もくじ

※巻き爪手術と後遺症のリスク

巻き爪の手術とは

 巻き爪の手術は、「巻き込んだ爪甲、爪床部分および根元の爪母・爪郭部の楔状切除」をおこなう陥入爪根治手術(爪床爪母の形成を伴う複雑なもの)を適切に行うことが外科的な標準治療方法です。罹患する足趾は、圧倒的に母趾に多く、まれに第2~5足趾が巻き爪になることもあります。

 下肢~足の傷は、上半身の傷と違い「靴の圧迫や重力の影響」で術後の患部腫張や創癒合遅延が起こりやすく、手術後に創部が完全に落ち着くまでに2~3週程度要することが注意点です。

 巻き爪・陥入爪の治療は、以前は手術療法がメインでしたが不適切な手術を行われた結果、「爪棘の再発・残った爪甲がさらに巻き込む、爪が狭小化し足趾の支えとならない、沈下爪状態となる」などの後遺症をのこす患者さんも少なくありません。

 また、巻き爪手術は「本来は皮膚外科疾患」であり、一般皮膚科ではなく「皮膚外科の専門である形成外科や整形外科」で行われるべき手術適用の疾病となります。

巻き爪・手術以外ではどう治せますか?

 1990年代までは、上記の手術療法しか治療手段がなかったのですが2000年代にはいり「マチワイヤ・VHO式巻き爪矯正・各種プレート法に加え、テーピング法・コットン充填固着法・人工爪法」など様々な保存的な治療法が開発され、現在は手術の絶対的な適応は少なくなりつつあります。

※本記事は、大木院長の皮膚外科(形成外科医)としての手術療法・術後経過に関する長年の体験談が元となっておりますが、現在当院では一般皮膚科診療および巻き爪矯正の対応のみ行っております。

 手術療法が必要な方は、近隣の形成外科医の在籍している病院をご紹介しておりますのでご了承の程お願い申し上げます。

巻き爪手術方法・手術名は?

陥入爪手術・簡単複雑の違いおよびフェノール法について解説していきます。

巻き爪の手術名・算定要件は?

 巻き爪手術の名称は、正式には「陥入爪根治手術」とも云われ、巻き込んだ爪甲・爪床部分および爪母を除去して平坦な爪甲部分のみを再生させることを目標として行われます。陥入爪手術の目的は「保存治療でも矯正不可能」な、①高度の爪甲の弯曲を手術的に摘除して、②再び爪が巻き側爪郭に喰い込むことを防ぐこととなります。

 巻き爪手術の算定要件(簡単・複雑)の違いとしては、上記の正式な手術手技・外科的な爪母切除に対して陥入爪手術(爪床爪母の形成を伴う複雑なもの)が算定されます。一方で、爪床・爪母の外科的切除を伴わないものでは陥入爪手術(簡単なもの)として算定されます。

 ※手術算定では該当する手術法がない場合は、「その手技に相当する手術」として算定できる場合があり、「皮膚科でメインに行われるフェノール法」爪床爪母形成を伴わない爪母に対する腐蝕療法のみにも係わらず陥入爪手術(爪床爪母の形成を伴う複雑なもの)として算定されるケースがあります・・・

巻き爪手術・複雑/簡単の算定基準は?
 実際に「巻き爪手術の簡単なもの、もしくは爪床爪母形成を伴う複雑なもの」はどういった基準で分かれるのでしょうか?通常は爪床爪母形成を伴う鬼塚法あるいは児島Ⅱ法が「複雑なもの」の要件を満たすと考えられますが、実は関東信越厚生局に確認したところ、爪母に対する外科的処置(メスによる切除・電気メスによる焼却法・薬液による腐蝕治療)を伴えば、爪床爪母形成を伴う複雑なものと算定して良いとのお返事を頂きました。
 すなわち、爪母上までの短冊状の抜爪が「陥入爪手術・簡単なもの」を指し、爪母の上まで至らない楔状の爪甲切除が「爪甲抜去術」の算定要件を満たすと考えられます。(R6/5/31関東信越厚生局に確認済)

※上記はあくまで関東信越厚生局の管轄内のお話となりますので、詳しくは各地方厚生局にお問い合わせ下さい。

 

巻き爪手術は痛い?正式な麻酔方法は?

 巻き爪手術の麻酔は足趾の基部に対しての「1%キシロカイン(エピネフリン無)」等の局所麻酔薬をもちいたOberst(オベルスト)伝達麻酔が標準的な方法です。

※図解局所麻酔法マニュアルより引用

 母趾の場合には、1,足底部の支配神経である内側足底神経、2,足背外側の深腓骨神経、3,足背内側の浅腓骨神経のそれぞれの位置を解剖学的にしっかり理解し、適切に局所麻酔を注入することにより完全な無痛状態が得られます。通常、足趾ブロック麻酔をおこなうと手術時に痛みはまったく感じないことが普通です。

 患部は無血野の手術とするためネラトンカテーテルなどで足趾の基部を駆血してから手術を行うことが一般的です。

 

