もくじ
巻き爪治療・病院でのおすすめ保険適応治療・期間と費用
足の親指の爪の横が痛いときの対処は?
巻き爪になると足の親指の「爪の角」が皮膚に喰い込んでしまい、ちょっとキツい靴を履いたり、長く歩いていると「爪の横に痛み」が出てきて我慢出来なくなってしまいますね。痛みが強い場合には、「病院での巻き爪治療」を受けていただくことをお勧めいたします。
当院では、「巻き爪治療および巻き爪矯正療法」に力を入れており、痛い巻き爪で本当に困っている患者さんの治療をお引き受けしております。重度の巻き爪で「サロンや接骨院」で治療期間が掛かってしまって治らない、他院で手術をおすすめされたが「なんとか手術をしないで治したい」という方が東京都内からも多く訪れております。
巻き爪治療はワイヤー矯正がおすすめです
巻き爪治療は、以前は手術療法がメインとなっておりましたが、近年様々な「矯正器具」が登場し、「巻き爪治療の主流は矯正療法」へと移行してきました。一方で「巻き爪の矯正治療」には保険適用がなく自己負担が発生してしまうことが問題です。
さらに「巻き爪治療」における矯正ケアの問題点としては、
- 皮膚科の中でも「巻き爪治療」にきちんと対応する医院が少ない
- 病院を探しても「何科」にいけば良いか分からない
- ネットでは「巻き爪サロン(非医療機関)」の広告が多くでて病院を探しづらい
- サロン、接骨院に掛かっても料金が以外と高く、施術回数が掛かる(例;足趾一カ所で1~2万円、回数5,6回~)
- サロンでは医療行為は許可されておらず対応に限界がある
- 病院で採用する矯正法もまちまちで、どれが効果的な治療方法か分からない
- 病院へ掛かったが矯正の話すらなく、いきなり手術をおすすめされた
- そのため、巻き爪治療に対応している医院をきちんと調べてから受診する必要がある
など、当院にお掛かりになった患者さんから多くのお声をお伺いします。
じつは、軽度の巻き爪であれば「矯正療法」を行わなくても、「爪の角」の切り方のご指導やご自分で行うコットンパッキングによる爪端の挙上などで改善する方も大勢いらっしゃいます。巻き爪だから「いきなり痛い治療」をされてしまうのではないか?、手術と云われたらどうしよう、矯正が必要と云われてお金が掛かってしまったら・・・とご心配されている方もいますが、巻き爪治療でお悩みなら「まずは当院まで」ご相談ください。
巻き爪治療の保険適用と費用・治療期間はどのくらい?
巻き爪治療のメインとなる矯正療法なのですが、残念ながら保険適用はありません。どうしても「自費としてのケア料金」が生じてしまうために、適応のない方にこちらから無理にお勧めすることはありません。ただし、①当院一般皮膚科外来を受診し「矯正をご希望される患者さん」、②爪の巻きが酷く「矯正療法」が適応と考えられる患者さんには「巻き爪矯正」をおすすめさせていただいております。
当院で採用している巻き爪治療は、「そがわ式」という比較的新しい矯正法となります。ワイヤーの太さを調整することで非常に強い矯正効果が得られるために、①治療期間が短い(7割の方が1回の矯正で完了)、②巻き方が高度、もしくは非常に爪が厚い方でも2~3回程度の矯正回数となっております。さらに、③短く切り込んだ爪でも矯正可能であり、④肉芽形成した陥入爪にも装着可能な方法となっております。
「水曜午前の巻き爪矯正専門外来(事前予約制)」でのみの対応となっており、時間的制約があるものの「サロン・接骨院」と比較しても費用対効果にすぐれ・治療期間も短めとなっております。なお、巻き爪矯正における自費負担金は「医師が行った施術」であれば医療費控除の対象となる場合があります(令和4年12月20日国税局電話相談センターに確認済)。
なお、足の親指の横が痛いときには、巻き爪ではなく爪囲炎(ひょう疽)のことがありますので下記もご参考にされてください。
巻き爪治療・当院の治療法コンセプト
痛い巻き爪でも「なるべく爪を切らない、取らない、痛くしない!」をモットーに巻き爪治療・施術を行っております。通常の施術では麻酔の注射を使うこともなく、痛みもでることもありません。ただし、喰い込みが強い、爪棘が刺さっているなど痛みが強い場合には、御希望に応じて足趾神経局所麻酔ブロック下に痛みをきちんと取ってから、施術を行わせていただいております。(※水曜午前の巻き爪矯正外来に限定)
【巻き爪治療・矯正ワイヤー専門外来】
