もくじ
そがわ式巻き爪矯正とは?
巻き爪矯正に精通した専門医師が直接時間を掛けて巻き爪・陥入爪に対応/予約制巻き爪矯正(水曜午前)を行っている巻き爪専門病院
各種巻き爪矯正法のさまざまな弱点を克服した矯正療法の完成形
そがわ式は、香川県の整形外科医である十川秀夫医師により2012年に報告された巻き爪矯正法で、「患者さんお一人おひとりの巻き爪の形状」にフィットした「フックを作成」してワイヤー矯正を行っていくことが特徴となります。既存の矯正法である「マチワイヤ・VHO巻き爪矯正」などの問題点を克服しようと「弾性ワイヤー加工」の研究を重ねて開発されました。
爪端にフック(Hook)を引っかけて、弾性ワイヤー全体のスプリング(Spring=弾性)効果を使って矯正されることより、別名「SH法(Spring & Hook Method)」とも呼ばれます。
※痛みが大変強く触ることすら出来ないケースでは、局所麻酔足趾神経ブロック下に処置を行わせて頂く場合があります。
様々な巻き爪矯正法
巻き爪矯正の原法は、マチワイヤを開発した町田医師によると「爪に穴を開けて糸で牽引」することにより「巻き爪矯正」を行ったことから始まったそうです。ドイツ発祥のVHO式巻き爪矯正は、爪の両端にフックを掛けて牽引する方法で、巻き爪矯正の原法をワイヤーで再現したものとなり、時間を掛けながらゆっくり挙げていくコンセプトです。
BSスパンゲは、スキー板などに使われていたグラスファイバーを巻き爪に応用したプレート法と考えられます。適度な弾性を持っているのですが、爪への確実な貼付に技術が必要で「浸軟した爪や極度に折れ曲がった巻き爪」は不得意です。
マチワイヤは1999年日本の整形外科医である町田医師が開発した巻き爪矯正法で、「特殊加工したニッケルチタン合金である超弾性ワイヤー」を爪に穴を開けて矯正を行っていく方法です。爪に穴を開けるので「過度な矯正により爪が割れやすい」、「爪根元や爪端が挙がりにくい」などの問題がありました。
そがわ式での工夫は?
そがわ式巻き爪矯正では、①弾性ワイヤーの端をフック加工して、「VHO式巻き爪矯正」よりもしっかりと爪端を持ち上げられる形状に工夫、②爪に穴を開けるのではなく、弾性ワイヤーの反発力を余すことなく爪幅全体に効かせることができる、③ワイヤーが爪甲上のほぼ全幅に装着され、剪断力が爪に掛からないため割れにくい、④フックを加工して爪端を直接引っかける方法のため薄い爪や浸軟した爪・切り込んだ短い巻き爪にも装着可能であり、プレート法のように剥がれる心配が少ないなどの改良が施されました。
以上の特性から、「爪を伸ばさなくても装着可能、短い爪にも僅かな隙間さえあれば施術できる」などと伴に、肉芽を伴う陥入爪、高度の弯曲爪、硬い爪、小さな爪、薄い爪など「ひとつの矯正法でどのようなタイプの巻き爪にも適応可能」なほぼ万能といえる矯正手技が「そがわ式」となっております。
一方で欠点としては、「フック加工にはワイヤー曲げの技術を必要」とされ、対応している医院が全国でも60~70件程度のみであり、都内においても10件に満たない医院数しか「そがわ式」を行っておりません。
なお、かなり適応範囲のひろい「そがわ式」ですが、以下のような場合には巻き爪矯正ができない場合もあります。
そがわ式巻き爪矯正の適応外となる場合
①極めて大きな肉芽腫形成を伴う陥入爪、②通院がまったく出来ない方、③矯正装具の自己管理が出来ない方、④ご高齢で弾性がなく肥厚している爪、⑤巻き爪矯正をご希望されない方、⑥高度の金属アレルギーの方、⑦爪端が極度に脆い方、⑧爪端が敏感で全く触れることのできない方などでは巻き爪矯正の適応外となりますので、地域総合病院の形成外科等にご紹介させていただくことがありますので、ご了承の程お願い申し上げます。なお、前記の矯正療法の適応外は「他の矯正療法」に於いてもほぼ同様と考えられます。
※本法で使用するワイヤーは、歯科矯正にも使われる弾性ワイヤーの1種であり、口腔内に入れても溶出する金属は極微量であり、安全性は高いものと考えられます。
当院で巻き爪矯正を受けるには?
