紹介状とは?

 紹介状とは、正式には「診療情報提供書」と言います。元来、「病院間」もしくは「クリニック・診療所から病院へ」の患者さんについて診療情報の提供をおこなう書簡です。皮膚科クリニックに於いては、おもに下記の場合に紹介状がだされます。

  • 症状が重篤であり、すぐに大きな病院に掛かった方がよい場合
  • 経過が長引いたり、治療経過が思わしくなく、大学病院等でより専門性の高い診断・治療を行った方がよいと判断されるとき
  • 緊急性はないものの、今までの治療経過より詳しい検査・精査、治療を行った方が望ましい場合
  • 詳しい原因などを患者さんが調べて欲しいとご希望があった場合
  • 大きな腫瘍などで大きさや深さがあり当院では対処困難と判断されるもの
  • 皮膚生検・病理検査などで悪性と判定されたもの
  • 潰瘍や感染症の悪化があり、クリニックで対応困難と判断されるもの

紹介状の実物写真

 個人の行っているクリニックでは、検査・治療法などには当然として限界があります。当方も「一人の医師」としては、常日頃できる限りのよい診療・治療を行いたいと考えているのですが、決してすべての皮膚病の診断・治療を完璧にこなせるわけではありません。

 

 自院でできる診断・治療はしっかりと患者さんに提供しつつも、緊急性のある疾患経過の思わしくない症状に対しては、しかるべきタイミングで「しっかり紹介状をお出ししていく」ことも開業医師としての大切な努めであると思っております。

当院からのお願い
 当院では、紹介状を随時お書きしておりますので、ご依頼はどうぞ遠慮なくお申し出ください。なお、当院から紹介状を出す主な連携病院は下記のとおりとなっております。

 

当院から紹介状をよく出している連携病院

◆東邦大学医療センター大森病院

 大田区地区での地域中核となる大学病院です。多くの近隣総合病院が「土曜日が休診」のところが多いにも係わらず、第3土曜日以外は診療を行っています。なかでも「皮膚科がすばらしく」、紹介状を出しますと「必ず診断名・行った治療薬についての情報」を紹介元にフィードバックしていただけます。

 皮膚科には、接触アレルギー専門外来・乾癬専門外来・にきび/アトピー専門外来などがあり、クリニックでは対応しきれない詳しいアレルギー検査・難治性乾癬などの治療で大変お世話になっております。紹介状をもらった後にご自身で初診外来も予約が可能です。

 形成外科は、「月、火、木、金のみ」となっております。

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 ◆牧田総合病院

 令和3年2月に大森北にあった旧病院から「蒲田の新病院」へ移転しました。大森地区に病院がなくなってしまうという問題も残すものの、蒲田駅南口より徒歩5分ほどの立地にあり大森からのアクセスは悪くないです。

 移転に併せて、「形成外科=皮膚外科の専門科」が新設され大変お世話になっております。当院でもお昼休み中の20~30分程度で対応可能な「局所麻酔の小手術」はお受けしているのですが、一人で対応できる手術件数には限界があり、随時ご紹介させていただいています。最近、下腿の難治性潰瘍の方も快くお引き受けいただき、入院し外科的な加療を行った後に「すっかり上皮化」してきれいにして頂きました。

 皮膚科には、北見先生という真菌症(水虫など)の専門の先生が赴任されており、難治性の足爪病変などに詳しいとのことです。

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◆大森赤十字病院

 1953年に都内で2番目に「日本赤十字社(通称;日赤)」が開設した古くからある病院です。2011年に新病院が開院し全面的に新しくなりました。大森山王地区からは距離的に一番近いため、「湿疹の悪化、自家感作性皮膚炎、中毒疹など」でご紹介させていただいております。

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◆東京労災病院

 元々は、京浜工業地帯の労災に対応するための「労災専門病院」でしたが、現在は、地域医療にも力を入れているそうです。場所は産業道路を羽田に向かう途中を左折した先森が﨑公園前で、「森が﨑行きバスの終点」にあります。

皮膚科は林先生というベテラン先生が部長を行っており、周囲の皮膚科クリニックからのご紹介も多いようです。形成外科もあり皮膚外科手術全般に対応しておりますが、赤あざ専門レーザーである「Vビーム」という器機があり血管腫治療を得意としております。

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◆日本医科大学武蔵小杉病院形成外科

 院長の出身大学の附属病院の一つになります。月~土曜日午前の毎日診察を行っており、ほぼ全ての形成外科手術に対応可能です。多摩川を挟んだ川崎側となってしまいますが、西大井方面にお住まいの方ですと、横須賀線で一駅となりアクセスが良いのではと思います。