ー10年間で9000例以上の実績ー
※ご予約には必ず一般皮膚科外来を受診されるようにされてください。
※巻き爪矯正に対するケア料金となります。その他に保険診療代・処方箋料などが掛かります。
※上記は混合診療にあたらないことを関東厚生局に確認済。
※必要があり局所麻酔ブロック下に行った処置は保険適応となります。
- 他院で手術が必要と云われた方
- 他の皮膚科に通っていても治らない方
- サロンに通っていても改善しない方
- 重度の巻き爪で痛みが強い方
- 肉芽形成した陥入爪の矯正
など是非当院までご相談ください。
【その他の注意点】
※受付開始9時55分~となっております。(1日にお受けできる人数に制限有り)
※お一人ずつお時間の掛かる処置のため、時間に余裕を持って受診されてください。
※医師一人での対応となるため、1回の矯正につき1足趾までとなります。
※未成年の方は、ご両親いずれかと必ず同伴されてください。
当院で行っている「痛くない巻き爪治療」の手順を大公開!(基礎知識編)
巻き爪治療の基礎知識
まずは、爪の構造についてご説明致します。爪は皮膚の付属器の一つであり、角質と同じ「ケラチン」というタンパク質から出来ています。爪(爪甲)の根元の皮膚(後爪郭)の下には「爪母」という爪を作る組織があります。爪母は末節骨の根元のすぐ上にあり、作られた爪は「爪床」という特殊な皮膚の上を伸びてきます。
爪を横方向に切った断面をみると「適度な弯曲」があり、手指先でものを持ったり、足趾で地面を踏み込む力とのバランスを取っています。これが何らかの原因で爪が巻いてしまうと、痛みが出たり(爪郭炎)、刺激が長引いて炎症が強くなると「肉芽形成」を起こしてしまうのです。
一般的な皮膚科では巻き爪治療として何が行われているか?
巻き爪の治療としては、「足の親指の爪の横が痛い」ときの対処として、抗生剤内服や消毒・抗菌剤外用などが処方されることが多くなります。炎症がまだ軽度で、爪の巻きが酷くないときには患部をガーゼで覆って、圧迫を避けて大事にしていくと症状が収まってくる場合があります。また、様々な保存的治療が行われるときにも、内服・外用が同時に処方されます。
次に、実際に一般的に皮膚科で行われることの多い保存的な治療手技についてみていきましょう。
① コットンパッキング法(爪前縁下挿入法)
皮膚科に巻き爪で受診をすると良く行われる手技です。巻いて食い込んでしまっている爪端前縁の下に米粒大に丸めたコットンを挿入し少しずつ爪が持ち上がったら・・・という方法となります。メリットとしては手近にあるコットンにてご自宅でも簡単に出来る方法となり、うまく爪端が持ち上がると巻き爪の痛みが軽減する場合もあります。
一方で爪の巻きが強く、「巻いている爪端と皮膚」の隙間に無理にコットンを入れると強い痛みが出てしまうこともあります。また、隙間がまったくない場合にはコットンが入らないだけでなく痛い部分が悪化してしまうこともあるようです。治療期間としては、あまり漫然と長く行わない方がよく、コットンを押し込んでいると「爪が持ち上がらない」だけでなく、爪下の皮膚が陥没してしまったり、爪が剥がれてきてしまう「爪甲剥離」となってしまうことがデメリットとなります。
◆コットンパッキング法の関連論文
1,陥入爪に対するコットン・パッキングと形状記憶合金プレートによる矯正治療;町田 英一 1997 靴の医学
2,陥入爪の非観血的治療;中嶋昭 1977 皮膚科の臨床
② 液体窒素療法
巻き爪に伴う肉芽形成や陥入爪に一般的な皮膚科でよく行われる方法です。盛りあがった肉芽種を液体窒素凍結療法で凍らせて凍結壊死させることで、爪と肉芽の当たりが緩和することを期待した治療手技です。問題点としては、決して「巻いている爪」を根本的に治している訳ではないので、治療が痛いだけでなく「治らない」こともあるようです。治療回数としては、2,3回行ってみて経過が悪いときには、巻き爪矯正も併用するなど治療法を検討した方がよいでしょう。
文献上も軽度の肉芽に行うことがあるとされているのみで、有効性や治癒率などの検討はされていません。より大きな肉芽に対して硝酸銀や外科的除去が必要であり、佐藤(2019)は肉芽の根本的原因である「物理的刺激」のコントロールが重要と述べています。
◆液体窒素療法の関連論文
1,陥入爪の診断と治療戦略 上田 周ら 2006 Derma.
