります。

巻き爪のセルフケアについて

巻き爪の予防は正しい靴選び

 予防のためには、正しいセルフケアが大切です。1,深爪をせず、爪の角を残して切る、2,足先で地面を踏み込むように歩く、3,靴のサイズを合わせ、足先の狭い靴は避けること、などをこころがけることで、巻き爪の発生を防ぐことができます。

 靴を履くときは、つま先に余裕のあるひも靴を選び、①まずは、かかとを合わせてから、②靴紐をしっかり締めて甲の支えをつくり、③足先は靴のなかで1cmほど余裕を持って伸ばせることが大切です。とくに、親指の外側がわに炎症が起きているケースでは、第2足趾との当たりが悪くなってしまっているケースが多く見られます。趾間にガーゼを丸めて挟む・趾間用クッションを使うなどで工夫を行い、「外側からの圧迫」をさけていくことも大切となります。

 

巻き爪を予防する爪の切り方

 巻き爪にならないようにするためには、特に「正しい爪の切り方」が大切です。よく普通に皮膚科や外科を受診すると、「一律に爪を伸ばしてください」と指導を受けてしまうことがありますが、「これは間違い」です。伸ばしすぎた爪は、「爪縁部の支え」がなくなってしまい余計に巻きやすくなります。さらに、良くないことは「伸ばしすぎた爪」が靴などで圧迫されて更に巻きやすくなったり、間接的に爪縁部を刺激して痛みが酷くなってしまいます。

 ただしい爪の切り方は、①足趾の皮膚の先端より1~2mm短めで、②端を切り込まないように「スクエア」にカットすることが基本であり、③端は軽く丸める程度とするのが良いでしょう。通常の爪切りはやや「カーブ」している事が多いので、巻き爪専用に直刃の爪切りが販売されています。

 巻き爪が痛くなってしまったときには、まずはどうしたらよいのでしょうか?まずは、自分で出来る対応法について考えていきましょう。

巻き爪が痛いときの自分で出来る応急処置は?

 爪が巻いてしまい、爪縁部の皮膚に炎症を起こしているわけですから、ご自身でできる処置としては、①市販の消毒(イソジン消毒・マキロン等)、②市販の抗菌剤外用、③ガーゼ・絆創膏などで保護をしておくことが一番です。痛みのあるときに無理に歩き回ると、「炎症は悪化してしまう」ことが多くなりますから、無理をしないことも大切です。

 最近では、ガター法・アクリル人工爪法・コットンパック法・テーピング法などのさまざまな保存療法が工夫されると伴に、ワイヤーやプレートを使った矯正療法が開発されてきています。コットンパックやテーピング法は、多くの皮膚科の病院で行っている処置となりますので、ご自身でできる方は行ってみる手もありますね。

テーピング法

 爪の巻く程度が軽度で、周囲の皮膚が盛りあがって喰い込んでしまっているタイプに効果がある方法です。盛りあがった爪縁皮膚に弾性布テープを貼り付けて、足趾周りをらせん状に引っ張り下げて、爪縁皮膚を引き下ろします。バリエーションとして、足趾先の皮膚全体を引き下げるようにテーピングで引っ張り降ろす方法もあります。

 基本的には食い込んでいる爪縁と皮膚との間に隙間を作って、「当たり」を緩和していく方法となります。

コットンパック法

 痛みがある部分の爪端をピンセットなどで「そーっと持ち上げて」、出来た隙間に丸めたコットンを詰める方法です。とくに特殊な道具も必要なく、ご自宅でできる代表的な対処法となります。注意点としては、爪が薄い方では、あまり爪の端を持つと割れてしまうこともあるため、爪端から少し離れた奥側を持ち上げるようにすると良いでしょう。本格的な矯正ほどではありませんが、軽度の爪挙上効果が期待出来ます。

ガター法 

 通常は病院でおこなう方法となりますが、市販のシリコンチューブを使ってセルフケアとして行う事も可能です。一般には、ネラトンカテーテルという導尿用の柔らかい樹脂で出来たチューブを巻き爪のトラブルに使うことがあります。チューブに一部切れ目をいれて、爪端を柔らかいチューブ部分で保護する方法です。病院では、外科用の針糸で固定しますが自分で行う場合には前もって、爪端とチューブに穴を開けておき、細い縫い糸などで固定しても良いでしょう。

 

