もくじ
巻き爪矯正ワイヤー治療/病院でのおすすめ矯正器具の効果・治療費用・期間を詳しく解説
巻き爪矯正とは?
巻き爪矯正治療とは、過度に巻いてしまった「巻き爪」に対して、「ワイヤー、プレート、クリップ」など形状復元力のある矯正器具を使って、爪の弯曲を正常な状態に徐々に戻していく治療法です。矯正治療によって、爪が曲がって皮膚に喰い込む「痛みや炎症」などの症状改善が期待でき、手術や抜爪のように痛み・爪の欠損が生じない穏やかな治療手技となります。
矯正器具として用いられるものには、超弾性ワイヤーである「マチワイヤ」を初めとする形状復元力のある「ワイヤー法」、レジン樹脂やグラスファーバー入りなどの「プレート法」、自分で装着することも可能な「クリップ法」などがあります。クリップ法の多くは市販されており「ワイヤーにクリップ」を付けたもの、巻き爪クリップに代表される「バネ特性を持たした板バネ状」のものがあります。
「ワイヤー法」の多くは、巻き爪を専門とする皮膚科・整形外科などのクリニックで対応しており、「プレート法」の代表選手であるBSスパンゲ、ペディグラスなどは巻き爪専門サロンや接骨院で行われております。最近では、オリジナルである巻き爪矯正手技を模倣したようなものが数多く出回っており、患者さんからすると「一体どれが本当のオリジナルで効果のある矯正治療」であるか分かりにくくなってしまっていることも問題ですね。
巻き爪矯正は「平成28年の国からの通達により医療行為に該当しないネイルケアの一種」(※医師が治療を要さないと判断されたものに限る)とされたため、健康保険適用はなく、いずれの施設でも「自費でのケア料金」として自己負担料金が掛かります。最近では、この規制緩和によって多くの巻き爪サロンが乱立し、かつ各々の矯正手技が安全・効果的で優れていると過剰に宣伝されているのが現状です。
本コラムでは、マチワイヤ・VHO巻き爪矯正・BSスパンゲ・ペディグラス・そがわ式巻き爪矯正など国内で代表的な巻き爪矯正法を経験してきた院長が、実際にそれぞれの巻き爪矯正法の特徴・効果・治療費用などについてご説明していきたいと思います。
巻き爪矯正の歴史と進歩
巻き爪矯正の各々の方法論をみていくまえに、まず国内で行われている主な巻き爪矯正法の発祥についておさらいをします。
- VHO式巻き爪矯正;1979年ドイツのメディカルフットケア・Elvira Osthold氏が創設したオートニクシー研究所で開発された巻き爪矯正法です。「専用スチールワイヤー」の端にフックを作成し爪の左右に引っかけて、専用ループ状ワイヤーで巻き上げて爪を固定します。
- BSスパンゲ;1988年ドイツのBernd Stolz氏により発明された「弾性のあるグラスファイバー入りのプラスチック板」を爪に装着することにより巻き爪を徐々に広げていこうという方法です。
- マチワイヤ;1999年日本の整形外科医・町田医師により開発された「超弾性ワイヤー」を爪に穴を開けて通して、巻き爪を徐々に矯正していく方法です。
- ペディグラス;2003年日本のネイリスト・小島賢子氏が特許を取得した「弾性レジン樹脂プレート」を爪に特殊な接着剤で装着し、最短3~10ヶ月かけながら矯正を行う方法です。
- そがわ式巻き爪矯正;2012年香川県の整形外科医・十川医師により考案・報告された「レの字形状フックを加工した弾性ワイヤー」を巻いている爪端に直接引っかけて矯正を行う方法です。
以上が日本国内で行われている主な巻き爪矯正法となります。なお現在、弾性ワイヤー・プラスチックプレート・VHO式・ペディグラスを模倣した多くの方法が出回っていますが、本稿ではこれらについては詳しくは述べません。
巻き爪矯正の目的と原理
爪は元来巻く性質があり、靴などの圧迫によりバランスが崩れると徐々に巻いてくることがあります。少しずつ力を掛けて形状が変わるということは、その逆に爪に広げる力をジワジワと掛けていくと「巻いてしまった爪」を元に戻していけるのではというのが「巻き爪矯正の原理=グラジュアル・オルソニキシー ( gradual orthonixy )」となります。
変形してしまった爪を「盆栽」などのように針金でゆっくり形を整えていくことが巻き爪矯正の目的ですから、通常は1回のみの矯正で終わりということはなく、1~2ヶ月に1度は「ワイヤー・プレート」などを交換しながら徐々に元の形状に戻していきます。
さらに、現在では巻き爪矯正治療のみではなく、様々な「予備矯正手技」や矯正器具を装着する前の「事前矯正法」なども各医院で工夫されており、巻き爪矯正はより効果的で進歩した方法となってきたといえるでしょう。
巻き爪矯正の種類・特徴は?