2,陥入爪に伴う爪囲肉芽の悪化要因について 佐藤隆亮 2019 皮膚病診療
③ テーピング法
主に、巻き爪の横の皮膚が痛くなり、周囲の皮膚が盛りあがってくる「陥入爪」に対する対症療法として使われることがあります。注意点は、巻いている爪(巻き爪)の本体を治している訳ではなく、盛りあがっている皮膚を下方向へ引き下ろすことで、爪端と皮膚との当たりが緩和すると良いな・・・という保存療法の一つとなります。
痛い巻き爪に対する効果は「限定的」と云わざるを得ませんが、指導が簡単で特殊な道具もいらないので、よく皮膚科で行われる手技のひとつなります。テーピング法の効果に関しては、別ページにまとめてありますので、ご参照ください。
④ ガター法
ガター法は、点滴のチューブなどに切れ目を入れて陥入爪などで肉芽に喰い込んだ爪縁を保護して、「肉芽」との当たりを緩和することを目的に行われます。新井らは2003年に陥入爪の保存療法のひとつとして「アクリル固定ガター法」を報告しています。ガター用チューブの固定は縫合糸やアクリル樹脂などで行いますが、意外と浸軟した爪への固定が難しいことが難点です。
デメリットは麻酔なしで狭い隙間にいれると「痛い」こと、浸軟した爪ではチューブが取れたと訴えて再診する患者さんも多くなります。ガター法チューブの留置のみでは「爪の挙上効果や肉芽の圧排効果も限定的」であることも欠点となります。当院では、爪縁まで覆う形のコットンパックを行うようにしてから本法を用いることがなくなりました。
◆ガター法の関連論文
1,Gutter treatment for ingrowing toenails. W A Wallace 1979 Br Med J.
2,陥入爪の簡単な保存的治療法 アクリル固定ガター法,人工爪,テーピングを中心に 新井 裕子ら 2003 臨床皮膚科
⑤ アクリル人工爪
深爪をして短くなってしまった巻き爪に対してスカルプチャネイル(人工爪)の手技を応用して、陥入爪の治療に応用することが、東先生により1993年報告されています。爪欠損部にレントゲンフィルムなどを台紙としておき、アクリル樹脂で欠損した爪を修復する方法です。
欠点としては「根本的に爪を持ち上げる手技ではないこと」に加え、浸軟した爪では脱落しやすいことが挙げられ(新井2016年)、患部の安静と激しい運動を禁止、定期的な再診が必須とされます。また、爪縁のアクリルにバリが残る、突出などがある場合には肉芽の消退がうまくいかない場合もあります。当院では「短い巻き爪でも矯正可能なそがわ式巻き爪矯正」を採用してから、アクリル人工爪を行うことはなくなりました。
◆アクリル人工爪法の関連論文
1,人工爪による各種爪変形の治療 東 禹彦 1996 皮膚
2,爪甲過度内方彎曲症(挟み爪,巻き爪)のアクリル人工爪による治療 東 禹彦2000 皮膚
一般的な皮膚科での対応・まとめ
上記の①~③が普通の皮膚科で一般的に行われる指導・治療法であり、少し巻き爪に頑張っている皮膚科では④⑤まで対応することが多いようです。これらの処置でうまく行かない場合には、「兎に角、爪が伸びるまで何も出来ないから伸ばす様に」という指導を受けたり、「巻き込んでいる爪を切られてしまう」などの処置が行われてしまうようです。
爪を切る場合に「麻酔をして」いただけると良い方ですが、皮膚科専門では「足趾神経ブロック」をきちんとできる先生が少なく、さらには「麻酔なしで切られてしまった」というお話もよくお聞きします。
さらに問題なのは、爪をうまくスムースに斜めに切れれば良いのですが、医院で切ったにも係わらず「爪の根元に棘」が残っているケースも散見されます。しまいには、「あとは手術をするしかない」と投げられてしまうケースもあるようです。一般の皮膚科医の先生方で手に負えそうもない場合には、なるべく早く巻き爪を専門としているクリニックを探して受診しましょう。
一方で、巻き爪を手術しないで治す保存的な治療(巻き爪矯正も含む)に力を入れている医院は、皮膚科・整形外科などの中でも少数派となります。ご自身でネット検索などを駆使して、少し遠くまで範囲を広げてよく調べて探してみましょう。
当院で行っている「痛くない巻き爪治療」の手順を大公開!(実際編)
次は、実際に「当院で何を行っているか?」について順にご説明致します。巻き爪治療・当院で行っているおすすめの治療法とは?
