《大森でピアストラブルの皮膚科クリニックをお探しなら》
もくじ
ピアスとは
ピアスとは、装飾や美容目的で「耳たぶ(耳垂)」に人工的に穴を作成・装着するアクセサリ-のことを指します。耳に付ける装飾品全般を、イヤリング(earring)と呼びますが、日本語では、一般に「穴に通すタイプ」のものがピアスと呼ばれます。
本来、英語の「pierce」は、“突き通す”、“穴を開ける”という意味の動詞であり、穴を開けること自体を「ピアッシング=piercing」と呼びます。ピアッシングから日本語としてなまって「ピアス」と呼ばれる様になった、和製英語のひとつとなります。なお、耳へピアスをする習慣は、古代エジプト文明や日本では縄文時代に、装飾品として始まったとされます。
ファーストピアスはどのようなものが良い?
1,インバネス・ピアッシングシステム
当院では、世界的なシェアーを誇るインバネス・ピアスシステムを採用しています。英国広告規制局(ASA)が、競合他社と比較して「もっとも安全で・最も技術的に進化した」という表現の正当性を認定しました。45年間、世界40カ国で2億人以上の使用実績がある安全で耳にやさしいピアッシングシステムです。
完全に密閉された滅菌済みのイヤリングカプセルをつかい安全かつ迅速にピアスホールを作成します。当院では医療用チタン製を採用しています。また、全てのインバネスシステムは、Ni(ニッケル)放出に対する最も厳しい世界標準を満たしています。(※欧州連合Ni放出指令)
2,チタンが一番安全!
一番安全なピアスの素材は、チタンとなります。チタンは1990年代から医療用として、主に骨折を止めるスクリュー・プレートなどに使われ始めました。軽くて丈夫であるだけでなく「生体適合性」が大変高いのが特徴です。
それ以前の、骨折の固定には医療用ステンレスが使われていましたが、感染を起こした場合には最終的には除去する必要性がありました。しかし、チタンプレートの時代になると「多少の感染・プレートの露出」があっても、その上に肉芽組織がどんどん盛り上がり傷が治ってしまいます
さらに驚くことに、ステンレスのものは、除去時に緩んでいることが「ほとんど」であるのに比べて、チタン製のものでは、①骨にがっちりと喰い込み、②骨がプレートを覆ってしまっているのです。これは、「如何にチタン素材が人体に対し適合しているか」の証明ではないでしょうか?
個人的な経験になりますが、ステンレス製のものでは、しばしば数ヶ月後にアレルギー症状が出現して患部が赤くなってしまい除去を必要とするケースがありました。一方で、チタン製のものを使うようになってからは、アレルギーによる合併症が皆無でした。
以前は、ファーストピアスとして、18金以上のものが使われていた時代もありましたが、近年は“金”による金属アレルギーも報告が多くなり当院ではおすすめしておりません。また、同様の理由により現在、持ち込んたものでの穴明けもお受けしておりません。
ピアスの素材
1,金属アレルギーについて
ピアスは皮膚に直接的に触れるアクセサリーであり、「とくに敏感肌の方」ではかぶれてしまうことがあります。原因としては、主にピアスの素材に使われている金属アレルギーが挙げられます。
付け始めて、しばらく症状がでなくても「汗などで素材の表面からの金属イオン」が溶け出すと、肌細胞の蛋白と反応を起こして「感作」(=かぶれやすい状態)が起こります。その後も、同じ金属に接触を続けると徐々に症状が悪化し、赤みやじくじくといった「かぶれた状態」になってしまいます。
とくに、安価なピアスには「ニッケル・コバルト・クロム」などのかぶれを起こしやすい金属が使われているので、“要注意”です。特に、ニッケルは加工しやすいこともあり、ベルトのバックル・アクセサリーのチェーン・硬貨など多くの身の回りの金属製品に使われています。
2,おすすめの素材は?
