おむつかぶれとは?

 おむつかぶれ(オムツ皮膚炎)とは、厳密には「おむつそのもの」に対する接触性皮膚炎(かぶれ)もしくは、「おむつ内」での尿/便などの排泄物による「かぶれ」のことを指します。一方では広い意味(広義)で、おむつに覆われる部位に生じる「あらゆる皮膚炎/湿疹・汗疹など」に加えて、さらに皮膚カンジダ症を含めた赤ちゃんの皮膚トラブル全般を総称することもあります。


 赤ちゃんの皮膚は成人の半分程度の厚さしかなく、免疫力/抵抗力も大人より未熟なため、蒸れたり/擦れたりしやすいオムツ周りに様々な皮膚トラブルが生じやすいのです。核家族化に加え少子化が重なり、はじめてお子さんを育てるお母さんが増えています。一緒におむつかぶれの原因/対策・治療などについてみていきましょう。

おむつかぶれの原因

 おむつかぶれの原因としては以下のことが挙げられます。

  1. 出生直後は胎脂の影響でバリア機能は保たれていますが、乳児では成長と供に皮脂が減少し刺激に対して敏感な乾燥肌となります。かつ、汗をかきやすいため様々な皮膚トラブルを起こしやすくなります。
  2. 近年のオムツは高吸収性ポリマーなどの素材/機能ともに進化し、不織布の工夫/通気性は改善しているものの、「おむつの中は常に高温多湿」な環境です。皮膚が浸軟・湿潤し、さらにバリア機能が低下し、刺激に過敏な状態となってしまいます。おむつ交換の頻度が低く、じめじめした湿潤環境や汗をかきやすい状態が長く続くと、更におむつかぶれが出来やすくなります。
  3. オムツ自体の摩擦や清拭による擦れ・摩擦などの機械的刺激と伴に、とくに新生児では頻回な尿や糞便などの細菌/アンモニア/酵素等による化学的な刺激が加わり、皮膚炎を発生しやすい状況となります。

 以前に比べておむつの素材自体による「おむつかぶれは激減」したとされます。一方で、汚物による不快感の少ない紙おむつによって保護者が排尿/排便に気づくのが遅れがちとなる状況も生じています。

 おむつの中で、尿と便が混じるとアンモニアを発生させて皮膚PHが上昇し、便中の蛋白分解酵素や脂肪分解酵素を活性化させて皮膚への化学的刺激を助長します。とくに下痢・軟便などは刺激が強く容易にオムツ皮膚炎(おむつかぶれ)を発症することとなります。とくに下痢便はオムツに吸収されるより早く周囲皮膚に広がってしまい、広範囲の皮膚炎を起こします。

おむつかぶれの症状

 おむつで被覆された部分に、淡紅色~鮮紅色の紅斑、丘疹が生じて、臀部や肛門周囲には悪化するとびらん・潰瘍も併発します。最近のおむつは性能が改善されてきており、オムツ自体にかぶれてしまい皮膚炎起こすことは少ないとされますが、皮膚とオムツの接触・摩擦によって皮膚の凸となった部分が擦れによって悪化しやすい傾向があります。


 皮膚の突出面としては、臀部・男の子の陰嚢/陰茎・女の子のお股/恥骨部などに炎症反応を生じ、おむつのギャザー部分があたる腰回り、鼠径部などもオムツの刺激や汗が貯まることによって皮膚炎を起こしやすくなります。便や尿の刺激による場合には、肛門周囲や尿道周囲にも症状を生じます。

カンジダとの見分け方(カビ画像)

 オムツ皮膚炎の診断には、とくに特殊な検査は必要としません。発生部位や症状よりほとんどの場合は診断が可能です。一方でよくある鑑別疾患として乳児皮膚カンジダ症(乳児寄生菌性紅斑とも云う)があります。必要に応じて周囲のカサカサを採取して顕微鏡検査を行うこともありますが、ほとんどの場合には臨床的に診断が可能です。