当院では令和5年4月より「巻き爪矯正を水曜午前の予約制」に変更致しました。巻き爪矯正のご予約を取るには、「まず一般皮膚科外来」に平日午後に受診していただき、ご希望をお伺いしつつ「巻き爪矯正の適応」となる方のご予約をお引き受けしております。お電話やメールでのご予約はお受けしておりませんので、申し訳ありません。
※過去1年以内に巻き爪矯正を当院で受けた方のご予約については、当面のあいだお問い合わせメールにて対応させていただきます。カルテを出して確認後のご連絡となりますので、お返事までお時間をいただきます。
当院でも10年近く「そがわ式巻き爪矯正」を行い、現在ベストと考えらえる矯正法がそがわ式であると自負しております。サロンや他のワイヤー矯正法で治らずお困りの患者さまにも、ご来院いただいております。
巻き爪矯正・そがわ式の開発秘話:なぜ、そがわ式なのか?
マチワイヤーやVHO式巻き爪矯正の欠点に気がついた「十川医師」が、より爪端の奥を確実にフックで掴み、「きちんと巻いた爪をワイヤーで矯正出来る方法」を考案したことに始まります。
香川県三豊市の整形外科医師である十川秀夫先生は、まずフックを作るために「マチワイヤを曲げる加工」に取りかかったそうです。もしも、マチワイヤの端を自由にフック状に加工し爪端の奥に掛けることができたら、「超弾性ワイヤー」の反発力を爪幅一杯に余すことなく掛けれるのではという発想は医師であれば誰しも思いついたことがあるでしょう。
しかし、元々超弾性ワイヤーとして作られたワイヤーを再度曲げるように変性させるには「かなりの技術とコスト」が掛かるため断念せざるを得なかったそうです。そこで、様々な素材の弾性ワイヤーを研究してたどり着いたのが、現在の「歯科用弾性ワイヤーのなかでも巻き爪矯正に適した素材」でした。
※答えは、本稿後半で詳細に解説しております。
そがわ式巻き爪矯正
ワイヤーの太さは、通常は5種類で0.30、0.35、0.38、0.42、0.46(mm)となっており、様々な厚さ、硬さの巻き爪に対応しております。そがわ式巻き爪矯正の原法は「爪の両側にフック状に加工したワイヤー」を掛けて、両側からワイヤーを倒し込んだ「テコの原理」にて爪端を持ち上げようという方法論となっております。
巻き爪矯正に「超弾性は決して必要ではない」という発想の転換がそがわ式の原点とも云え、超弾性ではない弾性ワイヤーを使用することによって臨床の現場にて患者さんの爪の形状に適したフックをその場で作成することが可能となりました。これは巻き爪矯正法としての「他法にない物凄いメリット」となっていくのです。
次の難所は「倒し込んだ2本のワイヤーの固定法」でした。当初は、倒し込んだ2本のワイヤーを固定するために「糸で固定する・ワイヤーで巻く」などの様々な方法が試されましたが、当方が「そがわ式巻き爪矯正」を導入した2014年初頭には、光硬化性樹脂で爪甲に固定する方法に改良されていました。樹脂固定法を採用することによっても、多くのメリットが生まれてきます。
ワイヤーを短時間に爪甲に装着できるだけでなく、「1本ワイヤーでの矯正」が可能となり片側巻きの巻き爪にも対応できるようになり、更にワイヤー法にも係わらず「プレート法」ゆずりの「面での矯正も可能」となりました。原法はフック&スプリング法となるのですが、「根元への樹脂+ワイヤーのみでの固定法、フック側樹脂固定法、樹脂固定での割れ爪の補修、爪欠損への人工爪としての使用」などの応用も可能となっております。
さまざまな巻き爪に対応
さらに陥入爪に対しては「長谷川式コットン充填固着法」を改良し、さまざまなコットン充填変法を併用することで肉芽腫を伴った陥入爪へのワイヤー矯正すら可能となっております。
当院では、さらに爪挙上補助手技である「爪エレバ法」を強化して、そがわ式巻き爪矯正を「他法に劣らない即効性のある巻き爪矯正法」として用いており、もう今更他の矯正療法をやる気がまったく起きないほどとなっております。
次からは、そがわ式巻き爪矯正の発想について、そがわ式の目的・特徴、そがわ式を最大限活かす当院でのコツ、メリット・デメリット、そがわ医師の著書について、そがわ医院訪問記など、ややマニアックな内容のかなりの長文となっております。ご興味のある方のみ読み進めて頂けますと幸いです。
そがわ式巻き爪矯正の発想へのきっかけ
そがわ式は大変効果的なすばらしい巻き爪矯正法なのですが、広まっていないのにはいくつかの訳があります。
そがわ式では、「その場で患者さんお一人おひとりの爪の状態に合ったフック」を作成するために、施術者の技術・センスが必要となります。過去当院に「そがわ式」を見学にきた医師も何人かいましたが、マスターしていただいたのは、わずか3人の熱心な先生方のみとなっております。