一流ブランドのピアスの素材をみると、プラチナ・シルバー・ゴールド(ピンクゴールド・ホワイトゴールド等)が多くなります。これらの金属は素材自体が、“かぶれにくい部類”に入り、かつ貴金属としての価値も高いので長く使うにはおすすめの素材となります。
一方、かぶれを起こしにくい“チタン”は貴金属ではなく、かつ細かな加工も難しいため、ティファニー・カルチェなどの海外一流ブランドにはありません。
3,かぶれやすい人が使える素材
現在、金属アレルギーがある方に使える素材は以下のとおりです。
- チタン
- 医療用(サージカル)ステンレス
- 樹脂製ピアス
- セラミック(京セラ)
- ガラス
チタンは、かぶれを起こすことがほぼ皆無なため「おすすめの素材」なのですが、金属アレルギー対応のブランドは限られているようです。ピン部分のみチタン製のものは、通販やアクセサリーショップでも見つけることができるでしょう。
サージカル(医療用)ステンレスも、お勧めしているサイトもありますが、やはり生体適合性の面より完全に安全とは言い切れません。かぶれたときの一次的なピアス孔の維持のために、樹脂やプラスチック製のものをお勧めすることもあります。その他、一般的ではありませんが、セラミック製やガラス製のものもあるようです。
ピアスを開けるには病院で
1,ピアスは医療行為
日本国内で、ピアス孔を開けることは「医療行為」となっております。したがって、病院以外でのピアスを開けることは違法行為となります。
一定の条件下で、「家族や本人がおこなう痰の吸引やインスリン注射」は家庭内で行う医行為として認められておりますが、基本的に人の体に“針を刺すこと”は医療行為です。医師法第17条には「医師でなければ医業をしてはならない」と定められており、違反した場合には懲役(3年以下)または罰金(200万以下)が科されることになります。
例えば、「お友達の耳にピアス孔を開けてしまった場合」にも、たとえ1人だけ行ったとしても、その後「反復継続する意思をもって」いれば、医師法違反となります。また、感染やトラブルがあった場合には、「傷害罪」にあたる可能性もあります。ピアッシングをお友達に頼んだりすることは止めましょう。もしも、友人に頼まれても位置・方向の確認をお手伝いするに留めましょう。
米国やヨーロッパでは、ピアッシングは一定の専門資格をもった宝飾店などで認められています。一方、日本ではピアススタジオなどでの穴明けは「無資格での違法行為」となります。以前、ピアッシング後に患部を出血させてしまい逮捕されたショップもあったそうです。「人の体に針をさす医行為」を生業として行い、かつ金銭の授受があった場合は、如何に施術回数が多く技術があるショップでも医師法違反となってしまいます。
2,ご自分でピアスをあけるケース
病院では値段が高いし、ピアススタジオが違法なら「自分であけてしまおう」と思われる方もいるかもしれません。自分自身に針を刺す行為も「医行為」にあたりますが、「生業(なりわい)」として行うのでなければ、医師法違反には当たらないと思われます。一般的には以下の2つの方法があります。
- 市販のピアッサーをつかう
- ニードルをつかう
ピアッサー(穴開け器)は、ピアスショップや通販でも多く販売されていて病院で開けてもらうよりも、値段も安くなります。一方ピアスは、普通は両耳垂だけに開ける方が多く、「一生のうち、1回だけ」という方が多いのではないでしょうか?