 ※一部のサイトで爪周囲に直接麻酔を打った方が痛くないと主張するものがありますが、末梢知覚神経は足趾・指先の末端にいくほど密に分布し、爪周りにも多くの神経が分布しています。解剖学的正しい知識を持たずに足趾・指先周りの麻酔をすることは厳に慎まなければなりません。

巻き爪手術の目的

A、保存療法が無効な巻き爪・陥入爪の炎症を出来る限り短期間(約2週間以内)に治癒に導き、手術後に靴を履いて生活出来る状態に戻すことである。
B、切除した爪縁部が再発したり、爪棘となって残さないように、除去した爪甲根元部分の爪母を完全に切除し、かつ残すべき正常な爪甲根元の爪母は傷をつけてはならない
C、さらに、残存する爪甲の爪縁部と側爪郭を正しい位置に形成し、残った爪の巻き爪が再発しないようにすべきである。


 以上の条件をみたすためには「外科的な爪床・爪母形成を行う手術手技」が、陥入爪・巻き爪の理想的な治療法となります。爪母の確実な切除方法は、後述します。

陥入爪・巻き爪の手術方法および保険点数・手術費用

巻き爪関連で算定される保険点数と自己負担費用

 巻き爪関連で算定されることのある保険点数には以下のものが挙げられます。
※括弧内は3割負担の場合の料金です。

① 爪甲除去(麻酔を要しないもの)60点(200円)
② 皮膚切開術(長径10cm未満)640点(1980円)
③ 爪甲除去術・770点(2310円)
④ ひょう疽手術(軟部のもの)・1190点(3570円)
⑤ ひょう疽手術(骨関節のもの)・1280点(3840円)
⑥ 陥入爪手術(簡単なもの)・1400点(4200円)
⑦ 陥入爪手術(爪床爪母形成を伴う複雑なもの)・2490点(7470円)


 麻酔を伴わない単なる爪切りは爪甲除去60点となりますが、爪周囲の処置で排膿が行われれば、皮膚切開術(長径10cm未満)で算定されます。麻酔を必要とする爪の部分抜爪である爪甲楔状切除は、爪甲除去術770点で算定されることが多くなります。

 一般的に麻酔下に、爪母のある根元まで爪をしっかり除去した場合には「陥入爪手術(簡単)1400点」となり、鬼塚法・児島Ⅱ法などの「爪郭部・爪床および爪母の形成」までしっかり行う手術に対して陥入爪手術(爪床爪母形成をともなう複雑なもの)が算定されます。

部分抜爪(楔状切除)法

 足趾神経ブロック下に楔状(くさび状の斜めカット)の爪甲切除を「痛みや炎症のある巻き爪部分」におこない、一時的に側爪郭(爪脇の皮膚)に対する爪甲縁の当たりを緩和する方法です。

 本法の良い適応となるのは、爪の巻きが強くないが「側爪郭部」への当たりが強い場合で、爪郭部皮膚への爪縁の刺激が緩和されることで、肉芽や炎症の消退が期待できます。炎症や腫れが収まった状態で、斜めに緩やかに新しい爪が生えてくることで、再度炎症が起きにくくなります。


 問題として、必要充分な爪甲の切除を行わないと炎症が沈静化し得ない場合もあることです。さらに、炎症が治まったあとに「爪根元側の爪縁」に切り残した「角や爪棘」が残っていると、爪が伸びてきたときに再び爪脇の皮膚を刺激してしまい、炎症がぶり返してしまう場合もあります。

 また、巻きが強い場合に本法を適応すると、「爪が巻く力」と「爪縁部が爪を支える力」のバランスが崩れてしまい、余計に切り込んだ奥側の爪縁が巻き込んでしまい、さらに症状を悪化させてしまうこともあります。

 巻き爪の状態を正確に把握し適応をよく選んで切除を行う事、およびスムースな楔状のカットが本法のコツと云えましょう。

陥入爪手術(簡単なもの)

 足趾神経ブロック下に、爪縁部を幅4~5mm程度で「爪根部」までまっすぐに外科用剪刀で爪を切り、爪甲を根元まである一定幅で抜いてしまうことを云います。爪甲と爪床は形成剪刀(先鈍)の片側をエレバのように使うときれいに爪を剥がすことができます。


 利点は、爪が一次的に狭くなることで確実に爪郭部の炎症が治まることですが、問題は爪が伸びてくる2~3カ月後に元の大きさの爪が生えてくるので、爪が喰い込まないための対策が必要となることです。よく行われる方法としては、「アクリル人工爪・コットン固着充填法」などが挙げられます。

陥入爪根治術(爪床爪母の形成を伴う複雑なもの)

 陥入爪根治手術は世界的に様々な手術方法が報告・提唱されてきましたが、本邦では喰い込んだ爪部分と爪郭部を楔状に切除し、かつ爪母除去を行う鬼塚法が一般的に行われています。

 鬼塚法は諸家により「リファイン」されて現在も行われている巻き爪手術法ですが、児島により「側骨間靱帯の温存」が提唱されたり、爪縁部の爪床を皮弁状に挙上し「爪縁部の軟部組織とZ形成を行う方法」なども報告されています。