巻き爪矯正の種類を大きく分類すると、
- フック状にしたワイヤーを爪端に引っかけて牽引する方法(例;VHO式巻き爪矯正)
- 弾性をもったプレートを爪表面に貼り付けて挙上する方法(例;BSスパンゲ、ペディグラス)
- 超弾性ワイヤーを爪に穴を開けて装着し挙上する方法(例;マチワイヤ・その他の弾性ワイヤー類)
- 弾性ワイヤーにフックを作成し、爪端に引っかけて直接爪を挙上する方法(例;そがわ式)
の4つに分けることができます。
プレート法は爪表面の自由な位置に貼って、矯正力を効かせることができる一方で「ワイヤー法に比較して矯正力が弱い傾向」があります。しっかりと矯正力を効かせるためにはプレート幅を広くする・複数本の装着を行うなどの工夫が必要となります。
ワイヤー法の古株である「VHO式」は牽引したワイヤーで若干爪は挙がるものの、継続した爪挙上力を発揮しにくく、完全に矯正が完了するまで時間を掛けて治して行く方法です。マチワイヤは2000年代以降本邦にて広まった矯正法で、矯正力も強力で一般的に広く行われていますが、爪根元側の矯正が行いにくい・爪が割れやすいなどの問題もあります。
当院で採用している「そがわ式巻き爪矯正」は、超弾性ではない加工出来る弾性ワイヤーを使用しており、ワイヤー端をフック状に細工出来ることが特徴です。一方でフック加工には細かな形状を形成する技術が必要であり対応した医院が少ないことが課題となっております。
当方の経験による各矯正法の特徴を以下にまとめてみます。
総じて、「プレート法」は審美性にたかく見た目はよいのですが矯正力はあまり強くない傾向にあります。「ワイヤー法」を比較すると、爪端のより奥までしっかり掛かるのは「VHO式とそがわ式」となり、爪の遊離縁に穴を開けて装着する「マチワイヤ」は通常は爪先にしか掛けることができません。
爪端に掛かる矯正力で比較すると、「マチワイヤ」は爪端・爪奥への矯正が効きにくく術者ごとに工夫をして対応している現状です。爪端奥にフックを掛けることのできる「VHO法とそがわ式」を比較すると、牽引法であるVHO式よりも、フック挙上法である「そがわ式」の方がすっきりと爪端が挙上できるでしょう。
当院がそがわ式にこだわる訳
以上のように「爪端奥にフックを直接掛けること」が出来て、かつ「爪端奥にダイレクトに挙上力」を効かせることができる巻き爪矯正法は現在のところ、「そがわ式巻き爪矯正」しか存在しません。
その他のフック挙上法(巻き爪マイスター・ツメフラ等)もありますが「フックの大きさ」がかなり大きめで、本当に爪挙上を行いたい「爪端奥のポイント」に直接矯正効果を発揮する方法が不思議と他にないのです。
巻き爪矯正ワイヤーの問題点・巻き爪の再発とは?
巻き爪ワイヤー矯正での様々な問題点
実は爪の巻き方は左右で違うことが多い!
巻き爪矯正を数多く行ってきて感じることは、左右対称に均一に巻いている患者さんは「実はほとんどいない」ということです。爪の外側と内側では爪の厚さが違っていたり、一見同じような厚さの爪でも爪の硬さに差があるということは良くあることです。
つまり、爪を均一に元の形にするためには、「左右対称に掛ける矯正法」には理論的に矛盾がみられるのです。プレート法であれば片側を薄く削る、マチワイヤであれば穴の開ける位置を爪の巻きに合わせてずらすなどの対応も可能です。そがわ式は、超弾性でないワイヤーであることにより、実は左右の巻きの違いに合わせて矯正力の微調整さえ出来るのです。
実は爪は爪端・爪奥の方が巻いていることが多い!
様々な巻き爪矯正法を経験すると、巻き爪矯正の不得意な部分も分かるようになってきます。爪端のみが奥まで折れ曲がるように巻いてしまう「ステープル型巻き爪」、一見爪先が酷く巻いているようにみえて爪挙上を行ってみると「爪端の奥の方まで巻いている巻き爪」などが矯正法での最後の課題と感じております。
マチワイヤでは「爪端が垂れて」しまい爪の奥まで矯正できない、VHO式では爪端奥にワイヤーが掛かっても効果的に爪挙上力が働かない、プレート法では爪端だけ巻くタイプのものでは接着力が不足しプレートが浮き上がってしまうなど当院では多くの課題を抱えていました。
一方で、2014年春より当院で導入した「そがわ式巻き爪矯正」はこれらの課題を一挙に解決する「巻き爪矯正法」でした。まさに挙げたかった爪端の一番奥のポイントにフックを掛けることができ、さらにダイレクトに爪端に矯正力を掛けることができたのです。
巻き爪元に戻る・再発が一定割合の方でいる
巻き爪矯正後には、爪の巻き方が強かった方ほど「再発傾向が高いよう(3割程度)」です。矯正治療が終わったあとにも何らかの予防的な処置が必要とされるケースでは、「そがわ式巻き爪矯正」では光硬化性樹脂や細めの矯正ワイヤーにて「プレート法」のように爪表面のみを使って予防的な矯正処置を行うことが可能となっております。
ご高齢者の硬くなった巻き爪ではゆっくり挙げた方が良い場合もある
加齢に伴って巻き爪となってくる方では、「爪が脆い・伸びが遅い・過剰な刺激で爪の伸びが止まってしまうことがある」などの特徴があります。一定以上の爪挙上が得られたら「必要以上の矯正力が働かない」ようにするなどの微調整もそがわ式では可能となっております。
サロンの宣伝では何故正面の写真だけ?
巻き爪矯正サロンのビフォーアフター写真をみて、「こんなに治るんだ!」と思ってしまいませんか?実は巻き爪矯正では爪先だけを持ち上げることは比較的簡単なのです。上から見せたり、斜めからの矯正後の状態では爪端が垂れ、奥が巻いてしまっているので正面からの写真しか載せられないのです。
正面からの写真しか載せていない巻き爪サロンでは、実際は根元が治っていないのです!!しかも、最近では治療費用もクリニックより明らかに高額となってしまっています。
※サロンと当院での矯正結果の比較写真は後半に載せております。
巻き爪矯正器具の病院おすすめのやり方・治療費用は?
