やけど(熱傷)について

やけどを受傷した手やけど(熱傷)とは、高温の火炎(気体)・熱湯(液体)・フライパン(固体)等に接して生じる皮膚および粘膜の障害です。熱による傷害は、皮膚・粘膜の組織を蛋白凝固させ、血栓をつくり局部のうっ血・浮腫を引き起こします。

皮膚へのダメージが進むと、水疱形成(2度)や組織の壊死(3度)へと進行します。広範囲のやけどでは全身の浮腫・循環障害を呈し、重篤化します。

熱傷の原因

 主な原因により、以下に分類されます。

  1. 温熱熱傷(お湯や火など熱い物に触れた場合)
  2. 電撃傷(感電・落雷などによるもの)
  3. 化学熱傷(酸やアルカリによる)
家庭内でおこるものは、ほとんどが温熱熱傷になります。家庭内では、台所・居間・風呂場など至る所に、原因となる熱源がありますが、命に係わるような重症なケースは少ない傾向です。比較的小範囲のものでは、地域の病院・皮膚科に受診されると良いでしょう。 
家庭内でやけどの原因となるもの

やけどの原因となるものはお子さんの手の届かないところへ

 

予防として家庭内では、手軽に使える電気ケトルや炊飯器・アイロンなど、熱湯・高温の蒸気がでるものは「お子さんの手の届かないところに置く」のが基本となります。

症状

熱変性により皮膚の組織障害が進行すると、直接的に皮膚がやけて表面から壊死すると伴に、周囲の組織から様々な化学伝達物質がでて、局所の炎症・発赤・痛みを生じます。

①高温のものに接触した時間・②どのくらい高い温度のものに接したかによって火傷の深さが決まるとされます。比較的低い温度(50~60度程度)の湯たんぽ等でも、長時間接しているとダメージが生じ「低温熱傷」と呼びます。一方、温度が比較的高い鍋などでも、プロの職人さんなどによる極短時間の接触では火傷とならないこともあります。

やけどの診断 

深さの判断

やけどの深達度は、Ⅰ~Ⅲ度の3型に分類されます。どの位深くまで組織障害が及んだかによって、傷の治り方や傷跡が変わってくるためです。皮膚の構造は、表面から①表皮、②真皮、③皮下脂肪という順に層状になっています。

やけどの深達度

やけどの深達度(皮膚の断面)

Ⅰ度熱傷(epidermal burn)

お湯などの軽めの火傷で、よく見られます。皮膚には赤み・腫れと伴に、ひりひりとした痛みを伴います。1週間以内には、傷を残さずに治ってきます。

Ⅱ度熱傷

水疱を作り、真皮まで損傷が及びます。真皮の浅いレベルまでか、深いレベルまで障害されたかにより、以下の2つに分類されます。

浅達性Ⅱ度熱傷(superficial dermal burn;SDB)

 水疱の下が、ピンク色を呈しており痛みを伴います。1週ほどで浸出液が減り、おおよそ2週間以内に上皮化します。ピンク色の軽い跡が残りますが、色素沈着や脱失などは徐々に落ち着きます。

深達性Ⅱ度熱傷(deep dermal burn;DDB)

    水疱が取れたあとも黄色い壊死組織が残り上皮化するまでに3~4週間要します。黄色い壊死部では痛みを感じないのが特徴です。治った後に傷跡(瘢痕治癒)を残します。処置が適切に行われず感染を起こすと、容易にⅢ度に移行します。

Ⅲ度熱傷(deep burn

皮膚全層が障害され、黄色~黒色の壊死組織となります。皮膚潰瘍となり、広範囲の場合には植皮手術を必要とします。壊死組織を放置して皮下膿瘍を作ると、敗血症を起こしたり、TSS(トキシックショック症候群)などを引き起こし重症化する場合もあります。小範囲のケースでも治癒には1ヶ月以上を要します。

やけどの深さ;模式図

受傷面積・重篤度

熱傷の重症度は、皮膚が損傷をうけた深さ(深度)+広さ(受傷面積)により診断されます。

受傷面積

やけどの広さは、体表面積に占める割合で判定されます、成人の火傷の広さを簡易的に計算するのに、良く用いられるのが「9の法則」です。全身を頭部、左右の上肢、躯幹の前後面、左右下肢にわけ、各場所に割り当たられた数値を合算して、損傷の範囲を判定します。