十川医師も「そがわ式でのフック作成や樹脂固定の難しさ」は指摘しており、日本国内でひとつの県に1~2人、都内では5~6人程度のそがわ式をマスターした先生がいれば良いとお考えのようです。決して、本法を巻き爪サロンなどにおおく広めたり、巻き爪装具を販売して儲けようとは一切考えていないのです。
そのため、「そがわ式」を導入するには十川秀夫先生に直接連絡を取り、1対1でのオンライン講習受講を受けていただくのが唯一の習得方法となっております。現在まで、100名余りの受講者がいるのですが、そのうち本法をしっかり行っている施設は全国で50施設弱ほどとなっております。
①フック牽引法では挙がらない
当医院でも10年以上前には「マチワイヤ」しか矯正療法がなく、爪の奥が治りにくい、爪が割れてしまうことがあるなどの問題を抱えていました。
ワイヤーをなるべく奥に入れたり、ワイヤーが掛かっている穴周囲をアクリル樹脂などで補強しましたが、「爪端・爪奥への矯正には限界」がありました。短い爪にはガター法などやアクリル人工爪を作ってしのぎ、「爪が伸びたらマチワイヤ」を行うという「今でも多くの医院」が行っているスタイルです。
より爪の奥、爪端をしっかり矯正出来る方法がないか模索していたところ、皮膚科専門医である河合修三先生もご推薦されているVHO式巻き爪矯正という方法があると聞きつけ、早速講習会に参加しました。ドイツ発祥の矯正療法で「爪端の奥ぎりぎりの隙間」にフックを掛けて牽引する方法で、本法を2、3年間かなりがんばって行った時期もありました。
爪奥に掛かって痛みもでない、よりワイヤーが長く持つなどのメリットもあったのですが、爪端の奥が強く巻き込んでしまうタイプでは「爪のカーブに合わせワイヤーを調整」しないと外れやすく、ある程度は持ち上がるのですが、「ワイヤーを牽引するほど途中から爪に食い込んで」しまって、ワイヤーを牽引する力が「本法ではうまく爪挙上力に変換されていない」のではという疑問をいだくようになりました。
十川医師からのお誘いの手紙
その頃に封書で届いたのが、「そがわ式巻き爪矯正」へのお誘いでした。そがわ式矯正の簡単な説明と「そがわ医師のアメブロ」のアドレスのみがある簡単なものでしたが、そのときに藁をもすがる気持ちで取り入れたのが「そがわ式巻き爪矯正」となります。十川医師は、「そがわ式」を広めるために当初は個別の勧誘活動をおこなっていたようです。
※そがわ式のアメブロ https://ameblo.jp/sogamaru/
爪端にフックを作り、テコの原理で爪端を挙上できる(フック挙上法=Spring&Hook法)とのこと、「正直アメブロの症例写真も治ってはいるものの綺麗に装着されている」とは云えず・・・、爪端が治りにくい人にちょっとでも効果があれば・・・という半信半疑の状態でした。
十川医師は余りホームページに力を入れておらず現在もアメブロのページはそのままですが、今では多くの「そがわ式」を行っている医院がホームページ上で症例写真を提示しております。
※十川先生は「そがわ式」に関する著書を2冊書き上げており、その中で「そがわ式の原理やメリット・症例提示」を行っております。著書の内容については後述いたします。
②超弾性でなければいけないという呪縛からの解放
そがわ式ワイヤー(SHワイヤー)の基本は、「超弾性ではないこと」になります。超弾性では、巻き爪矯正の実際の現場で「患者さん毎の爪の形状」に合ったフックを「その場で作成する」ことは困難となるからです。巻き爪矯正に必要なワイヤー弾性は「決して超弾性でなくとも問題ない」という発想の転換が「そがわ式巻き爪矯正の一番の特徴」といってもよいでしょう。
では、なぜ日本国内では「超弾性という言葉」にこだわるのでしょうか?・・・それは多分、国内で最初に巻き爪矯正を唱えた町田医師の開発した「マチワイヤの影響」が大きくあると思われます。マチワイヤを実際にさわると「どんなに曲げても元に戻る復元力」が働き、スグにまっすぐに元に戻ります。通常、決して折れたり曲がったりはしません。まさに、「本当の超弾性」という条件を満たしていると思います。
一方で「マチワイヤ」は、超弾性であることと引き替えに「加工ができないという弱点」も持ちます。爪に穴を開けて装着するしか方法がないのです。このため、市販品では超弾性ワイヤーにフックをつけたり、巻き爪マイスターではフックとスプリングの中に「超弾性ワイヤー」を埋め込む形になっています。フックをつけると、どうしても矯正装具を爪先付近にしか装着できないという縛りが生じてしまいます。
当方も、VHOに「マチワイヤ」を縛り付けて無理矢理に装着したり、「マチワイヤ」を加熱して曲げたりしたこともあるのですが、加熱の加減が難しく「あまり熱しすぎて」しまうとワイヤーを曲げられる代わりに脆くなり折れやすくなってしまいます。
弾性ワイヤーの種類とは?