当院では、①マチワイヤ、②VHO式巻き爪矯正、③BSスパンゲ、④ペディグラス、⑤そがわ式巻き爪矯正を順次取り入れてきましたが、現在「治療効果とオールマイティにあらゆる巻き爪に対応」できる点から「そがわ式巻き爪矯正」のみに対応しております。
それぞれの巻き爪矯正法の特徴や効果・治療費用などをちょっと長くなりますが以下に詳しくまとめましたので、巻き爪矯正で病院選びをする際のご参考にされてください。
マチワイヤ法
マチワイヤの正式名称は、「マチワイヤMD」=爪矯正用医療機器(医療機器製造販売届出番号 : 13B1X10264000002)となっており、多摩メディカルから医療機関向けに販売・購入が可能となっております。原材料はニッケルチタン合金に特殊処理をほどこすことで、強く曲げても回復力が一定であり、折れることがほぼ無く強い矯正力を発揮します。
医療機関への販売価格は税込で1本4400円となっており、太さは8種類(0.25mm、0.3mm、0.35mm、0.4mm、0.45mm (標準)、0.5mm、0.55mm、0.6mm)となっております。
基本的には爪先が2mmほど伸びるのを待ってから爪先端に穴を2つ開けてワイヤーを通し、1~2ヶ月ごとに新しいワイヤーに入れ替えることで矯正を続けます。開発した町田医師は、他法に比較して矯正力も強く現在一番理想的な矯正法だとしています。なお、マチワイヤを模倣したものは、各社より弾性ワイヤーが発売されていますが、超弾性という点で一番はマチワイヤであると思います。
通常考えられるマチワイヤのメリット・デメリットは以下の通りです。
マチワイヤのメリット
・非常に強い矯正効果
・ワイヤー太さの種類が多く母趾以外にも装着可
・通常は短時間の施術で装着できる
・片寄った巻き方にも穴の位置を調整して対応可能
・おもに病院での対応なので安心
マチワイヤーのデメリット
・ワイヤーが飛び出て当たることがある
・深爪だと掛けれず爪を伸ばす必要がある
・浸軟した爪・薄い爪では割れやすい
・爪端や爪端奥が挙がりにくい
・矯正中は常に爪を伸ばす必要がある
・爪下に角化物などがあると時間が掛かる
・市販弾性ワイヤーでも患者さんが行える
・医師の腕によりうまく挙がらない・矯正効果に差+
・初期設定費用が安価で、医院へのメリットが少ない
・そのため本法だけを熱心に行っている医院も少ない
矯正期間
爪の厚さ・状態にもよりますが、1~2か月おきに付け替えを行い、矯正期間はおおよそ3ヶ月~1年掛かるとされます。
治療費用・コストについて
全額自費治療として、初診料3000円程度・再診料2000円程度、ワイヤー代は実費4400円が相場のようです。独自の工夫を行い合計4回で4万円+αとする医院やワイヤー代を無料として保険適用で行っている医院もあるようです。詳しくは各医院のホームページでご確認ください。
※弾性ワイヤー近位装着の報告例;巻き爪リフトホームページより引用
マチワイヤの論文など
・超弾性ワイヤー(super elastic wire)による陥入爪,彎曲爪の矯正治療(会議録):町田 英一 日本足の外科学会雑誌 1999
・陥入爪,彎曲爪に対する爪矯正(会議録):町田 英一 日本整形外科学会雑誌 2000
※多摩メディカル https://tama-medical.com/
※マチワイヤ添付文書 https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/md/PDF/430874/430874_13B1X10264000002_A_01_02.pdf
VHO式巻き爪矯正
VHO矯正法とは、「専用加工のスチールワイヤー鋼線」を爪の大きさ・弯曲に合わせてカットし曲げたものを「爪の左右に引っかけ」、専用フックワイヤーを用いて中央部で巻き上げて爪挙上を行う方法です。
ドイツのフスレガーにより開発された方法で、手術以外の手技で血を出さない、痛くない方法としてVirtuose Human Orthonyxie の頭文字を取って「VHO=熟練技の人間的な巻き爪矯正」と名付けられました。
・Virtuose;熟練し
・Human;人間の
・Orthonyxie;ギリシャ語でまっすぐの爪
※なお現在は、爪に3パーツのワイヤーを使うという意味で「3TO」とも呼称されます。
VHOのワイヤー先に形成されるフックは、「小さなU字状」で、肉に当たらない爪端のギリギリに掛けるため痛みは基本的になく、ワイヤー装着後は軽く引っ張り挙げられる感じがします。
VHOワイヤーの材料は、外科用ステンレス鋼(クロム約18%、ニッケル約8%、マンガン約1%、炭素・ケイ素・リン・イオウ微量、残りすべて鉄)で、歯列矯正などにも使われる矯正ワイヤーと同じです。VHOを行うためのライセンスは、バン産商(台東区駒形)のフスウントシュー インスティテュート(FSI)部門で基本的には医師を対象として行われており、当方もライセンスを取るときにバン産商さんまでお伺いしました。
ワイヤー太さは、通常使用するノーマル0.4mm・親指以外に装着可能なスモール0.35mm、太めワイヤーのストロング0.45mmの3種類となっております。VHOワイヤーの購入は「ライセンス取得者限定」でバン産商のホームページもしくはFAXでの注文販売となっております。なおVHO式を模倣したものには「コレクティオ」があります。
通常考えられるVHO巻き爪矯正のメリット・デメリットは以下の通りです。
VHOのメリット
・爪端隙間ぎりぎり奥にフックが掛かり、より奥を矯正
・爪に負担を掛けない自然治癒力を活かした矯正効果
・ドイツで長年行われており世界的な実績もある