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◆昭和大学病院

 品川区の中核大学病院です。旗の台駅から近く大田区北の区境からも比較的近距離であり「北馬込・上池台」からのアクセスが良いでしょう。皮膚科診療は月~土の毎日行っていますが、形成外科診療は、月木金の午前のみと「やや縮小傾向」です。小児科では特に「食物アレルギー診療」に力を入れているとのことです。

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◆東京品川病院

 旧東芝病院から2018年に現在のカマチグループに移管され「東京品川病院」に改名されました。皮膚科と伴に形成外科も新設されましたが、旧東芝病院のときの担当医師とは変わってしまったようです。近隣で通院しやすい希望の方にはご紹介させていただいております。

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※その他、ご希望の病院がありましたらご紹介させていただきますので、お申し出下さい。

コラム;各病院へのアクセス・受診案内をお渡ししています

 改めて、それぞれの病院ホームページをみて確認すると、交通案内(アクセス)リンクが下の方にあったり、紹介状を持っている場合に予約ができるのか?さらに連絡先は・・と調べると記載場所がまちまちでご紹介された患者さんにも分かりにくいのでは?と考え、院内パンフレットを作成し、ご紹介時にお渡ししております。

 当院も混雑時は待ち時間が長くなり、ご来院される患者さんにはご迷惑をお掛けしてしまうのですが、これが地域の総合病院で人気のある先生の外来になると半日掛かりになったりすることもあります。すこしでも、スムースな紹介先受診への手助けになりますと幸いです。

紹介状に記載してある内容は?

  • 患者さん氏名性別および生年月日住所などの基本情報
  • 紹介先病院名および受診する診療科(+担当医名)
  • 当院の医院名+住所・電話番号
  • ご紹介する疑い疾患名
  • 既往歴(主として問診票の自己申告に基づきます)
  • 現病歴として、①いつころから、②どのような症状で、③当院での治療内容(下欄に最終受診日の処方内容など)、④診察、治療をお願いする挨拶文
  • 備考として、患者さんに関する注意点・ご心配している点など

 

 注意点は、経過の長い方ではすべてのカルテ内容を書いているのではなく「あくまで経過の抜粋・治療上困っている点」であり、「投薬内容も治療経過すべてのもの」ではないということです。通常、「お薬手帳」を作られていると思いますので、紹介先受診時には投薬内容の分かるお薬手帳も持って行きましょう。

 

病院への紹介状のもらい方はあるのでしょうか?

 「紹介状を書いてもらいたい」と言いにくいということはないでしょうか?基本的に、どこの病院でも「紹介状を書いて欲しい旨」受付で申告する、もしくは診察室で医師に申し出れば書いてもらうことができます。当院では紹介状を書いてもらうように、自己申告があった方はお断りすることはありませんので、ご遠慮なくお申し出ください。

 皮膚科疾患を長くみていると、アトピーや湿疹などで力及ばす患者さんが熱心に通って頂いても治りが悪かったり、急に原因もはっきりせずに悪化してしまう場合もあります。もちろん、適切なタイミングで医師から紹介状を書き、より専門性の高い大学病院・総合病院へご紹介できればよいとは、常に考えております。

 もしも、急な悪化であれば担当医師から紹介状を書かせてもらう旨の申し出があると思います。もしくは、患者さんからのお申し出があれば、「その場ですぐに紹介状」を書かせて頂きます。

※紹介先病院名は記載する必要がありますので、掛かりたい病院を前もって決めて置きましょう

 一方、そこまで急ぐ必要のない場合には、

  • 医師と相談の上、次回受診までに紹介状を書いておいてもらう
  • 受付に受診する数日前に紹介状の電話依頼をしておく
  • 医師から紹介状をだす旨の申し出があったので検討しておく

などという対応となるでしょう。

 

 もし、「引っ越しの予定が分かっている」、「経過が長いので紹介状もしっかりとした内容で書いて欲しい」という時には、前もって申し出があった方が医師も時間を取って紹介状を書いておくことが可能となります。

 

 「医師が紹介状を書く必要が高いと判断した」、もしくは「患者さんが治療内容にご不安があり紹介状を書いて欲しいと思っている状態」を放置していることは絶対によくありません。紹介状を書かないという対応はあってはいけないものと思います。

コラム
 逆に症状が酷くなっているのに、「忙しくて行きたいくない、行けない」という方もいらっしゃいます・・医師の立場としては紹介状をご用意しておき、時間をつくって受診されるように説得していくしかありません。

 

紹介状料金と「病院での選定療養費」の比較は?