鬼塚法

 陥入した爪甲と側爪郭の一部も切除を行い、爪母切除と爪郭部形成を行う手術法で、我が国で行われてきた代表的な手術方法と云えるでしょう。縫合の際に大切なことは、側爪郭部の皮膚が確実に爪甲より下になるようにすることで、残存した爪甲縁が再び巻くことを予防します。

 注意点としては、爪母の切除を確実にする手技を身につけること、および炎症の強い症例では術後に患部の腫張が強く出ることがあり、爪縁部の縫合は創を軽く合わさる程度にすることです。


※当方出身の日本医科大学形成外科では本法が標準療法でしたが、骨膜までの切除はしていませんでした。

児島Ⅱ法

 鬼塚法の変法とも云え、爪甲がぶ厚いときなどに切除した爪甲縁の爪床を一部残し、側爪郭との縫合に利用する方法である。鬼塚法との違いは、末梢部の爪床を切除する際に、骨膜まで切開をいれずに側骨間靱帯(Lateral interosseous ligament)を温存することになります。側骨間靱帯が損傷されることで、術後の爪甲内弯変形が起こる可能性が諸家により示唆され、この靱帯の重要性が報告されています。足趾末端の動脈弓・知覚神経もこの靱帯周囲に存在しているとされます。

 爪母近くの部では切開を骨膜まで入れて爪母を末節骨上より剥離切除します。児島Ⅰ法の適応となる症例より陥入が高度で側爪溝の深いものに適応となります。

児島Ⅰ法

 爪甲の陥入が軽度で側爪溝の浅いものに適応となります(二宮ら2012)。陥入部爪甲の部分切除と伴に、後爪郭に斜切開をおき、爪母の切除を行います。喰い込んだ爪甲を幅3-5mm程度切除し、直下の爪床部分は切離を行わず温存します。

 肉芽腫が高度なもの、もしくは爪縁の巻きが強いものでは児島Ⅱ法が適応となります。


※フェノール法は児島Ⅰ法の外科的爪母除去を化学的腐蝕法に変法した方法ともいえ、すべての症例に適応とするには無理があるでしょう。

爪床再形成法

 爪床を傷つけない方に丁寧に剥離を行い、全抜爪を行った後に巻いてしまった爪床を末端部から「コの字状」に皮膚弁として挙上し、末節骨の平坦化をリュエルなどでおこなった後に再度、爪床を平らになるように足趾背側に縫合を行います。

 爪が再度生えたときには、平らになった爪床にそって生えるので正常な形態の爪が生えることを期待する方法論となります。陥入爪の巻きが片側の場合には、片側のみ断面を立体的にZ形成する方法も報告されています。


 
 巻き爪手術について調べると必ず出てくる「フェノール法」。どのような手術であるか一般に方には分かりにくく、賛否両論あるのが実情です。そこで著者が文献等を一通り調べ以下にまとめてみました。

巻き爪手術・フェノール法のデメリットと後遺症は?

 フェノール法は、世界的には1945年にBollにより報告されたのが初めとされており、国内に於いては1986年上竹により報告されています。

 手術により爪甲の切除範囲が狭くても良好な結果が得られそうで、かつ爪全体の変形が少ない症例が適応であり、言い換えると「児島Ⅰ法が適応」となるような爪床を温存し爪母の除去のみで「巻き爪の再発」が起こらないような症例のみを適応とすべきと考えられます。

フェノール法のやり方は?

 フェノール法は、液状フェノールを浸した綿棒で爪母を化学的に腐蝕させる「盲目的爪母破壊法」のひとつとされます。術者によっては痛みが少なく、再発も少ないとされることがあるものの、「爪母の過剰破壊により爪甲狭小化や腐蝕不良による爪棘再発」などの報告もあり、一部の医師(主に皮膚科医)により利点が過剰に宣伝されている方法論となります。

 同様の爪母焼却法としては「液体窒素・硝酸銀・電気凝固法・レーザー焼却」などの報告も見られます。

フェノール法の欠点は?

 フェノール法の欠点としては、爪母の化学的焼却が直視下の操作ではないために、腐蝕による破壊深度が曖昧になりやすく、深ければ潰瘍形成を引き起こし、浅ければ部分的な爪甲再生(爪棘再発)が起こることです。術後の感染率が高いこと、治癒までに時間が掛かる例があることも報告されています(西村2004)。

 爪甲の爪郭部への陥入が深い症例では、適宜従来法である鬼塚法もしくは児島Ⅱ法などの側爪郭の形成を行うことも考慮する必要があります。つまり、フェノール法を行う医師は「きちんと側爪郭形成」も行う従来法にも精通したもののみが施術を担当すべきであると云えるでしょう。

フェノール法のデメリット

 「フェノール法」とネット検索して表示される医院を調べると、①皮膚科医7件、②形成外科医4件、③整形外科医2件、④耳鼻科、外科医それぞれ1件となっていました(R6.1月当院調べ・上位20位まで)。

 すなわち、技術がなくとも短時間で出来るフェノール法は従来手術がメインでない皮膚科医によって好んで多く行われていることが分かります。一般皮膚科開業医が日常診療のなかで積極的におこなうことが出来る方法であると推奨している論文(岡2008)さえもあります。