・出血や痛みも生じないので麻酔も不要
・確立された技術であり医師の腕による失敗が少ない
・医院の対応が主であり安心
VHOのデメリット
・他の方法よりも初回治療費用が比較的高い
・爪端が思ったよりも挙がらない
・深く入れすぎると痛いことがある
・フック牽引法のため爪端が挙がりにくい
・限界までワイヤーを巻き上げると爪に喰い込む
・矯正完了まで半年~1年近く掛かる
・1つの方法での矯正力の限界があり、医院によってはマチワイヤを組み合わせることもある(コスト+)
⇒ひとつの方法で完全ではない証拠とも云えます。
矯正期間
ワイヤーは2~3ヶ月に一度交換を行い、1年近く掛けてゆっくり矯正していきます(人間的と云われる所以)。爪の巻きが軽度の方では1~2回で症状・形態が改善する可能性もありますが、公式のライセンス講習ではVHO矯正では1年掛けて治していくとの説明でした。
VHO巻き爪矯正法料金・治療費用について
保険適用はなく自費でのケア料金が掛かります。以前は、ドイツでも保険適用のこともあったそうですが、医療費の高騰により現在VHOは保険適用ではなくなったとのことです。ライセンス講習を受けると、VHOの費用についての説明があり、初回1本で15000円+税、2回目以降は1本で10000円+税というのが治療費用相場のようです。
矯正に1年掛かり、合計5回おこなうとトータルで60500円費用が掛かることになります。医院によって多少の開きがあり安いと初回13000円程度からの所もあります。
VHO式の関連論文など
・皮膚科ケア 陥入爪・巻き爪に対する新しいワイヤー矯正法 VHO式治療 河合 修三 Expert Nurse 2004
・VHOの使用経験 河合 修三 皮膚の科学 2006
※3TO(VHO)巻き爪矯正技術 https://www.vho.jp/
BSスパンゲ
ドイツで開発された「グラスファイバー入りの特殊なプラスチック板」を爪表面に貼り付けて、その反発効果を用いて爪を正常なアーチへ戻していく方法です。爪に穴を開けたり切ったりするやり方ではないので、痛みもありません。
BSスパンゲの「BS」とは開発者であるBernd Stolzの頭文字であり、スパンゲとはドイツ語で矯正装具のことを指します。足と靴の研究所が、BSスパンゲの総輸入元となって、全国にB/S SPANGE認定指導者がおり、希望者は規定のセミナーを受講して資格認定を受けることができます。
爪を専用ネイルマシンで削ったり、スパンゲを密着して貼付できるようにスムースに爪表面を整える特殊技術と知識が必要とされるため、「BSスパンゲ」は一般通販では販売されておらず、セミナー受講者のみが購入可能となっております。
スパンゲの種類には、ノーマルタイプ、爪への装着を用意としたクイック、スパンゲ両端の接着面を増やしたハイフォーム、反発力を高めたプラスの4種類があります。セミナーを受講した医師がクリニックで行うこともありますが、特に資格は必要としないため、接骨院や巻き爪サロンでも広く施術されております。
通常考えられるBSスパンゲのメリット・デメリットは以下の通りです。
BSスパンゲのメリット
・しなやかなプレートを表面に貼る爪に優しい矯正法
・プレートは半透明で目立ちにくい
・爪が厚い方以外、施術直後より痛みが軽減、効果+
・爪への負担が少なく、爪が薄い方やお年の方でも安全
・爪を伸ばす必要がなく短い爪にも装着可能
・クリップ法と違い、爪の中央の効果的な部位を矯正可
・日常生活の制限もなく、ネイルも可能
・対応する巻き爪サロンが多く予約が取りやすい
BSスパンゲのデメリット
・硬い爪・弯曲が強い爪だとプレートの矯正力が不足
・術者の技術不足によりプレートが早期に剥がれる
・重度巻き爪で、プレートを2枚以上必要とし費用増加
・弯曲が非常に強いとプレートが折れる
・矯正を効かせたい爪端のプレート剥離が起きる
※類似の市販弾性プレートを自分で取り付けても爪の前処理や接着不足で取れやすいと思われます。
矯正期間
月1回のプレートの交換が必要となります。平均3~6ヶ月程度の矯正期間が必要であり、強度の巻き爪ですと1年近く掛かる場合もあります。術者の腕により矯正効果に差が出るため、当院では当方が講習を受けた「まちや接骨院さん」をお勧めしております。
治療費用・コストについて
おもに巻き爪サロン、接骨院などで行われており、治療費用は税込5000~9000円前後のようです。平均6ヶ月の施術とすると、ひとつの足趾につき1回6000円で、合計36000円程度のコストが掛かる計算となります。
BSスパンゲ関連論文
・陥入爪に対するグラスファイバー製矯正器具の使用経験(会議録) 村田 朋子 Aesthe Derma 2010
※足と靴の研究所 https://www.ashi-kutsu-soudan.co.jp/
※まちや接骨院(当院のおすすめです) https://www.machiyasekkotsuin.com/makizume.html
※BSスパンゲ認定指導者一覧 https://www.ashi-kutsu-soudan.co.jp/professional/leader/clasp.php
⇒当院はまちや接骨院さんでBSセミナーを受講させていただきました。
ペディグラス
ペディグラスとは、「弾性レジン樹脂プレート」を 爪端の表面に貼り付けて、装具を対側の爪端にたおす力で爪矯正(補正)を行う「国内外で特許も取得している矯正法」です。爪表面にしっかり装着するための下地作りを行って、装着後は余分な装具を削り取りコーティーングをすることで見た目もきれいに仕上げるのが特徴です。