その場合に、不慣れなために「穴をあける位置がうまくいかなかった」、「斜めにあいてしまった」、「耳たぶを貫通できずに引っかかってしまった」などのトラブルも多いようです。
ニードルをつかう方法は、「耳に多数カ所に穴を開けている方」、「ボディもしている方」などの“ベテラン”の方がよく行う方法とのことです。以前の良質なチタン製ピアッサーのなかった時代には、病院でも医療用留置針をつかって「患者さん持ち込みのピアス」をつけていたことがありました。
ただし、針(=ニードル)の販売自体が、薬事法に抵触するため現在は国内で正規に販売しているお店はありません。通販で手にいれることも出来るようですが、原産国が明記されていない場合が多く、感染症などの問題があった場合にも全て自己責任となってしまいます。
3,病院でピアスをあける場合
病院でのピアッシングは、保険適応がなく自由診療となります。医師による施術で合法性があり、安全・安心なことがメリットです。コストは通常で、安いクリニックでも片耳3000~4000円程度はするようです。
医療機関でピアスを開けるメリットには、以下のものが挙げられるでしょう。
- 適切な位置に穴を開ける様にアドバイスが受けられる
- 左右対称な位置に開けて貰える
- 耳たぶ(耳垂)に対してまっすぐに穴が開く
- 消毒などの前処置を適切に受けられる
- 医療用の安全なピアッサーを使用している
- 金属アレルギーを起こしにくい医療用チタン等が使われる
- ピアッシングあとのトラブルにも対応してもらえる
一方、注意する点は、
- 医師が慣れていないと、まっすぐに開けられない
- どのようなピアッサーを使っているか明示していない(市販品を使用など)
などの問題も患者さん側から指摘されています。値段だけでなく、「医師の経験・経歴」や「使っているピアッサーを明示してあること」などを目安にクリニックを選びましょう。
どの部位にあけると良いでしょう?
ピアスの位置は、耳垂(耳たぶ)の真ん中あたりでバランスの良い場所が理想です。あまり下すぎると、重たいピアスをつけた際や引っかけてしまった場合に、「耳たぶ」の皮膚が裂けて、「耳垂裂」となってしまうリスクが大きくなります。
実際にピアスをつける際には、マーキングペンで鏡を見ながらご本人に「耳たぶ」に好みの位置にしるしをつけて貰います。医師が左右差をみたり、全体的な耳の形やバランスをみてアドバイスを行って微調整をさせていただきます。
当院の考える目安としては、
- 耳垂基部(耳たぶの付け根)の中点から耳垂の方向へ延長線を延ばす
- 延長線の向きは、耳垂横軸(点線)に平行で、かつ
- 延長線は、耳垂の断面は「~」状になっており曲線の境目と一致する
- 対珠前縁から珠間切痕方向に平行なラインを引く
- 耳垂基部からの延長線と対珠前縁からのラインの交点が理想的な位置
であると考えております。
実際には、耳には「左右差や大小の個人差」があり、一概に決められるものではありません。他の医院やブログなどでは「耳の前縁・耳たぶ下縁」から5~7mm程度がバランスがよいとの記載もみますが、かなりアバウトであり医学的な根拠はみあたりません。
最終的にはご本人の好みも考慮した上で、医師が耳の大きさ・角度・左右差・前からの見たときのバランスなどをみて「位置の微調整をアドバイスする」というのが良いのではと思います。
耳の大きさについては、おおよそ7~8才で「成人の8割の大きさ」に成長し、20才を過ぎて成人すると「しばらく同じ大きさ」で経過します。個人的には、通常のピアスが入らないような”厚めの耳たぶ”の方は若い女性では見たことがありません
一般に男性のほうが、「耳垂・耳介をふくめた耳の大きさ」が大きい傾向です。なお、耳は50代を過ぎて、老年期にはいると徐々に大きさ・厚さを増すことが多く、「いわゆる七福神のような福耳」の方が多くなっていきます。
どのように施術を行いますか?