やけどの面積算定法「9の法則」

面積の算定法「9の法則」

なお、子供では「5の法則」が使われ、成人とは各部位の数値が変わります。

火傷が部分的であったり、とびとびにある場合は、手の平全体を体表面積の1%として概算する「手掌法」という方法が用いられ、手の平「何枚分」かによって、「◯◯%」という数え方をします。

重症度判定

重症度の判定には、深さと体表面積に基づき軽症・中等症・重症の3つにわける下記の分類が用いられます。

  1. 軽症(外来治療を行う)
    Ⅱ度が15%未満、もしくはⅢ度が2%未満
  2. 中等症(入院の適応となる)
    Ⅱ度が15~30%、もしくはⅢ度が10%未満
  3. 重症(専門施設へ搬送)
    Ⅱ度30%以上、もしくはⅢ度10%以上
    ※他に顔面、手足のⅢ度火傷、気道熱傷等を伴う場合も重症とする

これをすべて一般の方が覚える必要はないですが、成人では、

  • Ⅱ度の火傷が体表面積の15%以上
  • Ⅲ度の火傷が2%以上

では、入院が必要となりますので、大きな総合病院に行くと覚えると良いでしょう。

治療はどうするの?

 患部は消毒を行い、抗菌剤軟膏外用を行います。小範囲のⅠ度熱傷では初期に、ステロイド外用剤(リンデロンVG軟膏)が用いられる場合もあります。大きな水疱ができた場合には、水疱を針で穿刺して、中の浸出液(リンパ液)を排出しますが、なるべく水疱を取らないようにします。

 水疱中は、破けていないときには無菌状態であり、かつ内容液に組織を治癒に導くサイトカイン(生理活性物質)が多く含まれており取らない方が、傷の治癒を早めるからです。

手術の適応としては、広範囲のⅢ度熱傷やⅡ度深達性熱傷(DDB)においても関節部位の場合です。治った後に、拘縮・ひきつれを起こしやすい部位では手術(皮膚移植手術)が必要になることが多くなります。手術を行わないと、感染の悪化や治ったあとに皮膚の拘縮のみでなく、関節拘縮も残るリスクもあります。適切な時期に、深さ・面積などを総合的に判断し、地域の総合病院(大学病院等)の形成外科(皮膚外科の専門科)にご紹介させていただきます。 

応急処置・予防は?

 Ⅰ度火傷やⅡ度火傷で範囲がそれ程広くない場合には、すみやかに流水で充分患部を冷やし(30分程度)、腫れや炎症が広がらないようにします。その後、患部をきれいなタオルやガーゼなどで覆って早めに病院を受診しましょう。

冷やす場合には、衣服を脱がせるより、とにかく早く患部を流水にて冷やすことが大切です。衣服を無理に脱ごうとして皮膚や水疱が破れてしまうと治りにくくなります。氷嚢や保冷材を使う場合は、清潔なタイル等で患部に当てた上から冷やす様にしましょう。

水ぶくれがない場合(Ⅰ度)や水疱があっても指先程度の小範囲(Ⅱ度までに限る)あれば、自宅で応急処置として「マキロンなどの市販の殺菌消毒剤」、「市販の抗菌剤軟膏」などを塗り、滅菌ガーゼで保護しても良いでしょう。とは云え、水疱が大きな場合や痛みが続く場合は「早めに病院を受診するように」しましょう。

やけどのセルフケア

「栄養と料理」2019.1月  ちょっと気になる症状【やけど】(監修;大木更一郎)より引用

当院の特徴

当院では、「熱傷専門医」「形成外科専門医」「救命専門医」である院長が、診断・治療にあたります。火傷が治ったあとに生じる傷跡や肥厚性瘢痕・瘢痕拘縮の治療も大学病院時代に数多く担当してきましたので、お気軽にご相談ください。

大木皮膚科
140-0004
東京都大田区山王2-5-1
田中ビル1F
電話;03-3776-2220

 

平成8年~12年まで高度救急救命センターに院内出向し、広範囲熱傷の患者さんも多数手術・治療を行ってきました。他院で治らない場合も、なるべく外来通院でお引き受け致します。また、手術適応のある場合は、すみやかに近隣の東邦大学大森病院、昭和大学などの形成外科(皮膚外科)のご紹介させて頂きます。

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