ペディグラスのホームページ上では、プレート材料につき触れられていませんが、下記の英文文献からは「レジン樹脂」を用いているようです。
装具の種類は、「パワーフリースタイル・ワイドフリースタイル・スタンダードスタイル・フォークスタイル・ビッグフォークスタイル」の5種類あり、ペディグラスの資格を取るには合計5種類以上のセミナー(再発予防・根元上げなど)を受ける必要があり料金もトータル20万円以上掛かります。その上で規定の症例提出を行う必要があり、さらに矯正手技方法を勝手に変更しないように誓約書も書く非常に厳しいものとなっています。
装具の購入は送付されたカタログもしくはマイページからのみとなっており、講習を受けないものが自分で購入して行うことはできません。なお、ペディグラスを模倣したものには「スマートリフト、クリップオン」があります。
通常考えられるペディグラスのメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット
ペディグラスのホームページによると、
・矯正完了後よりすぐに痛みが消える
・透明な装具で目立たない
・痛みを感じず、装具が分からない程スムース
・日常生活でも問題なく、軽度のスポーツも可能
・短い爪やあらゆるタイプの爪に対応可能
・爪の根元部分も矯正するため再発率が低い(100%補償でない)
デメリット
・長時間入浴・プールで爪が浸軟し装具が剥がれやすい
・爪の伸びには個人差があり1年以上掛かることも
・爪が根元まできちんと挙がらないこともある
・矯正を根元まで完了しないと再発する
・1ヶ月以上の装着で亀裂が生じ雑菌・カビが生じる
・そのため必ず1ヶ月毎の交換をする必要
・器具に特殊接着剤を使用しており自身で外せない
⇒途中で辞めるときにもサロンにて取り外す必要+
※以上の内容は公式ホームページにも記載があり、承諾書を書くことになっております。
矯正期間
月1回の装具交換が必要で、軽症ですと早くて2-3回、重度な場合や爪の伸び方によっては1年以上掛かる場合もあります。
治療費用・コストについて
ペディグラスは講習費も高い分、矯正の治療費用も高い方となっております。本店・直営店では、装具をつける下地作り550~2200円、軽度5500円~重度8800円、補助上げ2200円、根元上げ7700円、割れ爪補正5500円と細かく分類されております。例として最安で6500円ですが、下地作り2200円+重度・補助上げ・根元上げを行うと20900円となります。平均で月14000円として1年掛かると、ひとつの足趾につき年間168,000円掛かることになります。
一方で何らかの要因にて巻き爪補正を継続しなくてはならない場合には、条件によっては継続補正という制度があり基本料金3300円となっているようです。なお、ペディグラスの施術料金は本部推奨価格以上での設定で行うとされています。
ペディグラス関連論文など
・Resin splint as a new conservative treatment for ingrown toenails Kazuya MatsumotoJ Med Invest 2010
・ペディグラステクノロジーを用いた巻き爪、陥入爪のケア(会議録) 五反田 希和子 日形会誌 2013
※ペディグラス https://www.pediglass.com/
そがわ式巻き爪矯正
そがわ式巻き爪矯正の正式名称は、「そがわ式巻き爪矯正装具」となります。矯正法の原理である「ワイヤー端にフック(hook)」を作成し、弾性ワイヤーの「スプリング効果」を用いていることから「spring & hook法(=SH法)」とも呼ばれます。ワイヤー素材は「歯科矯正に用いる矯正ワイヤー(ステンレススチール(主な素材;Fe,Cr,Ni))」の中から巻き爪矯正に適正なスプリング効果を持つものが選ばれています。
ワイヤーの特徴としては、①巻き爪矯正に必要かつ充分な弾性と強度をもっており、かつ②「超弾性」ではないためにワイヤー端にフックを容易に作成することが可能で、③患者さんおひとりおひとりの爪端の形状・厚さに合わせて自由な幅・厚さでフックの作成ができることになります。ワイヤーの太さは5種類(0.3mm、0.35mm、0.38mm (標準)、0.42mm、0.46mm)となっており、ぶ厚く硬い爪~薄めの爪、さらに親指以外の爪にもぴったりと装着することが可能です。基本は両側からフックを掛ける2本装着法ですが、片側のみ巻く方には1本で装着することもできます。固定は爪表面に前処置を施し、光硬化性レジン樹脂にて固定を行っております。
巻き爪が重度で爪端がみえないときに使う「爪エレバ法」、短い爪にも装着可能な「3次元フック作成」、爪と周囲皮膚との位置関係を修復する「捻りコットン充填法」など様々な巻き爪治療手技体系の総称を略して「そがわ式」と呼びます。開発者の十川先生は、本法を開発してから「マチワイヤ、VHO式」をつかうことはなくなったと述べているほど、爪端~爪奥の挙上が得意な方法です。
通常考えられるそがわ式巻き爪矯正のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット
・爪端の一番奥をきちんと挙上できます
・矯正法のなかでも群を抜いて強力な矯正力
・施術の期間、回数も短めです
・短い爪にもわずかな隙間があれば装着可能
・陥入爪で肉芽があっても矯正を行えます
・予防的な矯正では爪表面のみの装着も可能
・クリニックで医師が施行しており安心です
・ワイヤー太さが基本5種類のみで全ての巻き爪に対応