アクリル人工爪法

爪を切りすぎたことが、巻き爪の痛みの原因だった場合には、市販のアクリル爪キットを購入し「人工爪の作成」をすることが可能です。深爪になった爪部分に、レントゲンフィルムなど(クリアファイルでも代用可)で「囲い」をつくり皮膚を避けた上で、アクリル樹脂で爪を継ぎ足します。

足の親指の爪の横が痛い時の対処

 市販の巻き爪ケアグッズ等では「良いもの」はないのでしょうか?現在は、巻き爪の予防的なさまざまなケアは「医療行為」ではないとされるため、国の規制緩和によってさまざまな巻き爪矯正ケア用品が発売されております。

  • 巻き爪ロボ巻き爪ブロック
  • 形状記憶合金ワイヤー
  • 巻き爪ワイヤーガード
  • 巻き爪クリップ
  • 巻き爪リフト
  • ネイルエイド
  • 巻き爪マイスター(一般皮膚科での対応)
  • 巻き爪テープ

 

 上記の巻き爪矯正ケア用品は、アマゾンなどの通販で購入が可能となっており、ある程度の各自の自己責任とはなってしまいますがお試しいただくことができます。デメリットとしては、①矯正方法が凝った商品ほど高額になってしまうこと、②爪に穴をあけるなどご自身の技術が必要になること、③基本的に爪先に装着する矯正器具が多くなっており、爪を伸ばさなくてはならないこと、④爪に貼布するタイプは剥がれやすいことなどが挙げられます。

 特に、爪先に装着する矯正グッズ「爪をある程度伸ばしておくこと」が必須となり、①爪が短くて痛みのある方、②爪が割れやすい方、③爪の根元が巻いてしまっている方には向いていないことも注意点となります。

 

巻き爪が本格的に喰い込んでしまい、「肉芽形成や出血・キズ」がある場合には、上記の通常の矯正装具や市販ケア用品では対応が困難となります。病院にいくまでの応急処置としてはどのようなことをすれば良いのでしょうか?

巻き爪の化膿への対応

 巻き爪が化膿した場合には、フットケアサロンなどの簡易な矯正では治すことは困難となります。爪が多少巻いていても痛みがないときには、ようすをみて放置しておいても問題ないのですが、赤みや腫れが強くなったり、肉芽が酷くなった場合は病院での抗菌剤内服・外用、消毒剤などの治療を受ける方が良いでしょう。

 ある程度痛みや炎症が取れたときには、次にどのような治療法を選択するとよいでしょうか?爪を伸ばせている状態で、「ある程度、爪が丈夫な方」では、上記の市販の矯正器具を併用したり、コットンパック法・テーピング法などを併用していくことで徐々に改善を図っていくことができるのではと考えられます。

 一方、下記のようなケースではどのようにしたら良いのでしょうか?

  • 炎症が引き切らずに接骨院、サロンでの矯正を断られてしまった
  • 爪の巻きが強く、隙間がないためコットンが入らない
  • 爪が短く切られており、市販の矯正用品が使えない
  • テーピングを行っていたが皮膚がかぶれて続けられない
  • 原因がわからず肉芽腫形成が治らない

 

 普通の皮膚科に受診をすると、「あとは手術をするしかない」と云われてしまったり、「巻き爪矯正をするために痛くても、そのまま爪を伸ばすように」という最終宣告を受けてしまい絶望してしまう方もいるようです。当院では、巻き爪矯正に「爪を伸ばさなくても装着可能な方式」を採用しておりますので、他院でお断りされたかたでもご相談ください

当院採用のそがわ式は肉芽があっても矯正可能!

 

 ただし、余りに肉芽腫が大きい場合には「すぐに矯正療法を行うことはできません」ので、まずは下記の肉芽腫の保存治療を行ってみましょう。ご自分で困難な場合には当院に受診していただけますと、「ご自宅での処置方法」をご指導するようにしております。

陥入爪肉芽を自分で治す

 陥入爪が悪化してくると、爪が肉に喰い込むことにより刺激され「徐々に肉芽腫が形成」されてきます。当院の基本方針としては、「爪を切除せずに治療を完了すること」をめざしています。一般的には、病院にて局所麻酔下に部分抜爪を行い、炎症の鎮静化を図っていくことが普通となります。

 

 当院で採用している巻き爪矯正法でも、さすがに大きい肉芽腫を形成してしまったものでは、「すぐに矯正療法に」持ち込むことができません。そのため、まずは保存療法としての「爪アイロン法+肉芽腫に対するコットンパック法」にて炎症の鎮静化を図っていきます。