当院では現在、ピアッシングを行っておりませんので、一般的なクリニックで行われてる具体的な手順について説明致します。
ピアスは医療行為であり、かつ安価な材料をつかってしまうと感染や金属アレルギーのリスクなどもあります。以前は,医療用ステンレスや18金製のピアスも使われましたが、「かぶれ・化膿」などの可能性の少ない個包装された滅菌済み医療用チタンのファーストピアスを用いるのが一般的です。
以下、具体的な手順になります。
- 耳たぶの状態を医師が診察
- 髪の毛を結ぶ、留めるなどで耳垂を見えやすくし消毒する
- 鏡を見ながら、患者さんの好みの位置を確認する
- 医療用マーキングペンで印を付けていただく
- 医師が前・横・斜めなどから見てバランスを確認
- 耳垂の大きさ、向きなどを考慮して位置の微調整をアドバイス・修正
- 医療用ピアッサーにて、ピアッシング
- 患者さん自身に位置を確認していただく
- 患部をガーゼで保護する
まず始めに前もって、どのあたりにピアスを開けたいか決めてから病院を受診した方が良いでしょう。一度開けたピアス孔は、入れ直す際も完全に消すことはできないため、慎重にお考え下さい。消毒液でかぶれやすい方や湿疹のある方は、担当医まで自己申告しましょう。他に大きな病気を持っていたり、ケロイド体質の方は避けた方が良いでしょう。以上をクリニックの問診票にちゃんと記入するようにします。
診察室では、医師が患者さんのご希望をお伺いし、耳の状態を確認します。ファーストピアスをしたあとは、しばらく取ることは出来ないため、ご予定がないかについても確認を取らせていただきます。はじめに付けるピアスは、引っかけたりしないように「シンプルなデザインのものがベスト」です。
施術時には、髪の毛が患部に掛からないように髪の毛を結んでいただきます。後れ毛などが掛かる場合は、ヘアクリップなどで固定させていただきます。耳全体を「前からと横から」ちゃんと見えるようにして、耳全体の形をみえやすくすることも、良い位置にピアスを開けるコツとなります。
位置決めが終わったあとは、医師が確認し「ピアッサーでの穴開け」を行わせていただきます。診察室内で、施術がはじまると余りに長い時間、場所決めで迷っている余裕がないことが一般的です。一度、孔を開けてしまうと位置の変更は出来ないため、「どのくらいの位置が希望なのか?、根元気味がよいか?、上気味が良いか?」などのおおよその場所を考えておきましょう。
実際には、医療用のマーキングペンにて、ご希望の場所に「小さな点」の目印をつけていただいます。マーキングペンの染料は、「ピオクタニン」という成分で、万が一でも施術の時に皮膚の中に入り込んでしまった場合にも、あとを残しません。体内にはいっても、「刺青」のように色を残さずに吸収される成分となります。
最終的な位置の確認を医師がおこない、耳全体から見た位置のバランス・前からみた左右差などを確認します。耳の大きさ・形・位置・前方からの見え方などは、「左右差・個人差」があるため、定規で計って左右が同じだからと言って「安心」できません。
経験のある医院では、「医師から見て適切な位置か?、極端に下方でないか?、全体のバランスなど」をアドバイスしてもらえるでしょう。
位置が決まって、患者さんに確認いただいたあとは、施術に入ります。個包装された滅菌済みのカートリッジを使います。通常、両耳分(2つ)が1セットになっています。カートリッジは滅菌されているため、患者さんの耳に触れるまでは清潔操作を行い「ピアス本体」に触れないようにします。ピアッサーに片耳分のカートリッジを装着したら、準備完了です。
施術時は、患者さんに椅子に腰掛けていただき、施術者は真横に座り「耳たぶの状態」を再度、確認します。
- 感染の元となる髪の毛が掛かっていないか?