フェノール法は形成外科学会のホームページには正式に記載すらない方法となりますが、一方では皮膚科学会のホームページにも爪の変形が酷くなる等の後遺症があるとも述べられています。
※形成外科学会のホームページ;https://jsprs.or.jp/member/disease/other/kannyuso.html
※皮膚科学会のホームページ;https://www.dermatol.or.jp/qa/qa38/q07.html

 元来、フェノール法の適応となるのは児島Ⅰ法が適応となる爪甲縁の巻き込みの少なく「爪の切除範囲が狭くてもよい術後結果」が残せる症例に限るべきです。重度の巻きがあるものは、従来法である鬼塚法・児島Ⅱ法で手術をおこなう必要も生じます。手術を受けるにあたっては、少なくともフェノール法しか記載のない医院、フェノール法のみしかできない医師は避けた方が安全でしょう。


 ※クリニックでフェノール法を勧められた際には、その医院で通常の巻き爪手術(鬼塚法・児島Ⅱ法)ができるかどうかを必ず確認しましょう。フェノール法しかお勧めされない場合には、担当医師が充分な外科的な技術・素養を持っていない可能性が高くなります。

フェノール法・失敗例・後遺症の報告は?

 以下にフェノール法後遺症の報告例をまとめておきます。
母趾陥入爪に対してフェノール法を施行、広範囲皮膚潰瘍を生じた例(大垣2020)
フェノール法不成功例の統計的解析;不成功例18/159例〔11.3%〕(米澤2009)
 ※他家の報告で合併症(再発)率1~7%程度となっている。患部の炎症・男性であること、虚血等がリスク
フェノール法後に足趾壊死が進行し足趾切断例の報告〔糖尿病例〕(佐藤2000)
手術室内においてフェノールを扱った看護師が誤って化学熱傷を受傷(佐藤2000)
陥入爪に対しフェノール法施行後趾壊死の報告(村井2022)
小児へのフェノール法による爪甲が半脱落例(福井2010)
爪甲の両側に対するフェノール法にて爪幅が予想外に狭くなる危険(福井2022)

※上記は医学中央雑誌検索結果より引用

フェノールによる爪甲の過剰狭小化、全爪甲脱落例の報告もあり、報告されていない不成功例も数多くあるものと考えられます。

フェノール法は失敗しやすい?

爪母を完全に取り除く外科的な腕を持たない医師が行う手術?

 従来の鬼塚法よりフェノール法の再発が少なかったという論文報告は、「自身の手術が下手?」と云っているようなものです。従来法の陥入爪根治術は術者の経験が浅いと術後に再発しやすくフェノール法を用いるべき?との報告がありますが、経験の浅い術者は本来手術をすべきではありません

⇒鬼塚法であっても児島法であっても、きちんと爪母を切除する技術があれば再発しません!

◆手技が簡単で短時間で終われ、皮膚科医も簡単に出来る手術として紹介される

 簡単にできる=正式な陥入爪根治手術をできない腕の医師が行う術式であり、従来法との統計的な有意差の報告もない皮膚科医による文献報告が多いのが実情です。なお元来、皮膚へのフェノール原液塗布は適応外使用(禁忌)であるので、患者への充分なインフォームドコンセントを得た上で行うべきとされます。 

※液体フェノールの添付文書;https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00064179.pdf

実は、うまくいっても巻き爪の再発率が多いフェノール法!?

 当院でフェノール法を推奨しない理由は他にもあります。実は、当方が以前地方の派遣病院に勤務中に、現在の児島Ⅰ法に準じた手術(足趾神経ブロック下の余剰爪甲除去+爪母完全切除)を10数例行ったことがあります。いわゆる「フェノール法」の薬液をつかう処置を外科的な切除に置き換えた手術となります。

 

※フェノール法による化学的爪母破壊が完全に行われたとしても、一定数の「巻き爪の再発」は避けられないはずであるが、誰も指摘をしていないのが問題

 もちろん、切除した爪甲部の再発は皆無なのですが「爪を部分除去して爪母を処置するのみ」では、3割以上の方が残った爪甲縁が巻き込んでしまったのです。すなわち、児島Ⅰ法に準じた薬液による爪母腐蝕法であるフェノール法でも同率の巻き爪の再発があるはずですが、このような不都合な事実はなかなか学会報告されていないのです。本来は、巻き爪の状態に応じて「児島Ⅰ法・児島Ⅱ法」を使い分ける必要があるように、フェノール法も良いことばかりではないはずなのです。


※それ以降当方は、爪縁部の陥入や巻きの深さに応じて、「鬼塚法・児島Ⅱ法」に準じた手術を標準としております。単に「爪縁の抜爪のみ+化学的な爪母腐蝕法」で、側爪郭部の形成を伴わないフェノール法は一定数の再発が避けられないからです。

 外科的に爪母をきちんと再発しないように切除するには「ちょっとした手技的なコツ」があり、普通の形成外科医であれば再発はありえないことです。ネットをみると従来の巻き爪の外科的治療は再発率が高く、フェノール法の方が優れているとするものもありますが、「みずから外科的な技術がありません」と云っているようなものです。

爪母を外科的に再発なく完全に取り除くコツは?