はじめに
巻き爪で受診される患者さんのほとんどは、サロンや他の矯正法を行っていても治らない患者さんです。また、一般的な皮膚科で「いきなり爪を切られてしまったり」、「肉芽腫に対して効果のない液体窒素療法」を何度も行われている方が多くなります。中には某巻き爪で有名な大学病院で「この爪では矯正はできない」と云われてお断りされてしまって、巻き爪治療の専門クリニックを探してきたという方もいらっしゃいます。
どの患者さんも実際に治療を始めるまで非常にご不安そうなお顔をされており、「如何に巻き爪を専門としている医院」が少なく受診されるまでにご苦労なさっているかを感じてしまいます。
治療を始める前には、患者さんの痛みの具合、今までの治療経過などのお話をお聞きしつつ、まずは「簡単な巻き爪の構造」についてお話をさせていただきます。そして、爪が痛くなる基本的な原理・どのように治していくかについて説明をさせて頂いております。
巻き爪で足趾の診察をする場合には、必ず両足を拝見させていただき、左右での巻き方の違いや場合によっては「痛みのない健側」の爪の状態をみさせていただいております。左右の違いや爪の硬さをみることによって、痛みのある側の爪にどのくらいの力を掛けて、どのように挙げていくかの参考となるのです。※手足の診察で左右差をみることは医療の基本です。
まずは触診・視診から
巻き爪・陥入爪の症状を治していくためには、「皮膚へ喰い込んでしまった巻き爪」だけでなく、爪縁部の皮膚(側爪郭)との位置関係も正常に戻していく必要があります。まずは、簡単な触診をしながら用手的に爪を軽く挙上し、同時に爪周囲の皮膚をそーっと引き下げて、「どのような問題」があるのかにつき診察を始めます。
もしも、軽く触っても痛みが強く出る場合には、「巻き爪の皮膚への喰い込みが高度である」か、もしくは「腫れてしまった爪縁の奥に爪棘が刺さっている」ことが多くなります。
触診で確認することは、
- 患者さん個人の爪の厚さ、硬さ
- 爪下の角化物の有無
- 爪端がどのくらい巻いているか?
- 爪縁皮膚にキズ、出血などがあるか?
- 爪の挙上のしやすさ(矯正の必要性があるか)
- 爪縁の皮膚の腫れ具合
- 肉芽形成の有無
- 足趾の変形の有無
- 靴などの外的な刺激の有無
などを総合的にみて治療方針を決めていきます。
この時点で、「軽く爪を挙上しても痛みが強くならない」もしくは「痛みが軽度」であれば、その次の様々な保存治療のステップへ進みます。「爪を触られるだけでも痛みが強い、痛くて爪を触ることすら出来ない場合」には、足趾神経ブロック注射(局所麻酔ブロック)を行った上での治療にも対応しております(月木午前の巻き爪外来限定)。
もしも、痛みが強く始めから麻酔をご希望の場合には問診票にご希望の旨を自己申告お願い申し上げます。痛みを我慢して治療を継続するよりも「きちんと痛みを取って」から患部を操作した方が返って治療が早くおわる場合も多くなります。
※当院担当医師は、「形成外科専門医」でもあり、手術も数多く経験しており「足趾神経ブロック」は得意としております。注射は1回で済み、足指の根元の背側から打ちます。2,3分程で注射を打った側の足趾は感覚が薄れ、無痛下での治療操作が可能となります。
実際に爪を持ち上げていく
では、実際にどのようにして爪を持ち上げているのか?をお話していきましょう。用手的な爪の持ちあげと側爪郭部(爪横の皮膚)の引き降ろしに続いて以下の操作を順に行います。爪だけ持ち上げようとしても「挙上効果が弱くなり」ますので、「爪を持ち上げる操作」と「爪縁皮膚を引き降ろす操作」はセットでなければいけません。
ゾンデ、ピンセットでの用手的な爪挙上
爪を持ち上げるの+同時に爪郭部の引き降ろしが必要
- 爪の前縁を手で持って持ち上げ気味にしながら、爪縁部皮膚をガーゼで包み引き降ろす
- 爪ゾンデで爪下のスペースを確認、持ちあげながら、爪縁皮膚を更に引き降ろす