 乳児寄生菌性紅斑とは、皮膚常在菌であるカンジダ菌(Candida albicans)が、免疫力の弱い赤ちゃんなどの陰股部・臀部・首周りなどにとくに夏などで汗をかいて高温多湿の環境ができてしまうと発生する皮膚カンジダ症の一つです。通常のおむつ皮膚炎との見分け方は、高温多湿の間擦部にできる紅斑であることに加え、周囲に紅色丘疹・小膿疱/水疱とオブラート状の薄い鱗屑を伴うことが特徴です。正常皮膚とのあいだに比較的明瞭な鱗屑縁があることからも見分けがつきます。
 また、カンジダの場合には病変部周囲に孤立性の紅色丘疹や小膿疱(衛星病巣)を伴うことも特徴です。いんきんたむし(股部白癬)のような中心治癒傾向は伴いません。

【担当医からひと言】
 通常、カンジダ等の皮膚真菌症は「鱗屑/膿疱」をピンセットなどで採取してスライドガラスにのせて、KOH法直接検鏡で菌糸/胞子をみつけることになります。小児科では一般的に皮膚真菌症の直接検鏡検査に対応していません。また、カンジダ菌は「通常の水虫菌(白癬菌)」と違って、非常に細い菌糸(仮性菌糸)が特徴であり、専門的な経験/知識をもっていないと見分けることが困難となります。

 

「とびひ」との違いは?

 おむつかぶれは、殿部~股部に生じる赤ちゃんの皮膚炎ですが、細菌感染を伴うと「とびひ」となってしまう場合もあります。とびひは、基本的に「ブドウ球菌などによる感染症」であり単なるおもつかぶれと違い皮膚に水疱ができたり、じくじくした局面を生じます。
 ワセリン/亜鉛華軟膏などの保湿やステロイド外用剤で治らないときには、とびひも鑑別疾患として注意が必要です。

おむつかぶれの薬・治し方・対策は?

 おむつかぶれが起きた場合には、保湿・弱めのステロイド外用剤などの治療のほかに、スキンケアも同時に行っていく必要があります。

皮膚を保湿する(バリア機能の補完)

 軽度のおむつかぶれの状態では、市販のベビーワセリン/アズノール、亜鉛華軟膏などの油性軟膏で保護して皮膚を刺激から守ってあげるようにします。保湿剤は様々な刺激から肌を守る効果が期待出来ますので、おむつ交換のたびに1日何回塗っても構いません。おむつ交換後にすぐ保湿するのではなく、しばらくおむつを外しておき、皮膚をある程度乾燥させてから保湿をすると良いでしょう。

 ワセリンの塗り方としては、おむつ交換後の清拭し良く乾かした皮膚に、少しテカるくらいたっぷり塗り伸ばしていきます。肌を様々な刺激から保護することが目的ですから、あまり薄く塗ると効果が期待出来ません。ワセリンの塗るタイミングは、おむつ交換のたびに毎回行うようにします。

赤みなどの症状が強い場合の軟膏は?

 症状が強い場合は、短期間ウィーク~マイルド(Week~Mild)クラスのステロイドを使用して、亜鉛華軟膏やアズノール軟膏を重ね塗りします。陰部にステロイド外用剤を使うときには、局所の免疫が抑制されるため皮膚カンジダ症の合併に注意して、使用は短期間に留めておくべきというのが一般的な考え方です。
 陰部の皮膚炎にロコイド軟膏はよく用いられるステロイド外用剤ですが、陰部の皮膚は通常の体に比べて吸収がよいため、もうワンランク下のウィーククラスのステロイドであるプレドニン軟膏やヒドロコルチゾン含有軟膏などを用いても良いでしょう。さらに湿疹が酷いときにはストロングクラスのリンデロンV軟膏なども用いられますが、赤ちゃんの皮膚に使うには強すぎるため、使用を短期に留めるか「小児皮膚科に詳しい皮膚科」での使用をするようにしましょう。安易なステロイド外用剤の連用は「皮膚カンジダ症」を誘発するので短期に留めるようにします。

 また、皮膚炎の一般的な原因は物理的な擦れ+蒸れや湿潤なので、局所の皮膚を乾かすという意味で、湿疹の酷い部分や擦れ易いギャザー部分にガーゼなどを挟んで擦れを予防し、空気の通り道を確保しておくことも有効です。
 カンジダ菌の合併が疑われる場合には、ケトコナゾールやラノコナゾールなどのカンジダ菌に感受性のある抗真菌外用剤を主病変以外にも周囲の膿疱のある部分に広めに外用します。さらに、亜鉛華軟膏を併用すると皮膚の湿潤状態が改善しやすくなります。