 以下、当方が大学病院時代に行っていた爪母切除のコツについて記載します。形成外科医師にとっては当たり前のこととなりますが、意外と成書にきちんと記載してありません。若手の形成外科医師等への参考となりましたら幸いです。(※以下の爪母の外科的切除は一般の方には難解ですのでご了承ください)

 爪母は、中枢に近づくにつれて扇状に広がっているため、「爪根部の斜切開をしっかり外側根元方向に取ること」が、爪母を完全に切除する基本となります。以下、当方が大学病院時代におこなっていた方法・コツをご紹介いたします。

余剰爪甲の抜爪手技

① 足趾神経ブロック下に、ガーゼor包帯法などで「足趾を末端から血液を中枢に戻すよう圧迫・脱血」した状態で、ネラトンカテーテル等で足趾根元を駆血し「ペアン等で固定する」と完全な無血野が得られます。(※足趾神経ブロックは必須手技となります)完全な無血野を作ることで爪母への処置も格段に楽になります。
② 先ず、楔状切除の切開ラインは大まかに起点となるポイントのみをマークしておきます。最初にどの程度の幅の爪甲を取るかを「爪の巻き具合・周囲組織の腫れ」等を考慮して爪甲切除幅のラインを決めていきます。次に形成剪刀曲がり(先鈍)の片側の刃を使って、爪のカーブに合わせて爪甲下面を爪母に向かって優しく剥離をしていきます。その後、後爪郭下面の爪甲表面部分も爪の根元まで剥離を行います。
③ 抜去予定の爪甲縁部分が「爪床側と後爪郭下面」から剥離できたあとに、予定した爪甲切除ラインを形成剪刀直刃(先鈍)などで真っ直ぐに爪根元に向けて切っていきます。
④ この時点で、切除予定の爪甲はかなり浮き上がっているはずなのですが、爪根元の外側縁が周囲組織と付着して残ることがあります。爪甲外側縁を根元に向けて形成剪刀にて優しくそぎ落としていくと、無理なく抜去予定の爪が除去できます。爪はペアン等にて把持して、ゆっくり引き抜きますが無理に抜くと爪端の薄い角などが残るリスクがあり、完全に爪を除去出来るまで付着した組織を剪刀で愛護的にそぎ落とします


⑤ 切除予定の爪甲を完全な状態できれいに抜去することが、爪母を取り残さないコツとも云えます。爪甲を部分抜爪したあとは、まず抜去した爪を元の爪縁の上に置いてみます。すると、自然に後爪郭のどのあたりまで爪母があるのかが、はっきりと分かるようになります。
爪母は外側奥が一番取り残しやすい場所なので、抜去した爪の外側奥のポイントに皮膚にマーキングをし、後爪郭の皮膚切開線の後端とします。後爪郭の皮膚切開は「切除する爪母の内側前縁から外側後縁」まで確実に展開可能なラインとします。
⑦ スキンフックなどで切開線の内外側を軽く牽引すると、爪母を完全に直視下に置くことができます。次に、切除する爪母をはっきりさせるためにピオクタニンペンなどで爪母表面にマーキング(染色)をしておきます。※爪母がどの部分まであるか切除前にはっきりさせておくことで、取り残し予防となる。

爪母の解剖について

 爪床と末節骨表面は、粗な線維結合組織で固定されており、爪が強く巻き込むと爪床は末節骨から浮いてしまうこともあります。一方で、爪母末節骨基部表面の骨膜と強固に結合しており、ほぼ骨の直上に爪母があると云っても良いでしょう。この解剖学的な位置関係はかなり解剖の本を詳しくみないと記載がなく、文献でも詳しく述べているものが見当たりません。※ネットの図版はほぼ間違っています。


 よくある間違いは、爪母を鈍的にハサミで切除しようとしたり、不確実な切除を補うために鋭匙でこすったりする手技です。形成外科にいた当方さえ、一部の上級医はこのような処置をしていたのが残念です。

爪母のメスによる鋭的切除方法

 次に当方が大学病院時代に行い、後輩医師にも指導してきたメスによる鋭的爪母切除法を述べます。
① ガーゼ圧迫法等による「足趾から脱血操作+ネラトンによる駆血」により、完全な無血野であることを再確認します。
② 形成外科で頻用する15番メスにて残存した爪甲の外側、つまり「切除する爪母の内側」を末節骨表面に当てるように切開を入れていきます(図A)。爪母の一番根元は、末節骨がDIP関節に向けてせり上がってきますので、爪母の根元に切開を入れていくと「メス先が骨に当たる感覚」があるはずです。爪母の末梢側は後爪郭皮膚縁の下ぎりぎりまで切開をいれましょう。
③ 次に、取り残しやすい爪母外側に切開を行います。スキンフックで「切開した後爪郭皮膚」を展開すると、爪母の根元~外側端が直視下にみえるはずです。今一度、形成無鉤鑷子などの片側先端などで「爪母が何処までであるのか」を確認すると良いでしょう。
④ 爪母外側に切り込むコツとしては、いきなり末節骨表面に向けてメスを入れるのではなく、一度爪母外側の盲端を外側に一度0.5mm程度切り込むことです(図B、C)。爪母は後爪郭下の爪母のあったスペースのギリギリ下まで存在するので、確実な切除のための「セーフティマージン」を取るのです。
⑤ 爪母外側の盲端を少し切り込んだあとは、弯曲した末節骨表面の外側に向けて「骨表面に垂直」にメス先の向きを変えて確実に爪母外側端を「末節骨表面」から取り除くようにします(図C)。