・その場で患者さんの状態に合わせたフックを自由に作成可能
デメリット
・対応している医院が全国で少ない(マイナー)
・矯正方法が個別指導のため広まっていない
・対応するのが医院のため矯正時間の制約がある
・医師によって習熟度に若干差がある
・ワイヤー法のため患部の保護が必要
・矯正力が強く、装着後1週間は入浴を短めにする必要
・爪下出血など過矯正になることがある
・そのため、過矯正にならないような調整も必要
・超弾性ではないワイヤーの特性を理解して矯正する技術が必要
※当方はそがわ式以外で巻き爪が過矯正になった経験がありません。
矯正期間
軽度の巻き爪では1回の施術で治ってしまうことが多くなります。重度の弯曲爪、根元まで強く巻いている方では1~2ヶ月に1回の装具の交換が必要で、2~3回の矯正装具の交換(半年程度)が必要となります。
治療費用・コストについて
料金は医院によって変動し、3000円~15000円程度のようです。当院ではワイヤー取付本体の料金として、1本矯正で8800円(税込)、2本矯正で11000円(税込)としております。巻き爪矯正は国からの通達により医療行為に当たらない爪ケアのひとつとされており、別途で通常診察の初診料、処置料、処方料(おおよそ1500~4000円程度・巻き爪の状態による)が掛かります。
そがわ式関連論文など
・SH(Spring & Hook)式巻き爪治療装具の紹介(解説) 十川 秀夫(そがわ医院) 日本足の外科学会雑誌 2013
・The Stainless Steel Wire-based Method of Sogawa Effectively Corrects Severe Ingrown Nails Hitomi Sano Plast Reconstr Surg Glob Open 2016
・巻き爪は自分で治せ! SH式自己治療装具(本)/ 十川秀夫・そがわ医院 2013
・巻き爪無痛治療-なぜそがわ式は痛くないのか?-/十川秀夫・そがわ医院 2020
※そがわ式 巻き爪 無痛治療法の紹介 https://ameblo.jp/sogamaru/
巻き爪矯正器具のおすすめ(番外編)
上記まではクリニック・医院などでもよく行っている巻き爪矯正なのですが、最近サロンで過剰に宣伝されている方法に「ツメフラ法」というものがあります。皮膚科ではマルホから「巻き爪マイスター」という製品もでており徐々に広まっているようです。両者とも通販などでの購入ができず、気になる皆さまもいると思われますので調べてみました。
ツメフラ法
現役医師が開発したとありますが、開発者は北海道帯広のやや南、中札内村立診療所の前所長の鈴木俊二医師であり2021年3月で同診療所を引退されております。2007年鈴木先生はスタッフのなかなか治らない巻き爪に対して自らワイヤーを曲げて「ツメフラ」の原型を試作作成したとされます。2012年には形状記憶合金を波型に形成し、両端にフックをつけた「ツメフラシリーズ」を考案されています。
販売は愛媛県今治市にある株式会社ツメフラから一般販売されていました。当初はツメフラ本体しかなく、「ご自身で装着しにくい、爪が割れる」などの問題があったためか2014年2月一般販売を中止し、ツメフラ法巻き爪矯正センターSunny Foot a Beauty主催のセミナー受講者か、医師のみが通販購入可能となっております。
ツメフラの材質は超弾性をしめす形状記憶合金とあり、公式サイトには詳細が明示してありません。ツメフラの特許内容(再表 2013-27256)をみますと、超弾性合金であるニッケル−チタン合金、銅−アルミニウム−マンガン合金、銅−アルミニウム−ニッケル合金からなるとされますが過度な力を加えると多少曲がってしまうようです。
形状は基本であるツメフラに加えて、爪前方から装着可能なツメキャップ、片側のみ前方タイプのツメフラキャップがあり状態に合わせて、組み合わせて使用される場合があります。2015年には巻き爪の予備矯正法である「リフター」が追加となり、ある程度の事前の爪挙上(1次矯正)を行っておくことで本体である「ツメフラ」の装着(2次矯正)を容易とし、より即効性のある手技に改善されています。
なお、本品は「巻き爪用矯正装具」で、医療用機器としての認可は受けておりませんのでご了承下さい、本品は治療用ではありませんので、用途以外でのご使用はおやめ下さいと公式サイトに記載があります。
ツメフラ法では「爪下層での水分喪失による収縮が巻き爪の原因」と考えられており、基本的には爪をお湯につけて、爪を柔らかくし・爪下の角化物を取り除いて爪端を見えやすくする手技に始まり、リフターによる爪挙上から本体である「ツメフラ」の装着を行う一連の手技となります。
通常考えられるツメフラ法のメリット・デメリットは以下の通りです。
ツメフラ法のメリット・向く方
・爪が伸ばせており、厚みのある方に向く方法
・爪先がある程度が挙がり、痛みを取りたい方
・ご自身で市販の巻き爪装具を着けられない方
・装具はご自身での予防的な装着・着脱が可能
・矯正期間は半年程度とされる
・巻き爪サロンのため好きな時間に予約が可
・近くに巻き爪対応の専門病院がなく、取り合えず治したい方
ツメフラ法のデメリット
・主にサロンのみでの施術となる
・巻き爪サロンにより過剰な宣伝がなされている
・あらゆるタイプの巻き爪を治すことはできない
・短い爪や陥入爪にはおすすめできません
・爪先からの症例写真提示のみで、爪根元が治らない
・フックが大きめで爪先装着となり、根元に入らない
・矯正力が弱く風呂に長く入る指導がある
・常に爪を伸ばしておく必要
・発明者とされる医師の学会報告がない