 通常のコットンパック法と異なる部分は、

  1. まず肉芽腫を外側に用手的に引き降ろす
  2. 爪と肉芽腫のあいだに、僅かにできた隙間にコットンを挿入する
  3. 詰めたコットンごと、さらに肉芽腫を外側下方に引き降ろす
  4. 爪の前縁がある程度みえてきたら、爪ゾンデにて爪下の隙間を確保
  5. 爪を持ち上げながら、さらに肉芽を引き下げていく

 

 以上の処置により爪縁部と肉芽腫のあたりを緩和していくことで肉芽腫の縮小を図っていく方法です。

 

 本法のデメリットは、①爪の切り残しのトゲ(爪棘)がある場合には痛みを伴うため、局所麻酔が必要であること、②患者さんが方法論を理解し、ある程度自宅での処置を必要とすること、③肉芽腫下の隠れた爪は浸軟して折れやすく力の加減が必要なこと、等となります。もしも、ご自身でコットンを入れることが困難な場合は通院していただける方ですと、「爪端の出し方・肉芽の排除法」などをご指導致します。

 爪があまり巻いていない方では、本法のみで肉芽腫が改善する場合もありますし、爪が巻いている場合には肉芽腫が少し縮小してきたときに、必要に応じて矯正療法に移行するように致します。

 

 以下に、国内で施行されている巻き爪矯正の代表例について説明していきます。ネイルサロン・接骨院で行われている巻き爪矯正は、「あくまで炎症や肉芽が起きていない軽度の症例」になります。①爪が非常に厚い、②巻き方が高度である、③赤み・炎症を伴うなど症状が強ければ、「病院での巻き爪矯正」を選択しましょう。

巻き爪の様々な矯正療法

巻き爪の矯正療法について

 当院では、10年以上前から以下の矯正療法をおこなって来ました。これらは日本国内において代表的なワイヤー矯正・プレート法等になります。それぞれ、メリット・デメリットがありますが、各々の良い部分を取り入れて、なるべく短期間に効率的に巻き爪矯正をおこなえるように心掛けております。

  • 巻き爪矯正とは「ワイヤー・プレートなどの反発力」を用いて、「巻いてしまった皮膚に喰い込んだ爪」まっすぐな形に徐々に戻して行く方法です。
  • 通常は、手術と違って麻酔をしたり、爪を切ったりはしませんので痛みは伴いません
  • 1~2ヶ月に1回、矯正装具を爪に取り付けて少しずつ爪の形を修正していきます。
  • 多くの巻き爪矯正法は、「爪が伸びた状態」でないと処置ができないのですが、当院で採用している「SH法(そがわ式)」は爪が伸びていなくても、「わずかな隙間さえあれば」装着することが可能です。

 

  • 治療費は保険適応とはなりません。価格は「病院ではないサロン・接骨院」で行った場合には「5500円程度~(税込)」、クリニック・病院等で行った場合には「8800円程度~(税込)」がおおよそ相場となっております。各矯正方法によって、値段が変わります。
  • メリットとしては、手術などの痛みを伴うことなく治療が可能で有り、手術後のように爪幅が小さくなることはありません。基本的に再発してしまった場合にも、繰り返し行うことが可能です。
  • デメリットは、①治療費等が自費となること、②矯正は23回以上掛かることが多く通院が必要であること、③一度矯正を行って爪がまっすぐになっても体質や靴の圧迫などにより再発する方がいること(約23割程度)、④入浴・激しい運動などで爪が割れたり装具が取れてしまうリスクがあること、などが挙げられます。

マチワイヤ

 高田馬場病院に在籍していた「町田英一医師」により開発された巻き爪矯正法です。爪先の2カ所に針などで穴を開けて、超弾性ワイヤーを装着します。マチワイヤは「ニッケル・チタン合金」に特殊処理をほどこして、強く曲げてもまっすぐに回復する「超弾性」によって巻き爪を矯正します。2000年代初めより「多摩メディカル」という会社が製造しており現在、全国の病院でも広く採用されております。ワイヤー弾性による反発力によって爪が持ち上がる方法ですが、爪端や根元の矯正が不得意でやや割れやすいのが欠点となっております。