- 爪下スペースが確保できたらピンセットを入れて爪を持ちあげ、爪縁と爪郭部の皮膚の間に「コヨリ状」にしたコットンを挿入し、ガーゼで「コットン+爪縁部皮膚」を包み引き降ろす
コツとしては、①の操作で爪の痛みの有無・爪の挙がりやすさ・厚さ・丈夫さを把握して、②の操作で爪下のわずかに見える部分を確保し、「爪を持ちあげながら、周囲皮膚を引き降ろす」ことによって、巻き込んでしまって爪に喰い込んでしまった「爪縁部皮膚を引きはがしていくイメージ」です。
以上の操作で爪下のスペースが確保でき、「ピンセットによる軽い爪の挙上」と「細くコヨリ」にしたコットンを爪脇ぎりぎりに挟むことで、さらに「一番爪に食い込んでいる爪縁皮膚」をしっかり引き下ろせるようになります。
巻いている爪と皮膚の関係は、「硬くなったスジ・関節」をほぐしていく操作と似ています。1度にぐっと引っ張ってしまうと痛みがでることがあるので、5~6秒じわじわと引き降ろし操作をしたら一度力を緩めて待つことが大切です。少し休んだあとに、再度同じ操作を繰り返すことで隙間を少しずつ広げることができるようになります。
軽い巻き爪ですと以上の操作で、爪端部分が露出することが「ほとんど」となります。爪の角が尖っている場合には爪先を正しく切って、コットンパッキングを行うことで治ってしまうでしょう。一方で力の掛け方にはコツがあり、ご自身ですぐに出来る方は少なく医院に受診した方には実際にご説明しながら、ご自宅での処置ができるようにご指導を行わせて頂いております。
爪アイロン法+アイロン変法
中程度以上の巻き爪がある場合には、矯正療法も視野において、さらなる爪の挙上(巻きの改善)を図っていきます。当院で行っている主な巻き爪挙上法としては「爪アイロン法」および「補助的な挙上手技」、「そがわ式巻き爪エレバ(リフター)」となります。「爪アイロン法」は新井ら(2003年)により報告され、加熱したペアンなどの鉗子にて爪を持ちあげるという方法です。変法としては炭酸ガスレーザーにて爪を焼いてしまって柔らかくして持ち上げる手技の報告もあります。
◆爪アイロン法の関連論文
1,巻き爪の根治術 成田 博実 2001 臨床皮膚科
2,陥入爪・巻き爪 炭酸ガスレーザーによる治療 桑名 隆一郎 2010 皮膚科の臨床
爪を持ち上げやすくする手技には、
- お湯につけて浸軟させる(水分量増)
- パーマ液などの薬液を塗る(薬剤でケラチン結合を緩める)
- 薄く削る、溝を掘る(物理的な強度減弱)◯
- 炭酸ガスレーザーで削る(加熱効果+熱による変性)
- 爪アイロン法(熱によりケラチン結合を緩める)◯
- 物理的に強度のあるものでの挙上(爪の巻きよりも強い力)◯
- 爪を効率的に持ち上げられる爪端の根元部位での挙上(爪挙上のトリガーポイント)◯
などがあります(◯は当院で施行)。
特に新井らの報告した「爪アイロン法」は、爪に多少の跡がつくという欠点があるものの、医院での限られた診察時間内での速効性が高い方法となり、当院でも採用させていただいております。具体的には、バーナートーチで加熱した鉗子(モスキートペアン)にて、温めた側が爪上に来るように爪をつかみ、少しずつ熱を加えて鉗子でつかんで爪を持ち上げる方法です。多少焦げ目が爪につくこともありますが、爪が熱により柔らかくなり爪の巻きを簡単に持ち上げることが可能となります。
補助療法として、硬さのある爪では「ラジオペンチによる簡易矯正」もよく行う手技です。厚さのある硬くなった爪では、モスキートペアンの把持力だけでは爪を動かすのが難しいことがあり、「爪アイロン法」前の予備矯正としてラジオペンチでしっかりと爪を把持して力を掛けることも有効な爪挙上法となります。爪に厚みのある方では電動ルータにて爪の厚さを削ったり、軽く溝を掘ることも行わせて頂いております。
そがわ式巻き爪リフターについて