おむつかぶれの予防・対策

 おむつかぶれの予防において大切な事は、①こすらない(摩擦を生じない)、②きれいに保つ(排泄物/湿潤を避ける)、③バリア機能の補完の3つとなります。

おむつ交換を頻繁に行いましょう

 おむつの中の蒸れた湿潤状態・糞尿などで汚染した状態をなるべく短くすることが、まず大切です。おしっこやウンチをしたときには、なるべく早く新しいおむつに交換してあげることが、おむつかぶれの予防として最重要です。皮膚がつねに湿った状態であることは、おむつかぶれ(オムツ皮膚炎)を生じやすくするだけでなくカンジダ菌の増殖も促進してしまうのです。
 育児中のおむつ交換は忙しい合間を縫って大変ですが、オムツを外してすぐに新しいオムツを付けるのではなく、しばらくオムツを外したままとして「よく皮膚を乾燥させて」から交換すると良いでしょう。また、近年の保育園での集団生活などもおむつトラブルの一因となっており、「おむつかぶれ」が発生したときには事情を話して「ウンチなどで汚れたとき」にできるかぎりは「早めにおむつを交換」してもらうようにお願いしましょう。

お尻拭きで擦りすぎない

 汚染されて皮膚をお尻拭きや濡れタオルなどで、ごしごし擦ってしまうことは避けて、なるべく優しく拭き取るようにしましょう。可能であれば、排便時だけでなく、おしっこの後も軽めにシャワーなどで汚れを落とした方がベターです。但し、石鹸をつかってキチンと洗うのは1日1回程度に留めましょう。
 毎回、シャワーをするのが大変な場合には、①ぬるま湯に浸したティッシュで優しく拭き落とす、②市販のシャワーボトル/散水瓶にぬるま湯を入れて、外したオムツを敷いたまま洗い流す方法もあります。洗浄後は、綿タオルなどで優しく擦らないように拭いて、毎回保湿をおこなうようにしましょう。
 洗い流す場合にも、陰嚢や陰唇周りの皺・陰茎の付け根・股のあいだなどの皺/ひだになりやすいところを広げて汚れが残らないようにします。ながした後は、柔らかい綿タオルなどを軽く当てて、水分を吸い取るように擦らずに拭きます。

サイズのあったオムツにする

 近年のオムツは「オムツの素材自体にかぶれ」が起きにくいように、かなり研究されています。但し、細かな形状の違いや合わないサイズのおむつによって、刺激になってしまっている場合もあります。上記の対策をしても、おむつかぶれが改善しない場合には、オムツのサイズを大きめに変える/違うメーカーのオムツ/おしり拭きにするなどで改善する場合もあります。
 おむつのサイズが小さい場合には、腹部や腰回り・太ももなどのギャザー部分が擦れたり、蒸れやすくなり、大きすぎるオムツでは軟便/下痢のときに隙間から漏れてしまいオムツ皮膚炎の原因となることがあります。
 おむつかぶれを予防するには、おむつと陰部~肛門まわりとの間に適度な隙間/空間が確保されていることが大切です。ベビー用のつなぎ(ロンパース ;Rompers)のサイズがぎりぎりだと、オムツを陰部に押しつけてしまっているケースや赤ちゃん用にズボン(ボトムス)がきついと陰部におむつが押しつけられていることもあります。おむつの上に着る服のサイズにも注意を払いましょう。

頻回な下痢便がある場合

 軽度の下痢の場合には、皮膚科にて整腸剤を出す場合がありますが、下痢~水様便が続く場合には小児科の受診をお勧めします。頻繁な下痢/水様便による頻回な清拭・洗浄は皮膚のバリア機能/皮脂を奪ってしまい、皮膚の保護機能を大幅に低下させます。

おむつかぶれに市販薬は使えるの?

 赤ちゃんのおむつかぶれに使える市販薬としては、ワセリン・亜鉛華軟膏・ベビーパウダーなどが挙げられます。おむつかぶれの初期段階では、「保湿をしっかり行い、湿潤した環境を改善」していくだけでも自然に治る可能性があります。

① ワセリン系

 ピジョンや健栄製薬のベビーワセリンの他、通常の白色ワセリンも市販されています。より純度の高いものとしては眼軟膏の基剤として使われるプロペトピュアベール(三共)も1000円以下で手に入れる事が出来ます。