⑥ 爪母根元の端は、やはり盲端となっており「メス先でさぐる」とすぐ直下奥に末節骨があることが認識できると思います。爪母の根元を取るときにも下床というより「奥の爪母のあった盲端」にメス先を向けて、末節骨表面に刃先をあてるように「骨」のうえまで切開を入れていきます(図D)。
⑦ 最後に爪母の遠位端(末梢側)は、後爪郭内に収まっているため直下の「爪床~爪母移行部」を切開していきます。切開は後爪郭遠位端レベルで爪母に横方向に切開を入れて、爪根元~末節骨に向けて斜めに近位側へ切り込んでいきます(図E)。おおよそ30~45度程度の角度で末節骨表面に向けて切り込むと取り残すことはないでしょう。
⑧ 以上で、「爪母の内側・外側・根元・遠位」に切開が入った状態となりましたので、末節骨表面から爪母を剥がしていきます。できれば、鋭的に爪母を切除していきたいところですので、「メスもしくは、先鋭の形成外科剪刀」などで骨から直接爪母を切除するイメージで、爪母を末梢側から末節骨表面上で剥がすように除去していきます(図F)。
⑨ 完全に爪母が切除されると切除した周囲は、残存する爪甲~爪母の遠位側がクリアカットに見え、かつ下床に末節骨表面がきれいに確認されるはずです。

 以上のような切除方法をおこなえば、爪が再発する「爪棘」などが再発することはありえませんし、鋭匙でこするなどという操作は不要となります。最後にネラトンによる駆血を一瞬ゆるめて、また縛りなおすと足趾に血液がすこし流れ込んできます。あわてずにガーゼ等で出血をぬぐいながら、大きな出血点のみ電気メスでの止血を行っておきます。
 ※盲目的に電気メスで組織を焼いてしまうと術後の創治癒遅延を引き起こしますので、最低限の止血操作に留めた方がよいでしょう。

実は爪母の切除法の詳細な手技は成書にない!?

 じつは以上のような細かな操作は、手術書などにも記載してありません。研修医のときに付いた上級医の指導が優れている場合、もしくは自身で勉強しどのようにしたら切除した爪甲部分からの「爪棘の再発がないか」を工夫・追求したものでは、少なくとも研修医2年目にはいるころには「一般的な形成外科医師」であれば上級医の指導がなくとも、「取り残した爪が再発することは有り得ない」ことなのです。←ここは声を大にしてい云いたい!


 爪母を適当にいいかげんに切除した結果、どのようにしたら再発しにくいかを工夫した方法として、
「鋭匙でこする、電気メスで爪母部分をやく、レーザー焼却、化学薬品で腐蝕する」などの方法論がでてきたものと思われます。

 ※上記の基本手技を無視して適当な範囲を切除して、鋭匙で擦って誤魔化すなどは厳に慎まなければならないことです。きちんとした外科的な技術をもった医師では、フェノール法よりも従来の外科的爪母切除の方が「確実性が勝る」との論文記載さえもあります!

 さらに一言加えると、クリアカットにメスで切除した創の方が「理論的にも創治癒が早く」、かつ残存させるべく爪甲の「爪母部分」にも負担を掛けることが皆無なことは自明の理です。薬液の当て方による術後創傷治癒に不確実性のあるフェノール法はあえて選択したくない方法と考えます。

※基本的な外科的な技術およびきちんとした皮膚外科の上級医に指導を受けたことのない皮膚科医は巻き爪の手術に手を出すべきではありません。

 巻き爪手術は日帰り?入院期間は?痛い、痛みいつまで

 術後は、1~2日程度痛みが残るので抗生剤+鎮痛剤の内服をおこないます。抜糸は約2週間で行い、入浴に関しては術後3、4日目からシャワー浴を許可とします。痛みは2,3日後から軽くなってくることが多いですが、剥がした爪床表面が上皮化して乾くまで10日~2週間程度を要し、足趾での縫合した創部がきっちり癒合をして丈夫になるには2週間は必要でしょう。


 巻き爪手術は、通常は日帰り手術で行われることが多く、歩いて帰ることが可能であり入院は必要ありません。但し、手術前から患部の腫れが酷い場合や両足の親指を同時に手術する場合などは入院となる場合もあります。術後の痛みや出血が心配なときには担当医と相談してみましょう。入院期間は、痛みや腫れが引いて完全に出血が止まるまでの2~3日間程度が一般的です。

 手術後の痛みと後遺症・手術失敗例のケース

 爪母の形成を伴わない「単なる抜爪(陥入爪手術(簡単なもの))」では術後の炎症が再発する確率が6~8割と高く、適応を慎重にえらぶ必要があります。一方で陥入爪根治手術(爪床爪母の形成を伴う複雑なもの)再発率は数%~20%程度との文献的な報告があります(1989西川ら)。
 2001年成田は、自験例で2年以上経過を追えたもののうち、再発は7足趾のうち2足趾に再発(29%)がみられたとし、手術療法の一番の問題は再発であり現段階では「巻き爪素因・体質」としか説明できないとしています。