・多くの太さ・大きさの装具を取り揃えておく必要
以上のようなことが挙げられますが、巻き爪サロンではデメリットについて記載がほぼないことも問題ですね。
矯正期間
1回の施術ではなおらず平均4回、3ヶ月は掛かります。なお、中程度~軽度では2,3回で改善するとありますが、重度の方について回数を明示してある施設がみられません。
重度の方では回数が多くなること・爪の状態により回数が異なる場合があるとの記載があります。文献上は、ツメフラ治療を行った患者の治療にかかる期間は平均で6.2±0.5ヵ月であったとの報告があります。
ツメフラ法料金・治療費用について
初回施術費は、軽度で14080円、中度で16280円、重度で20680円(税込)でかなり高額となっておりリーズナブルとはいえません。2回目以降はやや減額されるようです。
装具はそのまま使えるとのことですが、装具は永久に使うことは無理そうで使い方により破損することもあり、紛失・破損の場合には装具代のみで8690円と他法に比較してやはり高額となっております。さらに巻き爪が多数箇所に及ぶとかなり高額にある恐れがあります。
ツメフラ法関連論文
・巻き爪矯正用具「ツメフラ」と重度巻き爪の予備矯正用具「リフター」による巻き爪矯正の追試経験(原著論文) 米澤 幸平 中部整災誌 2018
・母趾巻き爪・母趾陥入爪への「ツメフラシリーズ」の使用経験 巻き爪と陥入爪で使用するワイヤーは異なるか?(原著論文) 米澤 幸平 中部整災誌 2019
※ツメフラ開発者の鈴木俊二先生の記事 https://oishasan-net.com/tp_detail.php?id=165
※makidumedeskのブログ(鈴木医師の匿名ブログ) https://ameblo.jp/makidume-tumehura/
※株式会社ツメフラ http://tsume-flat.main.jp/index.html
※ツメフラ法巻き爪矯正センター・ツメフラ協会 Sunny Foot a Beauty https://www.tsumeflat.jp/
ワイヤー矯正は現場で患者さん毎の爪の状態にあわせてフックを作成できるそがわ式SHワイヤーの方が断然メリットが大きいと思います。多数のワイヤーを用意しておくことは、患者さんの費用負担の増加を生じてしまいます。
巻き爪マイスター
巻き爪では、まず皮膚科を受診するケースが多いのですが、一般的な皮膚科が全て「巻き爪矯正治療」に精通している訳ではありません。一般皮膚科外来の合間には、「マチワイヤ・VHO・ペディグラス・そがわ式」などをきちんとおこなえる時間的な余裕がないのが実情で、それぞれの医院で時間指定の予約制にしたり、巻き爪専門の時間帯を作って対応しています。
2010年頃に皮膚科専門メーカーである「マルホ」から関連会社のマルホ発條工業株式会社(京都のバネ、医療部品専門メーカー)に対して、①皮膚科外来でも出来る簡便な装着法で、②持続的な矯正力があり、③安全性の高い巻き爪治療装具の作成依頼がありました。皮膚科の医療現場にて、簡易・安全な巻き爪矯正器具を求める強い声があったとのことです。
数多くのバネ職人による試作品を経て、「超弾性ワイヤーと自社の強みであるコイルバネ・U字フック」を組み合わせるという発想にたどりつき7年の開発期間をへて2019年完成・発売となったのが「巻き爪マイスター」となります。さらに、2021年より内臓の超弾性ワイヤーが2本タイプに変更となりステープル型巻き爪や弯曲爪にも装着しやすく改善を図ったそうです。装具は医療機器として承認されておりますが、保険適応はなく自費での治療となっております。
適応サイズは爪幅14~25mmまでで、サイズはSS、S、M、Lサイズの4種類となっております。装具の構造は違いますが、片側のフックを爪端に引っかけて「専用鉗子」にて引っ張り、対側に掛ける操作は「ツメフラ」と同じですね。
通常考えられる巻き爪マイスターのメリット・デメリットは以下の通りです。
巻き爪マイスターのメリット
・皮膚科専門メーカーのマルホが開発、皮膚科医院で対応
・装具は爪が伸びても奥にずらして継続使用が可能
・装具の装着は容易で爪に穴を開けないため短時間で出来る
・フックを専用鉗子で爪の厚さに合わせて着けるため取れにくい
・巻き爪マイスターが外れた場合にも、すぐに医院へいけば再装着可能
巻き爪マイスターのデメリット
・爪をある程度伸ばさないと装着できない
・対応するのが病院のみで、装具の調整にも受診が必要
・対応する大きさ14~25mm以外の爪には装着出来ない
・装具がやや大きく爪の上に出っ張る
・過度な運動や水泳をさける必要がある
・現時点でワイヤーの強度が1種類しかない
・硬い爪や重度の巻き爪の実績が少ない
矯正期間
通常は2~3ヶ月で改善することが多いのですが、重度の巻きの方では数ヶ月以上掛かることがあるとされています。
巻き爪マイスターの料金・治療費用について
巻き爪マイスターの保険適応はなく全額自費として8800~15000円程度が相場のようです。2回目以降は2200~4400円で、装具は爪の状態によってはそのまま奥にずらして使用を続けることができます。装具が壊れたときには再度購入6600~8800円が必要です。
巻き爪マイスター関連論文など
・巻き爪マイスターによる巻き爪治療の経験(原著論文) 桑原 大樹 茨城県医師会報 2021
※マルホ巻き爪マイスター https://www.maruho.co.jp/medical/articles/makizume/feature/index.html
巻き爪矯正・各々の矯正力はどうなの?