 紹介状の料金を気にする方もいらっしゃいます。基本的に保険点数で250点となりますので、自己負担3割の方で750円の負担金となります。紹介状があると優先的に診察を行ってくれたり、前もって初診の予約ができる病院もあるようです。

 現在、大学病院や総合病院へ患者さんが集中しすぎることで、勤務医の疲弊・長時間労働が問題となっております。厚生労働省は「まず初期治療は地域医療機関」で行い、高度な専門性の高い疾患を「200床以上の大病院へ」という地域医療連携を勧めております。すなわち「原則、大学病院等の大病院に直接初診で掛かることを抑制」する政策を行っています。

 

 その代表となるのが、紹介状を持たずに大病院を受診した患者さんにご負担いただく「選定療養費(自己負担金)」という制度です。選定療養費は、通常の200床以上の病院では5500円(税込)以上を徴収することが義務づけられています。金額は病院によって異なり、安くて1100円から高いと11000円(東大病院など)となっております。

紹介状の必要性が増している!
 元々大学病院などの大病院では患者さんの紹介率(紹介状の持参率)が特定機能病病院などの「病院機能評価の指標」となっていました。さらに選定療養費という国の施策によって、今後ますます地域医療機関が「紹介状」を書く需要が高まっていくものと考えます。

紹介状をもらった後の予約は?

 大田区近隣ですと、紹介状を持っていると「東邦大・大森赤十字、昭和大学、牧田総合、東京品川病院」予約が電話で出来ますので、ご自身でご都合のよい日時をご予約お願い申し上げます。なお、連絡先はそれぞれのパンフレットをご参考にされてください。東京労災病院、日本医科大学武蔵小杉病院等の一部で初診での予約ができないようです。

紹介状の有効期限はどうなっている?

 紹介状に通達上の有効期限はありませんので、原則いつ受診されても構いません。一方、一部の患者さんで昭和大、東邦大に掛かったときに「3ヶ月以上期間が経ってしまった」ので診察を受けられないと事務レベルで断られてしまうという事例がありました。「3ヶ月以上経過すると症状も変わってしまう」ので、書き直してきて欲しいという主旨らしいです。

 そこで、都内を管轄している関東厚生局に電話で確認したところ、やはり「通達上の紹介状の有効期限」はないそうです。どうしても忙しいときには、「紹介状に有効期限はないはず」と病院事務で交渉してもよいかと思います。患者さんから依頼があるのに正当な事由なく診療をお断りすることは、診療義務違反になるものとも考えられます。

紹介状はみてはいけないの?

 紹介状とは「病院間の手紙(親書)」のやりとりになります。誰だって自分宛に郵便で来た手紙がすでに開封されていたら良い気持ちにはなりませんよね。書いてある内容が気になる場合は、診察室でどのような内容を書くかを紹介状を書いてもらう医院で確認するのがよいでしょう。

 もしも、紹介された病院の担当医が「紹介状がすでに開封されていた」ことを知ったら「お掛かりになる患者さんの心証」がすこし悪くなるのではと思います。紹介先のドクターに信頼されてきちんと診察して貰いたいときには紹介状は開封しない方が良いでしょう。

 実際は、紹介状を書くときには万が一開封してみても問題ない内容を書くことが一般的ですが、備考として「痛がりな患者さんです」・「疾患についてとてもご心配されています」・「手術のご相談だけの希望です」などの一文を添えることがあります。これも紹介先の先生が患者さんのお気持ちを汲んでいただきスムースな診療を願ってのこととなります。

まとめ・紹介先病院にお掛かりになる際には?

 紹介状をもらった場合には、紹介先病院のホームページをよく見て、

  • アクセス方法(電車かバス・車の場合は駐車場)
  • 予約がとれる場合には病院へ連絡して予約をしておく
  • 保険証・医療証などを忘れない
  • お薬手帳(別記事どおり紙のお薬手帳が望ましい・アプリの場合は書き出すかor印刷
  • 経過が長い場合は、問診票以外にB5用紙一枚程度に経過をまとめておく

などの準備をしましょう。

 医療とは、患者さんからの診察依頼があり、医師が診察を引き受けるという準委任契約と信頼関係の上に成り立っています。紹介状を書いて欲しいときには、

「症状の経過に不安があることなどを前置としてお話し」をした上で、

素直に、紹介状を書いて欲しい旨と行きたい病院名を告げるというやり方がよいでしょう。

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