 合併症としては、部分抜爪のみの場合に多く、とくに弯曲爪では悪化する傾向が強かったとされます。陥入爪根治手術を行った場合でも、爪棘の発生、異所性爪、表皮のう腫形成、巻き爪の再発が1割程度に生じたとの報告があります。術後の創遅延を予防するには、「肉芽の完全な切除、充分な止血操作、術後の安静」が重要となります。炎症があまりに高度の場合には、一度部分抜爪を行い炎症が落ち着いた時期に再度、陥入爪根治手術をおこなうこともあります。

 さまざまな手術後の後遺症が報告されていますが、一番の問題は切除した爪甲は「二度と元に戻らない」ということでありましょう。爪甲を取り過ぎてしまうと残った狭小化した爪は体重を支えることができなくなり、「周囲に皮膚が盛りあがり埋もれてしまう沈下爪」となったり、逆に幅が狭くなった爪が浮き上がり「体重を支える足趾」の機能にとって全く役に立たなくなってしまうこともあります。

 巻き爪手術の保険適用・手術費用と生命保険の適用は?

 巻き爪の手術は、健康保険適用となります。通常のクリニック・病院で自費となることはないのでご安心ください。一方で、生命保険の適用については、入っている保険の契約や生命保険会社によって保険適用となる場合もあるようですが、巻き爪手術(陥入爪手術)や皮膚腫瘍摘出手術などの簡易なものは「元々自己負担も1万前後」のことがおおく、保険の適応外になっているケースが多いようです。保険契約時にどのくらいの手術まで保険でカバーされるのか確認が必要でしょう。

 陥入爪・巻き爪手術は何科/皮膚科・形成外科どっち?

 巻き爪に専門医はありません。盲腸(虫垂炎)が外科疾患であるように、巻き爪も元来は「皮膚外科疾患」であり、外科的な素養の少ない皮膚科での手術は避けた方が無難です。爪棘などの合併症、術後の過度な爪変形、巻き爪の再発をさけるには、足趾~爪周囲の解剖学的構造・側骨間靱帯の位置・足趾神経の走行や血管走行に対する解剖的な関係を熟知した「形成外科もしくは整形外科」が行うべきと考えられます。


 とくに皮膚科医の開設したクリニックでは、皮膚科単独の診療では「クリニックとしての売り上げ」を確保し経営していくことは困難になることが多く、多くの皮膚科医院が「レーザーなどの美容診療」を行うか、充分な皮膚外科(形成外科)的な修練を積んでいないのに、皮膚外科疾患に手をだして収益を挙げようとしている現状もあります。

 何科が手術がよいのか? まず、通常法での巻き爪手術もきちんとを行っているのか?確認を!

 巻き爪は手術と云われて「巻き爪矯正」で治るケースも

 当院を受診される患者さんのなかには、他院にかかり「あとは手術しかない」と云われ、治療を投げられてしまいお困りになって来院される患者さんも少なくありません。本当に保存療法の適応がなく、手術を行った方がよいのであれば構わないのですが、一般の皮膚科医師は決して「陥入爪手術、もしくは巻き爪矯正法」に精通しているとは云いがたいのが現状です。
※外科医でなく、内科医が虫垂炎手術の可否を語るのと同じ・・・です。

 従来は、2000年代初頭には巻き爪矯正と云える方法として町田らが報告した超弾性ワイヤー法(マチワイヤ)しか存在せず、欠点として矯正に長期間を要し、かつ根治性の低い治療と考えられていたため、「手術療法が推奨」されることが多かったと云えましょう。

 現在は、巻き爪矯正法が日進月歩で進歩しており、矯正に長期間を有することはなくなってきました。巻き爪矯正などの保存療法で十分対処可能な巻き爪による変形は、巻き爪矯正を選択すべきであり、爪甲の恒久的な狭小化をまねく手術療法は安易に選択すべきではありません。巻き爪の根治的手術療法や矯正療法に詳しくない医師は、まず矯正に精通した医師に紹介をおこなうべきですが、実情としては「自分のところではできないと治療を拒否されてしまうケース」が少なくありません。


 当院で採用している「そがわ式巻き爪矯正」は、即効性がたかく非常に優れた巻き爪矯正法であると自負しておりますが、もしご自宅の近くにそがわ式に対応した医院がない場合には、「マチワイヤ+VHO式巻き爪矯正」を組み合わせて改善したとの報告(福井2010)もあり、複数の矯正ワイヤー法に対応した施設を選ぶと良いでしょう。 

 巻き爪矯正のデメリットは、医療者側からみると陥入爪根治手術(2490点)として短時間に行われコストが算定出来るフェノール法より手間と時間が掛かり、かつ軽度~中等度の巻き爪は1回の矯正で治療が完結し治ってしまうため収益が少ないこととなります。

 とくにフェノール法の文献を、散見するとほとんどが当院で行っている「そがわ式巻き爪矯正」およびコットン充填法にて治癒が可能なものばかりであり、従来は手術を行わなくても治ってしまう症例ばかりとも思えます。

巻き爪の手術適応・手術をした方がいい場合は?