ここでワイヤーの素材についてもう一度おさらいをしましょう。様々なワイヤーの原材料をみると、そがわ式で用いる通常の弾性ワイヤーは、「歯科矯正・板バネ・ぜんまい」などに使われる一般的なバネ素材のひとつとなりますが、中には「形状記憶合金」・「超弾性」を歌う巻き爪矯正器具もあります。
・形状記憶合金(Shape memory alloy);ワイヤーの曲げ弾性の限度を超えて、大きく歪ませて曲げてしまっても「ある温度」以上に加熱すると覚えていた(形状記憶)形状に復元してしまう特殊な性質をもつ金属のことを指します。代表選手は「マチプレート」であり、45度以上にドライヤーなどで温めると元の形に戻ろうとする力が働きます。
・超弾性(superelasticity)とは;通常のフックの法則が働く曲げ弾性の限界を大きく超えても、常温において応力を除くとただちに歪みが消えて元の形状に戻ることを指します。フックの法則とは「ばねの伸びと加重」が正比例する性質(※弾性限界以下の場合)を指し、通常の弾性ワイヤーは限界値を超えてしまうと曲がってしまいます。超弾性ワイヤーは「めがねのフレーム・携帯電話のアンテナ」などにも使われており、通常の使用範囲ではどんなに曲げても元に戻る性質を持っています。
巻き爪矯正では、まさに「マチワイヤ」が超弾性ワイヤーの典型であり、通常爪に装着される範囲でのかなりの曲げでも折れることがありません。
超弾性でなくとも良い
形状記憶合金も超弾性効果もひずみ量には限度があるとされ、限界を超えると塑性変形(すべり変形)を起こして、その分元に戻らなくなるともされます。一方でいくつかの巻き爪装具(実名は挙げれませんが・・・)では理想論として「超弾性を歌うものの曲げ剛性の限界値が低く」、簡単に曲がってしまう残念な製品もあります。
巻き爪矯正につかうワイヤーは「超弾性であることが条件」・「超弾性でなければ劣っている」・「超弾性であることが優れた製品」であるという固定概念ができてしまっているのかもしれませんね。なかなか、「単なる弾性バネです、超弾性ではないプレートです」とは正直に云いにくいのかもしれません。
じつは、「そがわ式巻き爪矯正」では「超弾性ではないこと」が様々なメリットをもたらしています。但し後述しますが、正しいワイヤー曲げ剛性に対する理解とワイヤー反発力の一番美味しいところを使いこなす技術が必要となってきます。巻き爪矯正にはけっして「超弾性である必要はなかった」のです。
③プレート法の限界とフックワイヤー法
プレート法の代表選手には「BSスパンゲ・ペディグラス」がありどちらも優れた方法です。メリットとしては、「薄くて目立ちにくい・安全性が高い・軽い運動も可能・爪が割れにくい」などが挙げられます。さらに、ワイヤー法を多く経験するとみられる「ワイヤーが掛かった部分」のみが挙がり、「周辺部分の爪縁部が垂れて」しまいにくいこと、つまり「曲がった爪甲に対して面での矯正を行いやすい」こともプレート法のメリットと云えるでしょう。
また、プレート法では、矯正前に爪をお湯に浸けておくなどの時間を掛ける必要がなく「プレートを装着する前に爪表面に前処理」を施して爪を持ち上げやすくしたり、プレートをしっかりと装着できるように接着法が工夫されています。つまり、他法で行われることのある爪をお湯につける方法は「爪に水分を含ませて浸軟」させて持ち上げやすくする手技のひとつに過ぎず、決して巻き爪矯正に必須なことではないのです。
もちろん、「そがわ式」においても施術前にお湯につける必要性はないのですが、ワイヤーを爪表面に装着するための事前の爪表面への前処理は行わせていただいております。
プレート法のデメリットは?
