とびひ/伝染性膿痂疹とは?

 とびひとは、正式には「伝染性膿痂疹」と云い、2~5才くらいの小児によく見られる皮膚表在性の細菌感染疾患です。

 表皮角質層下のブドウ球菌などの細菌感染によって、患部に「水疱、びらん、痂皮」などを形成します。皮膚についた細菌が、まるで火事で「火の粉が飛び火」をするが如く、患者自身の他の部位に広がる(自家感染)ことや他者にも伝染することから「とびひ(飛び火)」と呼ばれます。

 伝染性膿痂疹で問題となることは、早期に適切な治療を行わないと「患者さん自身や他の人にとびひはうつる」こととなります。とびひは、擦り傷や湿疹の掻き崩しなどがきっかけとなり発生し、多くの場合は痒み(掻痒)を伴うため引っ掻いてしまうと、次々と感染したびらん面が拡大していきます。

とびひは子供にできる?

 とびひは、小児の感染症として最もよく見られる疾患の一つであり、肌バリア機能がまだ未成熟な乳幼児~小児にできやすい皮膚病です。

 「ブドウ球菌が常在菌としている鼻」などをさわった手などで虫さされやあせも/小外傷の部位を掻いてしまったり、アトピー性皮膚炎の患部を引っ掻くと、容易に表皮に2次感染を起こし膿痂疹を形成してしまいます。とくに夏季にできやすく、兄弟間や保育所などで集団発生してしまうこともあります。

とびひの原因

 伝染性膿痂疹(とびひ)の原因となる菌は、皮膚の常在菌である黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、レンサ球菌などですが、臨床的には必ずしもはっきり判別出来ないこともあります。

 おおむね水疱形成があるものを「水疱性膿痂疹」と呼び小児に出来る「とびひ」のほとんどがこのタイプです。炎症が強く、厚いカサブタが付着するものを「痂皮性膿痂疹」と呼び大人にできることが多いのですが、湿疹を掻き崩したお子さんにも出来る場合があります。

 水疱形成を起こす機序としては、「主としてブドウ球菌」が出す外毒素(エンテロトキシン等の表皮剥脱毒素)が表皮細胞間のデスモグレインを障害することによって、「角質/表皮顆粒層」に皮膜の薄い弛緩性の水疱をもたらします。

ストレスはとびひの原因になる?

 とびひの原因は、直接的にはなどを触ってしまった指先/爪先で外傷部分や湿疹のある部分をふれることによって生じるブドウ球菌などによる表在性の皮膚感染症です。

 一方で、お子さんの湿疹/皮膚疾患は「季節の変わり目のよる気候の変化/寒暖差・風邪を引いたあとに抵抗力が落ちる・寝不足や過労、ストレス」などによって免疫力や自己治癒力が落ちてしまい様々な悪影響を受けてしまう可能性があります。

 とくにストレス/睡眠不足などは、細菌感染疾患を悪化させる可能性がありますが、とびひが夏季に多いことから考えると、「暑さや汗による湿疹の掻き崩しや夏の気温」がとびひの悪化に係わっている可能性の方が大きいでしょう。ブドウ球菌は、常温での幅広い温度で増殖しますが、とくに30~37度で非常に活発に増殖至適増殖温度)することが最も大きな誘因と考えられます。

とびひの症状・写真

 好発部位は、顔/首・手足などの露出部から始まることが多く、鼻腔~上口唇にかけてびらん面などがあった場合には、「とびひ」が強く疑われます。初期には透明な水疱が出現し、徐々に膿疱を形成します。その後、掻爬などによって「じくじくしたビラン面」を形成し、薄い痂皮を伴う場合もあります。

 典型的なとびひは、引っかき傷/虫さされ/アトピーの掻爬に続く、「水疱形成、皮膚のびらん、ジクジクした局面」が拡大、周囲に飛び地の如く広がっていく等の臨床症状から診断は比較的容易です。

 一方で、鑑別疾患としては治療に比較的反応しやすい通常のとびひ(水胞性膿痂疹)であるのか、感染が重症化しやすい痂皮性膿痂疹であるかの判別に始まり、カポジ水痘様発疹症やブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)等(後述)になっていないかなど、医師の臨床的な経験を必要とします。

 また、単なるとびひであれば、抗菌剤外用/内服での対応となるのですが、ベースに乳児湿疹の悪化やアトピーの掻き崩しがないかなど、見極めることも大切となります。一般的に通常のとびひでは、発熱などの全身症状は伴うことは少ないとされます。

とびひは大人もなりますか?