② 亜鉛華軟膏系

 湿潤環境を改善し、軽度の抗炎症効果も期待出来る亜鉛華軟膏系では、「佐藤製薬のポリベビー」が代表選手です。その他でも亜鉛華配合の市販薬は売られていますが、日本製のメーカーを選んだ方が安全だと思います。日本薬局方の亜鉛華軟膏も市販されていますが、製造メーカーによって特有の臭いがあることがあり注意が必要です。

③ ベビーパウダー

 和光堂のシッカロールの他、各社よりベビーパウダーが発売されています。成分はコーンスターチやタルク、一部の製品では、酸化亜鉛も配合されています。おむつの中で肌の余分な水分を吸ってジメジメを改善させたり、皮膚をさらっとさせて摩擦から患部を保護する効果が期待出来ます。

 もし、皮膚科に掛かっており「ロコイド/リドメックス」などのステロイド外用剤を手持ちの場合には、おむつかぶれが長引くときに短期間塗布してみてもよいと思います。ただし、市販のステロイド外用剤は成分名が一般名で記載されており「どの強さのランクのステロイド」か分かりにくくなっており、自己判断では使わない方が安全です。
 また、皮膚カンジダ症に効果のあるケトコナゾール配合の市販薬は発売されていないので、「ワセリン・亜鉛華軟膏系」で保湿をしっかり行っても治りにくい「おむつかぶれ」は早めに皮膚科を受診しましょう。また小児科を受診した場合にもステロイド外用剤の使用は短期にとどめ、治りが悪いときには小児を得意としている皮膚科を受診した方が良いでしょう。

おむつかぶれの鑑別疾患

腸性肢端皮膚炎;肛門周囲に加え、眼瞼/口囲・四肢末端にも皮膚炎が見られる場合には亜鉛欠乏による皮膚炎の場合があり、血液検査で血清亜鉛値をしらべる必要があります。ビオチンやアミノ酸の不足によっても同様の症状がみられます。

肛囲溶連菌性皮膚炎;外用剤に反応の悪い肛囲全周性の鮮紅色の紅斑・びらんに伴い、発熱・苺状舌・間擦部の紅斑を伴う溶血性連鎖球菌による感染症です。

おむつかぶれ良くある質問

どのようなオムツを選べば良いですか?

 近年は紙おむつの高機能化が進み、布オムツは減少し「紙おむつの使用率」95%以上と云われます。各メ—カーとも肌に優しい素材を開発していますが、製造メーカーによって材質に差があり、使用してみて刺激がなるべく少ないものを選ぶようにします。おむつの大きさは、軽く臍が隠れる程度とし、腰部では指一本はいるくらいのものを目安に大腿部ではぴったり合うサイズとします。装着時にギャザーがよれたり、折れていないかに留意します。

お尻拭きを使用するのは大丈夫ですか?

 おしり拭きは、簡単に使用でき便利ですが、こすり拭きをしてしまうと刺激になってしまうので優しくぬぐうように拭くようにします。おむつ皮膚炎があるときには、お尻拭きはなるべく使わずにぬるま湯で洗い流すか、シャワーボトル等にお湯をいれて流した後に、柔らかい綿タオルで擦らずに押さえ拭きをするようにします。おしり拭きに含まれている殺菌剤や防腐剤などがかぶれの原因となってしまっている場合もあり、おしり拭きの種類を変えてみても良いでしょう。

どのような症状の時に皮膚科を受診すると良いですか?

 なるべく頻回のおむつ交換やスキンケアに加えて、ワセリンや亜鉛華軟膏などでの保護をつづけても悪化する場合には、小児を得意としている皮膚科に受診して下さい。赤ちゃんのお股は、刺激に敏感なのでなるべく弱めのステロイド外用剤から開始するようにします。ステロイド外用剤のみでなく、ワセリン/亜鉛華軟膏などの保湿剤も別に処方をしてもらうようにしましょう。

まとめ

 赤ちゃんによく見られる「おむつかぶれ」について、解説させていただきました。乳児期には乾燥肌および未熟な免疫力のため、蒸れてウンチやおしっこで汚れやすいおむつの中は様々なトラブルを生じます。

※Google Geminiにて作成したおつむ交換オリジナルイラスト

 

 皮膚疾患は症状が悪化すると、真菌症や感染症の合併を起こして治りにくくなる傾向があります。もし、本ページでご説明したような適切なスキンケアを行っても、1週間以上治らないときには早めに皮膚科に受診をしましょう。

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