 巻き爪治療の最終手段は、「手術療法」であることは現在もかわりませんが、巻き爪矯正を中心とした保存治療の発達によって、近年では「巻き爪の手術治療の絶対的な適応」がかなり少なくなりつつあります。では、どのようなケースが巻き爪手術の適応となるのでしょうか?以下に当院の考える巻き爪手術の適応となるケースを挙げてみます。

当院の考える手術の適応

・肉芽形成が高度に慢性化しており、爪の痛みが激しい・非常に経過が長引いている(数ヶ月に渡る)などの場合には、保存療法が向きません。手術的に一次的な適切な抜爪をおこない、炎症を一度収めることが治療に効果的です。
・巻き爪矯正で何度も「爪の巻き」が再発してしまい、手術的に確実に治したい方では手術をお勧めする場合があります。とくに爪端のみステープル型に巻いていて、巻いた爪端部分のみ処置をすれば改善するケースでは手術が適応です。
過去に手術を行っていて、爪端に「爪棘」がでてしまっているもの(再発例)では、爪棘を生えなくするには再度手術をするしかありません。※手術の腕のよい先生を選びましょう。
矯正療法で時間を掛けるのではなく、なるべく確実に短時間に巻き爪の症状を治して欲しい方は手術が向きます。


⇒但し、術者の腕には差があることがあり確実に爪母の外科的な切除をできる形成外科医を選びましょう。

 一方で術式や適応を適切に選ばないと、手術療法では残存した爪がさらに巻いてしまう・残った爪甲の幅が小さくなりすぎて爪が浮き上がる等の合併症を起こすこともあります。爪が「Cの字型に強く巻く、つの字型に片側が強く巻く」などのケースではとくに再発や爪幅の狭小化の恐れがあり、まずは巻き爪矯正を検討した方がよいと思われます。

手術の適応でないものは?

 以下に当院が手術適応でないと考えるケースを列挙してみます。
爪が巻いているだけで、肉芽のないものは「如何に強く巻いていても」全て矯正療法が可能です。
・巻きが強くなく、肉芽形成があるものはコットン固着充填法やガター法などで治る可能性があります。
・中程度の肉芽腫+爪の巻きがあるものでも「そがわ式巻き爪矯正+コットン固着充填法」での対応が可能です。
 ※肉芽のあるものは定期的通院が必要となります。
・切り込んで短く痛みのある巻き爪、切り残した爪棘のある巻き爪も、「そがわ式巻き爪矯正」で治療が可能です。


⇒巻き爪はある一定数(3割程度)の方で、巻きが再発してしまうことがありますが、当院の巻き爪矯正は、本矯正+予防的処置の組み合わせで年2~3回程度の矯正で良好な状態を保つことができます。

 

★ポイント!;全ての医師が手術に精通していないように、全ての皮膚科医師・形成外科医が「保存療法である巻き爪矯正法」に詳しい訳ではないのです。

まとめ・体験談はあるの?

 陥入爪根治手術は、長年のあいだ巻き爪の痛みに苦しんできた患者さんにとって一期的に症状の改善をはかる方法となりますが、その手術的な患部の侵襲を考えると、軽症例や矯正療法にて改善出来る場合には、まず保存的治療を優先すべきです。また、手術をおこなった術者(医師)は再発の有無を責任もってフォローすべきで有り、少なくとも6カ月~2年の経過観察を行わないと、手術による再発がなかったとは云えないものと考えられます。


 巻き爪の治療は、如何に痛みが少なく、侵襲が軽い方法を選択するかが患者さんの満足に結びつきます。手術を必要とせずに「矯正などの保存療法」で治療可能なものと、手術を優先すべき症例を「的確に見分け判断する」ことが肝要となります。そのためには、如何に侵襲がすくなく、かつ再発の少ない様々な手術手技をマスターする必要もあり、一方で、巻き爪矯正などの保存治療にも習熟している必要があります。

 残念ながら実情は・・・巻き爪矯正が可能な症例でも、すこしでも治らないとすぐに手術です」と云われてしまうケースがあとを断ちません。当院に巻き爪でお困りで来院される患者さんはご紹介で来る方は一部の方のみであり、ご自身でお困りになってクリニックを探されて来院される場合が多い印象です。


 幸い当方は大学病院で20年以上皮膚外科(形成外科)を行っていた経験・体験から手術のメリット/デメリットも熟知しております。もちろん、矯正療法も上記に書いたように全て巻き爪の患者さんに適応となるとは思っておりませんが、多くの保存的に治る可能性のある巻き爪の患者さんが手術となってしまっているのが現状ではないかと感じております。

 

最後にひとこと
 最後に2002年福井らの論文の結語より巻き爪治療のコツを引用しておきます。巻き爪治療は如何に苦痛・疼痛がないように、「痛みを取り去る」かが患者の希望に応えるベストな考え方と云えます。
 巻き爪・陥入爪の治療のコツは、如何に手術をすることなく痛みを取りさるか?、そして手術を選択した場合には、如何に侵襲がすくなく痛みや爪の大きさ変化を少なくするか、以上の言葉に集約されると云えるでしょう。
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