爪を持ち上げていくと問題となるのが、割と爪が根元(奥)の方まで巻いてしまっている方の多いことです。その場合には、再度ピンセットでの持ち上げに加えて、見えている爪端のさらに奥の部分を「爪やすりや爪ゾンデ」ですくって爪端を持ち上がるようにしています。治療の工夫として最近、そがわ式巻き爪矯正を応用した「そがわ式巻き爪エレバ(リフター)」を用いております。
そがわ式の良い点は、一番爪があがりにくい爪端の奥部分に矯正ワイヤーがしっかりと掛かり「非常に効率的に爪が持ち上がること」となります。まさに、そがわ式で挙上できる爪端少し奥の部分が「巻き爪挙上のトリガーポイント」であると云えるでしょう。ただし、残念なことに巻き爪外来を受診していただかないと、この爪挙上に有効なポイントを今までは持ち上げることが出来ませんでした。
この解決方法として考えられた「そがわ式巻き爪エレバ」を爪アイロン法の補助として使うことで、
- 本格的矯正治療の前の予備矯正として有効
- 忙しくて矯正に来院出来ない方の応急処置として
- 再発予防のための爪挙上として
- お年の方ではリフター処置のみでも挙上効果がある
などのメリットがあります。
その他の補助療法は?
その他の巻き爪補助療法として「爪下角化物の除去」があります。爪が硬くなってしまったり、強く巻き込んでしまうと爪下に角化物が貯まってきてしまいます。これがあると爪の挙上がしにくくなるため、①簡易電動ルータでの角質削り、②凸刃ニッパーでの角質カット、③アルコール綿および爪ゾンデにて爪奥の清掃などを行っております。
以上の治療にて巻き爪がある程度治った場合には、「ご自身でのコットンパッキング法や爪挙上ケア」を行っていくのみでも症状が改善する方もいらっしゃいます。一方で当院の皮膚科診察時間内での対応で、奥の方に「爪の巻き」が残ってしまった場合には「巻き爪矯正(当院ではそがわ式)」をお勧めすることもあります。
巻き爪治療は、通常の診察時間内ではできる限りの対応しておりますが、巻き爪が重度の巻きであるケースなどでは「矯正ワイヤ-療法」が必要と判断され、巻き爪矯正外来(月木午前)にご来院頂けるようにお願いしております。
巻き爪治療;矯正ワイヤー
当院では巻き爪治療に長年力を入れており、マチワイヤ・VHO式巻き爪矯正、BSスパンゲ、ペディグラスなど国内で行われている主たる巻き爪矯正法を行ってきました。マチワイヤは爪が割れやすい、VHO式はワイヤーで引っ張るだけで爪が根本的に持ち上がりにくいという欠点があります。
BSスパンゲは爪が薄くて弱い方には良いのですが、分厚い爪で矯正力が必要なときに力不足な印象です。ペディグラスは比較的新しい方法であり、様々な矯正用装具があり良いのですが、矯正手技が特許で守られており、かつ余りに短い爪や浸軟した陥入爪には適当とならず、なかなか万能な巻き爪矯正法はありません。
現在おこなっている「そがわ式巻き爪矯正」を行い始めて10年経過しておりますが、一つの矯正手技でどのような巻き爪の状態にも対応出来る方法は他にはありません。各矯正法の比較については今後また記事を追加していく予定です。
巻き爪治療;手術療法
巻き爪は悪化を繰り返す場合や何度も繰り返す場合には、最終的に手術も選択枝となる疾患です。30年ほど前には手術療法しか選択枝がなかったのですが、近年さまざまな保存療法および矯正療法が出現してきたことにより手術の適応となるケースは限られてきております。
手術も万能ではなく、執刀する医師を慎重に選ばないと爪の変形を残したり、爪端にとげ状の爪が再発してしまうこともあります。とくに、フェノール法という簡易手術療法については爪の巻きが再発しやすいので注意が必要です。当院では、巻き爪の保存的治療に力を入れており、現在手術まで対応しておりません。必要な場合には、近隣の適切な形成外科施設をご紹介しております。
巻き爪治療の自費費用は、医療費控除となるか?