 季節に関係なく、主として大人のアトピー性皮膚炎の方で、患部を掻き崩してしまい細菌感染を併発すると、痂皮性膿痂疹を発症することがあります。紅斑、びらん、痂皮の他に、発赤・腫張など感染傾向が顕著で、発熱・リンパ節腫脹などの全身症状も伴い、一般的な「小児のとびひ」より重症化することが特徴です。

 多くの場合は、レンサ球菌とブドウ球菌の混合感染となります。痂皮性膿痂疹が6才以下の小児に発症すると感染後1~2週間後より、浮腫・高血圧・発熱などを呈する糸球体腎炎を合併することがあり、注意を要します。

とびひの治し方・使うお薬は?

 治療は感受性のある抗菌剤軟膏を外用し、菌が拡散しないように患部はガーゼで覆った方が良いでしょう。外用剤はかつて頻用されていた「ゲンタシン軟膏・フシジンレオ軟膏」は、市中感染においても耐性株が多くなっているため無効なことが多く使用を避けた方が良いという報告があります。

 現在、市中でみられる「とびひ」では、キノロン系のアクアチム軟膏やゼビアックス軟膏が用いられます。外用剤治療は、いったん皮膚が乾いて治ってきたと思われても、少し長めに保護を続けないと、とびひが再燃してしまうこともあり注意が必要です。

 また、とびひになった原因が「湿疹の掻き崩し、虫さされ、アトピー性皮膚炎」がベースにあると判断される場合には、ステロイド外用剤の併用を行うようにします。とびひは引っ掻いたり、触ると周囲に広がってしまうので、湿疹による掻爬を防ぎ、皮膚を良い状態にしておく必要があります。また、古典的な保湿剤である「亜鉛華軟膏」を併用すると滲出液の吸収・消炎・局所の乾燥効果があり有用であるとされます。

 とびひの病変部が局所に限られていれば、抗菌剤外用のみで治まる場合もありますが、広くビランを形成していたり、複数箇所にとびひがある場合には抗菌剤内服も用いられます。通常はセフェム系抗菌剤内服をもちいます。

 昨今、市中感染でもブドウ球菌の耐性株が増えているとの報告もありますが、院内感染を起こすMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)と違って、比較的セフェム系に対する感受性は保たれています(※弱毒株CA-MRSA)。痂皮性膿痂疹の場合は、腎炎予防のため抗菌剤内服を長めに行います。
 痒みがあったり掻爬による拡大が疑われる場合には、抗アレルギー剤内服も併用した方がよいでしょう。

とびひにステロイド外用剤は必要か?

 とびひの診断を行えずに、「単にステロイド外用剤」のみを使ってしまうと返って局所の免疫力の低下を引き起こし、「細菌感染症であるとびひ」が悪化することが危惧されます。原則論として、とびひは細菌感染症であり、ステロイドは禁忌で使ってはいけないことになります。

 一方で、とびひの治療の基本は、教科書的には抗菌剤外用なのですが、実際に多くのとびひは「虫さされ、湿疹の掻き崩し、アトピーの悪化」を基盤とすることが多く、ステロイド外用剤の併用を行った方が良いでしょう。とびひには細菌感染単独で成立している「感染単独型」と、背景に湿疹病変があり、二次的に細菌感染を来している「湿疹合併型」があるとされます。

 近年は、感染単独型のとびひは減少しており、湿疹合併型のとびひには湿疹の治療も同時に必要(=ステロイド外用剤)となることが多いので「隠れている湿疹変化」を見極める皮膚科医の目線が大切となります。

※参考文献)伝染性膿痂疹にステロイド外用薬は可か?;梅林芳弘・治療Vol106,No7(2024.7)

とびひに市販薬は使えるの?

 とびひに間違って、ステロイド外用剤のみを使ってしまうと返って悪化してしまう場合もあります。市販の抗生剤軟膏は一般大衆薬として長く使われているものが多いため、原因菌であるブドウ球菌に耐性がついてしまっており効かない可能性が高くなります。

 また、皮疹が拡大傾向にある場合には、抗生剤内服は現在市販されておらず、はやめに皮膚科を受診するようにしましょう。

耐性菌の問題

 通常の抗菌剤内服/外用で治りが悪い場合には、細菌培養検査が必要となる場合があります。培養結果をみて耐性菌に有効な抗菌剤への変更を検討します。MRSAなどの耐性菌が検出された場合には、大きな総合病院にご紹介となる場合もあります。

 ホスミシン・ファロム以外に耐性菌に効くとされるミノマイシンは8才以下では歯牙黄染(内服後に永久歯が黄色くなる)の副作用があるため、さらにクラビットなどのキノロン系は関節障害のリスクがあることから15才未満が禁忌とされているので注意が必要です。

さらに難治な場合には、好中球機能異常などの免疫不全を基礎にもつケースを疑い、追加の精査を必要とする場合もあります。

とびひの治療経過は?