- 耳たぶの厚さや傾き具合
- 耳垂の裏側の皮膚の状態
などにも注意します。
実際にピアッサーを耳にあてがう際には、必要に応じて「ガーゼ」で裏から耳たぶを軽く支えます。ピアッサーの引き金を軽く引いて、ピアスの先端の針部分を「少し」出します。針先を「マークしてあった目印」にあてがいますが、マーキング自体は、少し滲んで大きさがあるため、「ピアスを打つ直前」にも、術者は最後の微調整を行います。
この段階での「ありがちな失敗」は、耳たぶを引っ張りながらピアスを打ち込んでしまうことです。手を離した際に「斜めに入ってしまい」、そのほとんどが後ろ側が上がりすぎになって、前から見ると「ピアスが下向き」に入ってしまいます。修正するには、一度ピアスを外して入れ直すしかなく、同じ器具での清潔操作は出しません。
ピアッシング時は、「耳たぶは引っ張らずに、支えるのみ」とすることが大切です。耳垂を自然な位置に支えつつ、裏のキャッチの位置も耳垂に対して真横から観察して、ピアッサー全体の軸を耳垂に対して垂直にします。以上、「正面からの位置、刺入する方向、耳垂に対して垂直であること、裏に出る部位も適正であること」を確認した後は、ピアッサーの引き金を押し切ると、ピアスが耳垂に挿入されます。
普通に打ち切ったピアッサーは、自然に耳たぶから離れ引っかかることはありません。ピアスのキャッチが皮膚を圧迫してきつくないか確認をして、問題がある場合は少し緩めておきます。
最後に患者さんに鏡で位置を確認していただき施術を終わります。ピアスを開けた部分は、医学的には皮膚に針で穴を開けた状態ですから、抗生剤軟膏を塗布しガーゼで保護させて頂いております。
痛みは一瞬のため、あまり感じないと思いますが、終わった後に「ジーン」という鈍い痛みが多少残るかもしれません。通常、軽く冷やしたりすれば収まる程度なので心配はいりません。ちょうど、点滴の針をいれた腕の痛みと同じとお考え下さい。入れる瞬間は痛みがありますが、針が入った後は「針先が動かなければ」余り痛くないですよね。
以上のとおり、文字で書くと簡単で「たかがピアス開け」ですが、もし自分に開けなさいと云われたら、ひとりできちんとした位置に入れるのは相当難しい、と云わざるを得ません。かといって、「慣れたお友達(=繰り返し行っている)」に入れてもらうのは、完全に医師法違反の行為になってしますね。
※一部、美容系のクリニックでのみ対応しているようです。
施術後のケアについて
1,ピアスの穴のできかた
ピアス孔をあけた直後は、皮膚~皮下組織に穴があいた傷の状態です。通常は人の体に、針や刃物で傷をつけても自己治癒力により、感染などを起こさなければ自然に癒合してくっついてしまいます。
異物(金属)であるピンが人体に刺さったままだと、異物の周りの皮下組織(脂肪)が肉芽組織で覆われ組織を修復しようとします。さらに、そのままにして置くと、肉芽組織の上に、周囲の皮膚から表皮細胞が張り出してきて、異物のまわりに皮膚のトンネルが出来てきます。
表側からと同時に、耳たぶの裏側でも同様のことが起こり,穴の前後で皮膚同士がつながると「ピアス孔」となるわけです。
ピアス孔は決して「正常の皮膚」ではなく、“耳たぶに穴をあけて肉芽ができたところに皮膚が薄く張った状態”です。なるべく良い条件で治った傷の方が、柔らかく安定した「傷跡」になります。生体適合性の面からも、「チタン素材」のファーストピアスがベストとなる訳です。
2,施術直後のケアについて
ピアス後の処置=傷のケアと同じですから、医院や院長先生の方針によって、様々な考え方があります。最近は、「床ずれのケア」からでた考え方を踏襲して、“傷は水道水であらう”、“消毒はしない”という主張が蔓延しすぎています。
当院では、通常の傷跡のケアと同じ方法で指導をしています。
- 施術当日は濡らさない
- 翌日以降はシャワーで洗うように
- 洗髪などは、なるべく頭を下げて汚れた水が掛からないように
- とくにかぶれやすくない方では、1日1回はマキロンなどで消毒
- 消毒後は余分な消毒液は、ガーゼなどでそっと拭っておきます