一体どれが効果的な矯正方法なのか参考になりましたでしょうか?ここで、自院内での巻き爪ワイヤー等の「矯正力測定結果」を参考値として載せておきます。巻き爪矯正は、「医療行為でない自費でのケア」とされてしまったために、公的な機関での適正な評価がなされていないことも問題ですね。
測定方法としては、巻き爪に見立てた直径2cmの円柱木材の「長さ2cmの孤部分」に沿って矯正装具を押し当てるのに必要な力を「プッシュプルゲージ」を使って測定しました。なお、測定には統計的な処理は行っておらず、自院での参考値とするための「単回の測定」であることをご了承下さい。
直径2cmの円柱を測定基準にした訳は、超弾性であるマチワイヤを除いた多くの巻き爪矯正器具は「ある一定以上曲げてしまう」と折れて曲がってしまうため、「多くの巻き爪装具の矯正力のピークがある直径2cmの円弧」に沿って曲げたときのワイヤー反発力を基準としました。
※マチワイヤ以外のプレート・ワイヤーを曲げた写真は他の矯正法への批評となってしまうため、あえて載せていません。
巻き爪マイスターは「忙しい皮膚科外来での簡易な取付と安全性」を優先しており、上記のように一番低い矯正力となりました。意外であったのは「ツメフラ」で太いワイヤーにも係わらず爪の弯曲に沿った矯正力はあまり高くありませんでした。ツメフラは「爪幅・爪の厚さ」によっていくつかの太さが用意されていますので、もう一段階太い0.8であれば良い結果が得られたかもしれません。
マチワイヤとBSスパンゲは丁度中間くらいの矯正力ですが、「マチワイヤは太さのバリエーション」が多くあり、BSスパンゲにも矯正力の強い「プラス」シリーズがあります。
ぺディグラスは標準であるパワーリフトスタイルでも上記のとおり強い矯正力があり、さらに幅が厚めのものや爪奥矯正専用のプレートもあり、非常に矯正力が強いことが分かります。そがわ式にも爪の硬さ・厚さに応じて、さらに太い0.46(当院では0.5,0.56も常備)が用意されております。
巻き爪矯正ワイヤー割れる、外れる場合
巻き爪矯正でのワイヤー治療中には、爪が割れてしまったり、外力によって外れる場合があります。とくにマチワイヤにおいて「爪端ぎりぎりにワイヤー孔を開けたり、強度のつよすぎるワイヤーを使う」と矯正力の掛かる穴部分に過剰な力が掛かり割れやすくなります。
対策としては、①細めのワイヤーを複数本掛ける、②あまり爪端に穴を開けすぎない、③アクリル樹脂にて補強を行うなどの方法が取られます。アロンアルファでの補強は、数回水に濡らすと強度が落ちてしまい意味がありません。
VHO巻き爪矯正・そがわ式の方がマチワイヤより爪が割れたりしにくいのですが、装着後しばらくすると「爪の巻きが改善されるに従い緩み」が生じ、さらに「ワイヤーのフック部分」が爪先に移動してきます。そのため、不用意にタオルや布団、靴下の線維などに引っかかるとワイヤーが外れてしまう場合もあります。矯正ワイヤーを長持ちさせるためには、テープやガーゼ等で保護をしておいた方が安全です。
とくにプール・温泉などに入ると爪も膨化して柔らかくなるため、その他のクリップ法でも脱落のリスクが増え、またワイヤーを落とすと見つかりにくく、周りの人に迷惑を掛けてしまいます。防水の布テープ等で保護して脱落を予防しましょう。
巻き爪矯正の資格は?
巻き爪の治療である「陥入爪根治手術・局所麻酔下の爪甲抜去術」などは明らかに医行為であり医師しかおこなうことはできません。一方で、医師が治療を要しないと判断した巻き爪の予防的ケアは医行為ではないという通達が平成28年に経済産業省よりでたため、多くの接骨院やサロンが巻き爪矯正に参入しています。
巻き爪に対する国家資格は厳密にいうと医師国家免許しかありませんが、ペディグラス・BSスパンゲ・VHOなどでは規定の講習・セミナーを受講して基準をみたしたものに独自に巻き爪補正士などの民間資格をあたえています。それぞれの矯正法が一定の技術水準を満たしたものに施術を行って欲しいということであると考えられます。
一方で巻き爪サロンなどでは、「柔道整復師の資格」を持ってして国家資格保有者が施術を行うとありますが、「柔道整復師の資格」と「巻き爪矯正」には何の関係もありません。柔道整復師が広告してよい事項としては「骨盤矯正、姿勢矯正、腰痛、肩こりなど」がありますが、「巻き爪矯正・治療もしくは治します」というのは広告違反とされていますので、ご注意ください。
巻き爪矯正ワイヤー治療/病院でのおすすめを動画にしました
まとめ
巻き爪矯正は「矯正効果・治療費用・利便性」のバランスを考えて選ぶ
巻き爪矯正ワイヤー治療についての概説と問題点についてご説明いたしました。我が国では、「巻き爪矯正が始まってまだ20年余り」に過ぎません。黎明期にはマチワイヤに始まり、ドイツ式のVHOやBSスパンゲ等が国内にも導入されてきました。
現在も様々な矯正法が出てきているのですが、どれも本当に奥の曲がっていて治したい部分に手が届かず、決め手になる矯正法がなかなかでてきません。
当方が様々な矯正法を学んできたのは「どれが本当に効果的で爪をしっかり挙上出来る方法なのか」が分からないということが原点です。これは巻き爪治療を行っている医師の悩みでもあり、同時に患者さんもどの矯正方法を選べばよいのか分からないという点、では共通なのかと思います。
※フック作成には細かな作業が必要であり、対応医院が未だ少ないのが問題点です。