【参考情報】マチワイヤ製造元・多摩メディカル

※矯正力が根元に掛かりにくい、爪が割れやすいなどのデメリットがあり、現在当院では行っておりません。

VHO式巻き爪矯正

 ドイツから来た方法で、フック型に曲げたワイヤーを爪の両端に引っかけ、さらに真ん中に別のワイヤを引っかけて捻り挙げて爪を持ち上げようという方法です。VHOとは、「Virtuose Human Orthonyxie」の頭文字で、「熟練技による爪をまっすぐにする矯正」といった意味です。痛みや出血なく治すことが可能で爪の根元に力が掛かるのですが、爪端を効率的に持ち上げることが出来ないのが欠点と云えます。

【参考情報】VHO巻き爪矯正技術

※ワイヤーを引き挙げる力が「爪端を挙上する力」となりにくく、過度にワイヤーを引き挙げると「VHOワイヤー」が爪に喰い込んでしまうため、お蔵入となりました。

BSスパンゲ

 グラスファイバー入のプラスティックのプレートを爪表面に貼って矯正する方法です。VHOと同じくドイツ発祥の治療法となり、爪の表面のみしか触らないので比較的安全であり、接骨院やネイルサロンを中心として広まっています。爪表面の前処理と接着にコツがあり、熟練した施術者でないとプレートが剥がれやすいのが欠点です。プレート1枚の矯正力はやや弱めとなります。

【参考情報】院長が講習を受けたBSスパンゲ施設⇒町屋接骨院さん

※矯正力が「SH法」の一番弱いワイヤー程度であり、かつ1ヶ月程度で取れてしまうために行わなくなりました。なお、市販の貼り付けるグッズは、さらに粘着力が弱く効果が期待できません。

ペディグラス

 弾性をもった特殊なレジン樹脂のプレートを爪に貼り付けて矯正を行う方法です。レジン自体の矯正力には限度がありますが、接着の方法に特許があり非常に丈夫につけられる方法になります。現在は大阪に本部があり関西地方を中心に広がっています。

【参考情報】ペディグラステクノロジー

※特殊な接着手技で爪端を確実にプレートで引っかけて、爪端を持ち上げる方法です。傷口や出血がなければ良い方法なのですが、「そがわ式」で同等以上のことが可能なため行わなくなりました。

巻き爪マイスター

 マルホによって考案・作成された比較的新しい巻き爪矯正装具です。弾性ワイヤーの端にフックを取り付けて「容易に爪端に装着可能」となるよう工夫され、さらにワイヤーの長さが「ばねによって自動的に調整」されるようになっております。爪が伸びていないと装着できませんが、忙しい皮膚科外来中に短時間で施行ができることがメリットで、導入している皮膚科医院が増えてきています。値段は医院にも寄りますが、8800円程度となっております。

【参考情報】マルホ・巻き爪マイスター情報ページ

※爪の厚さに応じて、矯正力を調整出来ない・薄い爪に装着が不可・肉芽腫に対応出来ない等の理由で当院では採用を見送っております。

そがわ式(SH法)

 香川県の整形外科医師、十川医師により開発された方法です。弾性があり、かつ細工が可能なワイヤーをつかい、ワイヤー端に3次元的なフックをつくり爪に装着します。爪の根元に力が掛かり力学的にワイヤー反発力が効率よく爪端を持ち上げる方法となります。ワイヤー曲げにややコツを要することと、ワイヤー固定の樹脂接着に慣れが必要です。

【参考情報】そがわ式・十川先生のブログページ

当院では、以前は「マチワイヤ・VHO巻き爪矯正」を中心とした治療を行っていましたが、

  • 爪が割れてしまい根元の巻きが治らない
  • ワイヤーが爪に喰い込むだけで挙がらない
  • プレート法では簡単に剥がれてしまい長く持たない
  • 短く切られた爪に対応できない
  • 浸軟した柔らかい爪に対応ができない
  • 何度も矯正を行っても改善しない

などの理由によって、「マチワイヤ・VHO巻き爪矯正など」は、行わなくなりました

 

 現在は、両者のハイブリット法とも云える「SH式(そがわ式)巻き爪装具」を中心とした矯正療法を行っております。爪の奥よりにワイヤーを装着可能で、治療期間も短く「強い矯正効果」が得られることが特徴となっております。現在は、そがわ式矯正装具取付法のバリエーションを増やすことで、さまざまなタイプの巻き爪に対応可能となっております。

 以上のように巻き爪矯正法にはさまざまな方法論があるのですが、①治るまでに時間が掛かってしまったり、②巻きやすい体質がある方は再発することもある、③非常に高度な肉芽形成には対応が困難などの「限界がある」ことも事実です。より早く確実に治したい方や巻き爪矯正で再発を繰り返す方では「手術療法」が適応となります。

巻き爪・陥入爪の手術とは?