- 抗生剤軟膏を孔の前後に塗布
- ガーゼで覆って髪の毛や汚れが着かないよう保護する
ピアス孔も通常の傷口と同じであり、施術後の一番大きな合併症は、「感染」となります。敏感肌でかぶれが出やすい方を除いては、シャワーで流すだけでなく1週間程度は消毒をして「感染を予防するメリット」のほうが大きくなります。
なお、施術後の一般的な注意点としては、
- しっかりした孔ができるには6週程度掛かる
- その間は外すことが出来ない
- 施術した日は、運動・お酒・サウナなどを避け安静に
- ファーストピアスをしている間は水泳など避ける
- タオル、寝具などで引っかけないように注意
- ピアスをしたまま寝るので柔らかめの枕とする
- キャッチ部分がきつくなり、皮膚に喰い込んでいないか確認する
などでしょう。
ピアスを引っかけてしまうと、痛いだけでなくピアス孔の中がまた傷になってしまいますので注意しましょう。キャッチがきついと最悪は、「皮膚に喰い込んで」、ピアスが埋もれてしまったり、周囲の皮膚が壊死になることもあります。少し余裕のある適正な位置になっているか、鏡などで確認してください。
赤みがつづく、浸出液がでる、耳が腫れているなどの異常時は、施術をおこなった病院に早めに相談しましょう。トラブルがあるからといって、慌ててピアスを外してしまうと「穴」は簡単にふさがってしまい、落ち着いてから「もう一度やりなおし」になってしまうこともあります。万が一、外れた場合はすみやかに病院へ掛かりましょう。ご自分で無理にいれると、出来かけのピアス孔を傷つけてしまう場合があります。
3,施術1週間目以降について
施術1週間を超えると、ピアス孔の周りは肉芽組織で覆われはじめ、耳垂の皮膚表面から徐々に表皮化がおこってくるため、感染のリスクは少なくなってきます。赤みや腫れがなければ、入浴時にピアス孔のまわりを石鹸でやさしく洗って、汚れやカスなどが貯まらないようにします。問題無ければガーゼで覆う必要もなくなります。
この時期にピアスを少しまわしたり、前後させることは孔に貯まった「カス」などを排出することにつながります。「施術後1ヶ月で交換が可能」との考えもありますが、ピアス孔の皮膚組織がまだ安定していない時期です。ファーストピアスを外すのは6週間目以降がおすすめです。
4,ファーストピアスの交換の時の注意
初めのピアスを外す際には、次に入れるピアスを前もって用意をしておきます。最初につけたものを外してすぐは、ピアス孔はまだ安定していません。ファーストピアスの次にするものという意味で「セカンドピアス」とも呼ばれているようです。
セカンドピアスでおすすめのものとしては、
- シンプルなデザインなもの(慣れないあいだは引っかけやすい)
- ヘッドが小さすぎないもの(先端が埋もれないように)
- プラチナ、シルバー、金など良い素材のもの
- ポスト部分がある程度の太さのあるもの
などが挙げられます。
一般的に「傷跡」は、医学的に治っていても、安定してくるまでには2~3ヶ月程度掛かります。セカンドピアスは、ピアス孔が安定させるために使うという意味があるのです。細すぎるピンや小さいヘッドでは、埋もれてしまったり、穴が細くなり太めのものが入りにくくなります。
ファーストピアスの入れ替え時には、「明るい環境」で、「髪をあげて耳を見えやすく」して行います。最初のピアスをそっと外してから、同じ向きに用意しておいたものをそっと入れていくと、スムースに入るはずです。その際、作られた「穴」がねじれない様にあまり耳たぶをひっぱりすぎないようします。無理におこなうと出血させてしまうこともありますので、家族やお友達に手伝ってもらっても良いでしょう。
最初にピアスを入れ替えたあとには、外しっぱなしにした状態でおくと「あな」が閉じてしまうことがあります。その際は、はじめに使っていた「ファーストピアス」を夜間寝ている間だけつかっておくと良いでしょう。おおよそ、2~3ヶ月でピアス孔は安定してきますよ。
よくある合併症と対処法