一方で、プレート法のデメリットはあるのでしょうか?たとえば、当方がBSスパンゲの講習を受けた「まちや接骨院」さんでは、軽度~中程度までの巻き爪では1回の施術(6000円前後)で治ってしまう方がほとんどであり、重度の方ではもう少し回数が掛かることがあるそうです。
BSスパンゲはお近くにすぐれた施術者の方がいれば「おすすめの方法」のひとつとなります。一方で、当院近隣でも同じ方法で施術を受けた方で毎月プレートを貼り替えて1年以上掛かったが治らなかったという方のご来院もありました。
つまりどの巻き爪矯正法にせよ、技術者の腕により治療期間・治療効果に差がでてしまうことはあります。プレート法でほとんど巻いた爪端が挙がっていない例や爪端だけプレートが剥がれてしまっている方も散見されます。
日本発のプレート法
日本発の方法で、プレート法を進化させた巻き爪矯正装具に「ペディグラス」というものがあります。矯正装具は1種類ではなく、はじめからプレート幅や奥行きにいくつかのサイズが設定されており、「矯正装具の爪への接触面積」を増やして、爪端の矯正や爪奥のほうまで矯正することを考え抜かれた方法論です。
とくにペディグラスの接着技術には目を見張るものがあり、そがわ式を開発した十川医師もぺディグラスの接着手技・矯正力は評価に値するものであるとコメントしております。反発力のあるレジン樹脂を爪表面に貼り付け矯正していくのですが、不要な部分を削り取って更に表面にコーティーングを施し、プレート表面を覆ってしまうので「ほぼ透明なプレート」が分からなくなってしまうほど審美性にすぐれていることも特徴です。
プレートを長く爪に貼っておく問題点
一方で爪表面にプレートを長く貼っておくことによるデメリットもあります。とくに爪表面の広範囲にプレート+ネイル用樹脂を長く装着するペディグラスでは「必ず1ヶ月に1回の装具の交換」を行うように施術前に承諾書にサインが必要となります。
参考サイト;https://www.nailsscience.com/fc/pdf/pgtfc-guide-2019.pdf(※R5.10月現在抹消されています⇒「ペディグラス 施術同意事項」などで検索されてください。)
ここで心配になることは「爪も皮膚呼吸」を行っているので、樹脂で爪表面を広範囲に覆ってしまって問題は起きないかということではないでしょうか?
元来、体表面は呼吸をおこなうことができる器官であり、魚類では「鰓」という形に進化し、人などでは「肺」という呼吸を専門でおこなう臓器に発達しました。ミミズなどの呼吸器官をもたない生物では皮膚呼吸のみにたよっており、両生類は30~50%を皮膚呼吸に依存しているとされます。人においては新生児ではやや高いものの通常の大人での皮膚呼吸は全呼吸量の1%以下にすぎません。
爪表面からもわずかながら皮膚呼吸が行われている可能性はありますが、一時的に樹脂で覆うことによって皮膚呼吸に問題がおこることはなさそうです。
プレート法は定期的交換が必須
それでは「なぜぺディグラスでは1か月に1回の交換が必要」なのでしょうか?常日頃、手爪/足爪などにネイルを行う方には違和感がないかもしれませんが、爪表面の広い範囲を樹脂でコーティーングしておくことは実は爪に負担を掛けてしまうのです。
すなわち、ぺディグラスも含めた「ジェルネイルなどのネイル樹脂」を1ヶ月程度の許容範囲を超えて爪に長くつけておくと様々なトラブルが起きてしまう可能性があります。良くあるトラブルとしては、長くネイルを装着することによって「カビや緑膿菌が繁殖」してしまう、「爪剥離が生じる、爪甲自体が痛む」などが考えられます。
極端な例えですが、普通の皮膚に1日中サランラップを貼っているのと同じ状態ですね。皮膚が蒸れて水分が増えてしまうと、徐々に皮膚表面にカビや雑菌が繁殖してしまいます。皮膚も爪も極端な乾燥は良くないのですが、あまりに水分量が多すぎても問題を起こします。
ネイルを長くつけておくと、ネイル自体の剥離やひび割れが起きたりもしますので、必ず3~4週間ごとの交換が必要となってきます。
また、ネイルをご自身で剥がしてしまうと爪を痛めてしまうことがあるため、ネイル専門家の方にきれいに取って頂く必要があります。ペディグラスの樹脂は「特にかなり丈夫」についていますからご自身で装具を外すことはおすすめしません。
そがわ式ではどう対応しているか?