 巻き爪の従来の治療法では、局所麻酔下に巻き込んだ爪を切除し、その根元にある爪母を取ると脇の爪が生えなくなる手術(陥入爪根治手術)が行われることが一般的でした。現在では、さまざまな巻き爪の保存治療や矯正法が発達してきましたので、すぐに「手術が第一選択になる」ことはありません。

 巻き爪の手術治療では、「手術後に残った爪が狭すぎて体重を支える機能がなくなってしまったり、残った爪(爪甲)がさらに巻いてしまう、手術手技自体が稚拙だと取ったはずの爪がまた棘のように再発する」などの合併症もあります。現在、当院での巻き爪治療の手順としては、①まず簡易な保存療法をためす、②ワイヤー等による巻き爪矯正を勧める、③矯正で対応困難な下記のような症例では「手術療法」をご提案するという順に対応しております。

 

「巻き爪・陥入爪手術の適応」としては、

  • 高度の肉芽種形成で保存療法での治療が困難
  • 通院する時間がなく早めに治療をしたい
  • コットンパックなどの保存治療がご自宅で困難な方
  • 爪が明らかに大きく爪幅を切除したほうが良い場合
  • 爪端の狭い範囲が奥まで強く巻いている場合
  • 巻き爪矯正でしばしば再発を繰り返す場合

などが挙げられ、当院では現在手術療法には対応しておりませんので、必要に応じて近隣医療機関の形成外科にご紹介させて頂いております。

 

部分抜爪法

 炎症の強い陥入爪に対して、皮膚外科や一般外科でまず行われることの多い簡易手術法です。爪母の処置は行わないので、爪がまた生えてくることが特徴です。足趾の神経ブロックを行った上で、炎症の原因である「爪端部分を幅5mm」ほど、切除を行います。一時的に爪幅を狭くすることによって「爪縁部の炎症を鎮静化させる方法」となります。爪が生える早さは、通常「月に1.5mm程度(1日0.05mm)」となりますので、爪が再度生えてくるまでに炎症が治まってくることにより、そのまま治ることを期待します。

陥入爪根治手術(爪母形成を伴うもの)

 明らかに爪幅が大きいケースや巻いている爪端部分を永久に除去したい場合には、「爪母の処置」を伴う陥入爪根治手術を行います。局所麻酔にて足趾神経ブロックを行った上で施行します。取り除きたい爪端部分の切除を行い、さらに後爪郭外側に小切開をいれて爪母を露出させます。外科的に爪母を完全に切除を行う事によって、爪幅を永久に狭く形成する手術法となります。

 爪母を完全に切除するのみでは、爪がまた巻いてしまうことがあるため、通常は、「鬼塚法」という爪郭形成もおこない、「残存した爪」が再度巻いてこないように爪縁の皮膚を爪の下側に縫合することが一般的です。片足の足趾の手術では日帰り手術となることが普通ですが、両足同時に手術となるケースでは担当医の判断で入院治療となることもあります。入院期間は、初期の出血の止まる2~3日程度となります。

 

フェノール法

 通常の陥入爪根治手術である「余剰の爪縁を除去し、爪母を切除する」という手技を簡易に行う方法となります。良い面ばかりが強調されてしまっていますが、フェノールの当て方によっては、①爪縁部の再発、②残存爪の変形、③爪棘の残存などトラブルもあるようです。

 外科的にクリアカットに爪母を切除する方が、残す爪甲に対する負担が少ないようです。また、通常の陥入爪根治手術との違いは、側爪郭部(そくそうかく)の形成を行わないことになります。側爪郭形成を行わないことにより、フェノール法では残った爪甲部分の巻きが再発してしまうこともあります。

 

巻き爪手術のデメリット

 巻き爪の手術にもデメリットがあります。一度手術でキズをつけた部分は基本的に元にもどすことができませんどのような手術法を選ぶか?=どこの病院のどの医師に手術をお願いするかが大切です。手術のトラブルとしては、爪縁部の爪が再発してしまうことや、残った爪が更に巻いてしまうことなどが挙げられます。