当院では、現在ピアスのトラブルのみ対応しております。ピアスは単に耳たぶに「孔をあける」だけと考えがちですが、しばしばトラブル例の方もご来院されます。
1,細菌感染
孔をあけた直後に起こる初期感染と、セカンドピアスにしたあとに起こる遅発性の感染に分けられます。ピアッシングは、皮膚に孔をあける行為で有り「人工的につくられた傷口」です。皮膚の表面や毛穴には細菌が常に存在していますが、傷の中で細菌が繁殖すると「細菌感染」となります。
傷負けのしやすさは、日々のケアの他にも「個人差」があります。とくに傷がついてから2,3日は良いのですが、その後の処置が悪いと4~5日過ぎあたりから「細菌」が指数関数的に爆発的に数をふやしはじめてしまうと、熱感・腫れ・膿などの症状がでてきます。
一部の医師で消毒は不要と唱える方もいますが、「傷には細菌感染を起こしやい時期」というものがあり、一般的に施術後5,6日を過ぎる「一次治癒」が起こるまでは油断できません。ちゃんと消毒して、感染を抑えるメリットの方が、「消毒液でかぶれを起こす」デメリットより大きいと考えます。
かぶれの原因は、消毒液の貯留と濃縮が悪化因子です。消毒をちゃんと効果的に行うには、患部の汚れをシャワーなどでしっかり流すことです。消毒は患部に30秒程度接触していれば効果を発揮しますので、消毒して少し置いたあとに余分な「消毒液」をガーゼなどで拭っておくことが大切です。
遅発性の感染は、良くクリニックにご来院される方が多い症状になります。ピアス孔が完成する前に、「引っかけてしまった」・セカンドピアスを入れる際に「孔に微細は傷がついた」ことなどが原因となります。「孔」から出血したり、膿がでてきたら要注意です。
通常は、「シャワーでの洗浄」+「消毒・抗菌剤軟膏」と抗生物質の内服で治まります。最初の施術より1ヶ月を過ぎていれば、入浴時にピアスを外して「耳たぶ」自体を石鹸で優しく洗いましょう。入浴後にガーゼなどで、「孔」部分をやさしく拭くと中から「カス・膿・血」などがでることもあります。
このときに役立つのが、「チタン製ファーストピアス」です。前にも述べたとおり、チタンは多少の感染も“ものともせずに傷が治って”しまいます。つけ替え時には、本体も汚れてしまっているはずなので、お湯であらい綿棒でカスなどを落としてから再度装着します。場合によっては、「ピアス自体も消毒して」つけた方がより清潔です。
感染した孔にうまく通すのは、やや難しいので家族の方などに手伝ってもらいましょう。
2,ピアスの埋入
ピアスのキャッチ部分がきつかったり、ヘッド部分が小さなものを使っているとピアスが「耳垂」に埋もれてしまうことがあります。キャッチが見えていて、ヘッドが埋もれている場合は、まずキャッチを緩めます。後ろからそーっと前に押し戻すと頭がみえることがほとんどです。
キャッチが埋もれてしまうケースも良くあります。「耳たぶ」前方からピアスを押すと、皮膚に埋もれたキャッチが見えますので、モスキートペアン(外科用の細い把持鉗子)でキャッチをつかんで持ち上げ、キャッチを広げると取れます。通常、局所麻酔を要することは余りありません。
ピアスをつけるときは、留め具をぎりぎりにせずに「1mm程度」の余裕を持ってつけて置くことが大切でしょう。必要に応じて、感染予防のために抗菌剤などが処方されます。
3,嚢腫形成
比較的多い合併症です。ピアスつけ替え時に、孔を傷つけてしまい皮膚組織が、「耳垂皮下部分」にはいりこんでしまい硬いしこりとなります。大きな問題とならない場合は、そのまま様子をみることが多いです。あまりに大きな嚢腫ができたときには手術が必要な場合もあります。
通常は、大きく腫れたときには、中の皮膚組織も感染と同時に融解してしまっていることが多く、排膿するとそのまま治まるケースがほとんどです。耳介周囲は、「耳前部・耳垂後面」などに毛穴がつまりやすく化膿したり、小さな嚢腫を作りやすい人がいます。耳周りが化膿しやすい方は、はじめからピアスを開けない方が安全です。
4,ケロイド・肥厚性瘢痕