 通常はとびひは、表皮内の病変・感染疾患であり、適切な治療が早期に行われれば、とくに瘢痕や傷跡なく治ります。外用抗菌剤・内服の効果があった場合、正しいケアを行えば「じくじくは速やかに鎮静化」して、滲出液が減少します。2,3日後には薄く表皮が張ってきて徐々に乾いてきます。

 順調に行った場合は1週間~10日後程度でほぼ患部は上皮化し正常な皮膚がはってきますが、細菌感染は再燃しやすいので外用治療は少し長めに行うようにしましょう。4~5日経過しても患部が乾いてこない場合には、耐性菌の合併や治療が合っていないケースも考えられますので、早めに再診しましょう。

生活上の注意点

 入浴・プールは禁止として、局所の清潔および菌量の減少を図るために「石鹸での洗浄+シャワーで流す」ことが大切です。タオルは患者さん専用として、共用を避けることで感染拡大を防ぎます。爪は切って患部を掻爬しないようにします。鼻孔には多数の常在菌がいるので、鼻をいじらないようにしましょう。兄弟がいる場合には感染児の入浴は最後におこないます。

バンドエイド、傷パワーパッドは絶対避けて!!

 とびひが悪化してご来院される場合として、自己判断で「絆創膏/カットバン、キズパワーパッド、防水フィルム」などで覆ってしまっている方がいます。とびひの基本は、細菌感染症(+湿疹・アトピーの悪化)ですので、とくにキズパワーパッドで密封してしまうと「爆発的にブドウ球菌が増えて」、皮膚がドロドロになってしまっているケースもあります。

 これはコマーシャルであらゆる傷に、「キズパワーパッドが適応する」という過剰な宣伝も問題かとも考えられます。さらにネットでは、湿潤療法が拡大解釈され「どのような場合もフィルム/ラップ」で覆う方が正解だという間違った考えが広まってしまったことにも問題があるでしょう。

合併症/鑑別疾患

膿痂疹後腎炎;溶連菌が合併した場合には、膿痂疹後の3-6週間後に腎炎を発症したという報告があります。
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS);ブドウ球菌毒素が局所のみでなく、血流を介して全身の皮膚に運ばれて、広範囲の表皮剥脱や発熱なども伴います。
カポジ水痘様発疹症ヘルペス感染が元来あったアトピー性皮膚炎のある広範囲な皮膚に広がってしまう状態との鑑別に注意を要します。
トキシック症候群(TTS);ブドウ球菌の毒素が血液中に入り、発熱・下痢・嘔吐・筋肉痛・咽頭痛などの症状が急速に進行します。

※参考論文)成人の比較的小範囲な熱傷創より重篤・遷延化したtoxic shock syndromeの1例(原著論文);平本 剛士, 大木 更一郎他・熱傷33巻1号2007

とびひ は保育園にいけますか?

 通常のとびひでは、病変部の保護処置をすれば保育園、幼稚園、学校への出席停止をする必要はありません。但し、水遊び・プールは自家接触や他人への感染を起こすおそれがあり、完全に治るまで禁止とします。

 伝染性膿痂疹は、学校保健法上の「その他の感染症」とされるため、2010年の日本皮膚科学会・日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会の出した統一見解を参考に対処します。とびひは、「病変が広範囲におよぶ場合や全身症状」がある場合は、お休みして治療に専念しましょう。範囲が限られている場合は、患部をしっかりガーゼ等で覆っていれば登園/登校を控える必要はありません
 プールに関しては、プールの水では他人に移りませんが、直接さわることで他の人に移す恐れがあり、患部が完全に乾いて治るまで禁止とします。

まとめ

 とびひ「ありふれた皮膚感染症」ですが、しっかり診断が出来ていなかったり、抗菌剤外用のみしか処方されておらず、「湿疹の掻き崩しが悪化して治っていないケース」にもしばしば遭遇します。

 一方で、治療がきちんと当てはまっていると1週間以内に多くの症例が改善することが普通となります。再燃を防ぐためには、抗菌剤外用+ガーゼ保護「完全に皮膚が治るまで続けること」が大切です。とびひになる原疾患として虫さされや湿疹の掻き崩しがある場合には、抗菌剤外用に加えてステロイド外用剤・保湿剤などによる治療・スキンケアも続けるようにしましょう。

 当院では、乳児湿疹やアトピー性皮膚炎のお子さんも多く通院されており、「皮膚の創傷治癒」に精通した院長が直接診察させていただいております。お子さんの皮膚でお困りでしたら、当院までどうぞお気軽にご相談下さい。

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