 

巻き爪の治療費用

 陥入爪手術(簡易なもの)では自己負担額6000円程度3割負担・診察料込)となり、陥入爪手術爪母形成を伴う複雑なもの)では自己負担額9000円程度3割負担・診察料込)となります。保険適応となる手術手技・処置にはさまざまなものがあるので、行った手技に見合った処置点数が算定されます。

 巻き爪矯正は、医療行為ではないケアとして国が通達を出しているので、自費のケア料金が別途掛かります。通常、ワイヤー代金2000円程度(マチワイヤ)~プレート法(50006000円程度)に各種手技料が上乗せされるケースが多くなります。

 当院で行っているSH法(そがわ式)では、

  • 1本ワイヤーでの矯正8800円~(税込・1足趾につき)
  • 1カ所につき2本ワイヤーでの矯正11000円~(税込・1足趾につき)

となっております。

 

巻き爪は何科にいくべきか?

 巻き爪は最終的には、手術になることもある疾患ですから「巻き爪の専門科」は皮膚外科である形成外科となります。一方で、巻き爪自体はよくある一般的な爪トラブルでもあるので、町中に多くある皮膚科のクリニックにお掛かりになることも多いと思われます。

 さらに、痛みや炎症がある場合には、「整形外科や一般外科の先生方」が巻き爪治療を行うこともあるようです。各科の治療の特徴については、それぞれの得意分野によって方針がやや異なってくることにあります。近年、巻き爪矯正法がかなり進歩してきましたので、「いきなり爪を切ったり・手術する」のではなく、まずは矯正療法に精通した担当科の先生に掛かった方がよいでしょう。

巻き爪・保険適用外はなぜ?

 「なぜ、接骨院やネイルサロンで巻き爪を扱っているのか?」不思議に思われたことはありませんか?巻き爪が酷くなってしまうと「痛みがあり辛い」のに何故ゆえに保険適応ではないのかと思ってしまいますね。

 さまざまな理由があるのですが、そもそも「巻き爪矯正に使用する矯正装具(ワイヤー・プレート等)」が保険適応となっていないことが一番の理由だと考えられます。近年、医療財政がひっぱくしており全ての方法を保険適応としてしまうと健康保険の財源が厳しいのです。

 

 通常は病院においても「矯正装具」を用いない治療は、保険適応となる場合が多く「ワイヤー・プレートなどの矯正装具」を用いる場合には保険適応とはならないケースがほとんどです。ネイルサロン・接骨院でおこなうレベルの巻き爪矯正は、「そもそも医療行為でない」という前提があるため、保険適応とはなりません。

 

本ブログ内容をスライドショー形式の動画にしました

 

まとめ

 現在、当院では”SH式(そがわ式)”をメインとしたワイヤー矯正外来を行っております。爪の厚さや曲がり具合に応じてワイヤーの太さが数種類ほど用意されているため、単一の施術方法のみで「様々なタイプの巻き爪」に対応可能となっております。

 さらに、他の巻き爪矯正法では不可能であった「切り込んだ陥入爪や浸軟した爪」にも太さや曲げ方を工夫して装着できることが本法の特徴であり、大きなメリットとなっております。他院に通っても、なかなか改善しない方、是非当院までご相談下さい。矯正ワイヤーが適応になるか分からない場合は、メールでのご相談も受け付けております。

 

当院では巻き爪矯正ケア専門外来(担当;大木医師)を水曜午前の事前完全予約制(令和5年4月に変更)にて行っております。

    月木午前の時間帯の巻き爪矯正外来は終了致しました。
    巻き爪矯正のご予約には一度皮膚科外来(土曜午前以外)を受診されてください。

    大木皮膚科

    1430023東京都大田区山王1-4-6 

    電話;0337762220

    ご注意;巻き爪矯正は、ネイルケアの一種とされており医療行為ではありません

     病院で行った場合も、自費ケアとなります。(1足趾;8800円~11000円(税込))

     

    保険適応のある各種保存的治療も対応しておりますので、ワイヤー矯正が必要か分からない場合は平日日中にご来院下さい

    1日にお受けできる人数に制限がありますので、矯正ご希望のかたはお早めにご来院ください

    妊婦さんや70才以上のご高齢の方は、ワイヤー矯正の合併症リスクが高くなるため、矯正を原則としてお引き受けしておりません。

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