巻き爪矯正は、経済産業省の通達で「医師が治療を要しないと判断した場合の巻き爪の予防的ケアに関しては医療行為に該当しない」という前提のもとに「ネイルサロン・接骨院」での施術も行われている現状です。一方で、ワイヤー矯正の保険適応はなく、「予防的ケアとしての施術」に対して自費料金が掛かってしまいます。関東厚生局に問い合わせますと、やはり巻き爪矯正の保険適応はなく医院で行った場合にも「自費ケア」としての施術でよいとの回答を得ております。
一方でワイヤー矯正は当院でも8800~11000円ほどの自費ケア料金が掛かってしまい、これが医療費控除の対象になるかは患者さんにとって大きな問題です。
結論からいうと「医院での施術であり予防ではなく治している行為(≒治療)」であると考えられるものについては、医療費控除の対象となるそうです。(令和4年12月20日国税局電話相談室確認済み)経済産業省、厚生局と税務署の扱いが異なってしまうというダブルスタンダード(ダブスタ)問題を残すものの「医院で行った巻き爪矯正」は医療費控除の対象となる可能性があると覚えておきましょう。実際に医療費控除の対象となるかは申告時に管轄の税務署の方に「予防的な行為ではない医師による施術であった」と問い合わせて見ると良いと思います。
一方で、ネイルサロン、接骨院でおこなった巻き爪矯正はあくまで治療が必要のない予防的ケアしか許可されていないので医療費控除の対象とはなりえませんのでご注意ください。
巻き爪治療Q&A
巻き爪治療費・費用、治療期間はどのくらい掛かる?
最近ではサロンでの巻き爪矯正の費用もあがってきており、おおよそ1足趾につき1万~2万掛かってしまうことが多いようです。治療回数は明記していないこともあり、おおよそ5,6回の施術を行うようです。予約が簡単に出来たり、巻き爪対応のサロンも増えてきていますので利便性はよいのですが、自費料金は医療費控除の対象とはなりません。
一方で医院における巻き爪治療もしっかり対応している施設が少ないことも問題です。病院での治療には安心感があることと、ほとんどの治療行為には健康保険が使えることがメリットですが、巻き爪矯正には保険適応がなく自費ケア料金となってしまいます。但し、医師が行った「予防的でない施術費用に関しては医療費控除の対象」となります。
酷い巻き爪の治療法は?
酷い巻き爪に関して以前は、手術しかありませんでしたが、様々な矯正法も出てきたことで選択枝が増えてきました。酷く巻いても伸ばせている巻き爪であれば接骨院などでも程ほどには治すことができるようです。但し、切り込んだ短い巻き爪、肉芽形成の高度なものは普通の皮膚科では手術と云われてしまうことがほとんどです。
当院では切り込んだ巻き爪や肉芽形成のある陥入爪に対応した「そがわ式」という巻き爪矯正法を採用しており、手術は本当に最終的に酷い方のみにお勧めする事としております。他院で手術が必要と云われお困りの方は是非ご相談ください。
放置するとどうなるの?
巻き爪を放置すると細菌感染を併発して、腫れや食い込みが悪化してしまいます。周囲の肉が腫れ挙がる陥入爪に移行してしまうこともあります。市販のケア用品やサロンでの矯正がうまくいかない方は、なるべく巻き爪を専門としたクリニックに早めにいきましょう。
皮膚科、整形外科or何科に掛かるの?
巻き爪は皮膚科、形成外科、整形外科にて対応することが多くなりますが、問題点はすべてのクリニックが巻き爪に精通している訳ではないということです。医院を探すにはネット検索を使うことになるのですが、巻き爪と検索すると多くの広告がでてきてしまい、専門の病院がどこであるのか調べにくくなっています。検索キーワードを変えて良く探すとご自身の症状にあった巻き爪専門の医院がみつかるでしょう。
巻き爪治療・保険適用となるの?