耳垂・耳介は「ケロイドの好発部位」です。ご両親どちらかに「ケロイド体質」がある方や「怪我のあとなどが赤く腫れやすい方」では、ピアスを開けない方が無難です。出来やすい方では、穴開けのあとに特にトラブルがなくとも、「ケロイド」になってしまうことがあります。
ピアス孔自体がだんだん硬くなってきて、前後どちらかに「赤みのあるしこり状の傷跡」ができれば、間違いありません。初期は「圧迫療法」が有効な場合もあり、「専用のシリコンシート」を用いたり、大きめのイヤリングで抑えておくことも一法です。
ある程度大きくなってしまうと、通常行う「ステロイド外用・テープ・注射」などは、ほぼ無効なので、手術療法が必要となります。当院では関連大学病院の形成外科へご紹介しております。
5,金属アレルギー
もともと、「アレルギー」を持っていない方では、“他人事”と思ってしまうかもしれません。しかし、アレルギーは元来もっている場合よりも、「あとから感作されて」発症することのほうが多くなります。
ピアスは長い時間、「肌に直接接触」する装飾具であり、一度発症してしまうと、“治すこと” が出来ません。対処法としては、
- アレルギー起こしにくいチタン製のピンのものをつかう
- 金属製を避けて樹脂製、セラミック製などを使用
- 専用のコーティーング剤を使う
などしかありません。
チタン製のものは、前述の様に選択肢がすくなく、樹脂製のものでは長い間つけているのには“雑菌などの感染”が心配です。ピアスコーティーングもよいのですが、やはり長く付けている間に取れてしまい、あくまで一時しのぎです。金属アレルギーを起こしてしまった方では、ピアスをつけるのを諦めてしまう場合も多いようです。
金やステンレスも、アレルギーの原因となり得るため、金属アレルギーの予防には、
- ファーストピアスをチタン製にする
- セカンドピアスは、なるべく良い素材のものを選択
するのがよいでしょう。
6,耳垂裂傷・耳垂裂
原因としては、
- はじめの位置が耳垂の縁すぎたこと
- 大きめのフック型のものをしていて引っかけた
ことなどがきっかけとなり、耳たぶが裂けてしまうことが多いです。
はじめは、裂けた傷口(裂傷)なのですが、医療機関を受診する際までに「傷跡として治ってしまって」、形が裂けて耳が割れたようにみえることから“耳垂裂”と呼ばれます。
治療法は、形成外科的に丁寧にもう一度縫合するしかなく、“傷跡”が必ず残ってしまいます。そのまま縫うと、傷が引き連れて「辺縁がくぼんでしまう」ために、見えにくい下側~裏側で「Z形成=皮膚延長術」を行う手術が必要になります。
7,耳介軟骨炎
耳などの軟骨組織は、もともと血行がなく“周囲の軟骨膜からの栄養”で生きています。耳介部に腫瘍や出来物ができて感染を起こし、「軟骨部分に感染」を起こすと耳介軟骨炎になります。
軟骨の炎症・感染は難治性となることが多く、「炎症をおこした部分の軟骨」を切り取らないと治らない場合もよくあります。通常の抗菌剤治療が効きにくく、皮膚外科を経験している医師としては非常に怖い状態です。
耳介軟骨部分にピアスをするということは、「血流のない軟骨本体がピアス孔の一部」となり、血流のない軟骨表面に直接皮膚が薄皮を張っている状態です。普通におしゃれを楽しむ方では、「耳介部にピアスを開けないこと」を強く推奨します。
8,ウイルスなどの感染症
お友達同士で不潔な針(ニードル)でピアスをあけた場合や針を使い回した場合に起こりえます。ニードルは正規には、薬事法で国内販売が出来ないはずです。海外製では、出所不明の廃棄された鉄くずなどから作られることもあるそうなので、ご注意ください。
まとめ
当院では、現在ピアスの穴明けは対応しておりません。皮膚外科の医師として、
- 耳瘻孔・折れ耳・小耳症形成手術
- 耳介軟骨炎の治療
- 耳垂裂の手術・その他ピアスのトラブル
など経験してきたことが皆様のお役にたてばと思い、「ピアスのコツ」なども含めてまとめてみました。
ピアスのトラブルに関しては、引き続き対応しておりますので、ご相談頂けますと幸いです。また、さまざまな耳まわり(外耳)のトラブルにも対応しております。