抗菌剤内服の他に、消毒液や抗生剤外用がクリニックでは処方されます。また、皮膚科においてはいくつかの保存療法(爪前縁下のコットン・テーピング法・液体窒素凍結療法)が行われますが、いずれも単独では治療効果がでにくいのが難点です。
当院では保険適用内の施術として、愛護的に爪を挙上して、周囲皮膚を引き下ろす処置をメインに巻き爪の症状改善を行うようにしております。また、爪の巻きが強いものには「爪アイロン法」を主としていくつかの補助的挙上手技を用いて爪を持ち上げるようにしております。矯正療法が必要なケースでは「巻き爪矯正(自費)」もお勧めさせて頂く場合があります。
巻き爪矯正は保険適用でないのは何故?
巻き爪・陥入爪は、皮膚付属器である爪(=爪甲)の疾患であり、それを治す行為はすべて医療行為と考えられてきました。ただし、健康保険制度内での「巻き爪矯正」という項目がなく医院よっては「該当する保険診療手術」として算定したり、完全な自費医療行為として扱っていました。
一方で2000年代以降は、「マチワイヤ、VHO式巻き爪、BSスパンゲ、ペディグラス」等の各種矯正法が出現し、おもに比較的安全であるプレート法がサロン、接骨院で行われてきました。但し、近年の少子高齢化社会の中で保健医療財政を守っていく目的で、国はさまざまな規制緩和を行ってきたのです。平成28年に正式な国からの通達として「医師が治療を要しないと判断した(という前提の元)巻き爪の予防的ケア」に関しては医療行為ではなく、サロン・接骨院でどんどん行って良いですよという方針を打ち出しました(※グレーゾーン解消制度)。
以前は、医療行為として考えられていた巻き爪矯正は「実際に医師が治療を必要ないと判断していない」ケースでも、「サロンの施術者の判断」で予防的ケアである建前の元、施術が自費で行われているのが現状です。当院においても通常の保険診療の診察で巻き爪は扱っていますが、「巻き爪矯正=予防的ケア行為」は医療行為ではないとされているため巻き爪矯正療法を保険適用とはできず、「自費ケア料金」をいただいております。
巻き爪矯正の病院・名医の見つけ方
巻き爪にきちんと対応した医院を見つけるには、よく各医院のホームページを読んでご自身にあった施設を選ぶことが大切です。矯正療法にはいくつかの種類があり、それぞれの矯正法で対応できる状態が変わります。自分の巻き爪がどういう状態なのかをよく見極めて医院を選択しましょう。上記で触れたように、よほどの事がないと皮膚科クリニックから巻き爪専門の施設への紹介はされることはありません。
市販の矯正器具で自分で治せるの?ドラッグストアで売っているもの
市販の巻き爪矯正器具には、巻き爪ネイルエイド、巻き爪クリップ、巻き爪リフトなど様々な商品が売られています。これらの商品を使う条件として「ある程度爪を伸ばせている事」、「爪が割れにくいこと」、「余り厚みがないこと」、「爪を伸ばしている事が許容できること」、「ご自身で取り付けができること」などが挙げられます。
市販のグッズは陥入爪には適応とならず、さらに巻き爪に罹患するのは中高年以上の女性が多いことから、用いている方は限定的であると考えられます。当院に矯正に来る方でも市販のグッズでは付けれなかった、効果が感じられないと云って受診される方もおります。
巻き爪治療・病院でおすすめ保険適用治療は?
まとめ
巻き爪治療の概略と当院での治療方針についてご説明させて頂きました。当院では、「爪前縁下のみのコットンパッキング・テーピング法・肉芽形成に対する液体窒素療法・ガター法など」は、現在ほぼ行うことはありません。巻き爪を治していくためには、「爪の巻き」を修正するのみでなく、「爪端と爪縁皮膚の正しい位置関係の修復」を行っていく必要があります。
そのためには、爪の巻き具合・爪縁部皮膚の食い込み、腫張の程度を把握しながら、「必要に応じて巻き爪矯正」も行っていく必要があります。今回は、巻き爪治療の基本的なところをお話しましたが、「肉芽形成した陥入爪」や「実際の巻き爪をどのように挙上していくか」についても様々なコツがあります。またの機会にブログを追加していきたいと思っております。