では、「そがわ式」ではどのような対処をしているのでしょうか?実は、そがわ式もワイヤー法の一種であり、フックが掛かった爪端部分のみが挙上されやすいという欠点があります。そのため、爪端が一カ所で挙がりにくい方は、細めのワイヤーを並列に2本掛けたり、当院ではそがわ式のフック側にも樹脂固定を追加して面での爪端挙上を行いやすくなるよう施術をしております。
さまざまな工夫の結果として、現在ではプレート法で出来ることは「そがわ式」ですべて行えるといっても過言ではありません。
しかも、ワイヤーが爪表面に見えてしまうと云う欠点があるものの、矯正力はワイヤーの太さでいくらでも調整が可能なため、爪表面をすべて覆ってしまうことはありません。そがわ式を10年近く行ってきて、カビが悪化したという経験がなく、さらに中心部に爪白鮮(水虫)がある方では、水虫の治療をしながら巻き爪矯正をおこなうという芸当も可能です。
フックワイヤー法の有利な点は?
プレート法の弱点としては、爪の表面が極端に浸軟していたり、陥入爪などで肉芽腫があると装着が困難になることです。さらに、爪を切り込んでしまっている方では、巻いている爪の表面が非常に狭くなっておりプレートを装着することが困難なケースも散見されます。
そんな場合でもわずかな隙間さえあればフック法が装着可能な「そがわ式」が一歩リードしています。わずかな爪横の隙間にワイヤーを挿入する、爪の前縁の僅かな隙間しかない場合でも、「そがわ式ワイヤー」ではフックを3次元状に形成すれば問題なく矯正に持ち込むことが可能です。
ここでも「そがわ式巻き爪矯正」が超弾性でないことが非常にメリットとなっています。爪端がぶ厚い爪、非常に薄くて他院でワイヤーを着けられないと断られてしまった巻き爪なども「その場で適切な5種類の太さのワイヤー」をチョイスするだけで、あとはフック形状を自由に細工でき様々な巻き爪に対処できるそがわ式は、当院にとって「なくてはならない存在」となっております。
④超弾性でなくとも良いという逆転の発想が「そがわ式」
巻き爪矯正器具の説明をみると、「超弾性である」、「形状記憶合金」であるなど製品が優れていると主張する商品がありますが、そういったものに限って正確な素材の種類の記載がありません。やはり、前記のように「マチワイヤ」の影響が大きく、超弾性が良いという呪縛があるとしか思えません。
実は、「BSスパンゲ・ペディグラス」なども決して超弾性ではありません。それぞれの矯正法の威信に関わりますので実際の写真を出すことはできませんが、グラスファイバー製のプレートも限界を超えるとファイバーが離断して折れてしまいますし、レジン樹脂プレートも弾性の曲げ限界を超えると「たわんで」曲がってしまいます。
そがわ式のワイヤーも「ある曲げ剛性限界」を超えてくると、曲がってきてしまいます。但し、すぐに折れてしまうのではなく、矯正力もいきなり低下することもありません。「本当に超弾性でなくても大丈夫なの?」って思ってしまうかも知れませんね。
超弾性で無くともよい訳;爪の弾性について
実は、爪甲の曲げ剛性に関する力学的な研究報告はほとんどみられません。1999年菅原らは爪の水分含有量と動的粘弾性・折れ試験などを行った結果を報告していますが、切り取った爪甲遊離縁についてのサンプル数の限られた報告のみとなっています。
巻き爪には硬さや曲がり具合に個人差が大きく、様々なタイプがあります。以下は著者の経験論となってしまいますが、硬くて巻いた爪は、挙上し始める時に一番ちからが必要となり、一方でその後に適切な部位にきちんと挙上力を掛けられれば、それ程つよい矯正力は要らないイメージです。
若い方で爪が比較的柔らかく余り厚みのない方では、矯正力を掛けるに従い、素直に爪が持ち上がってくる傾向ですが、ご高齢の方では爪が硬いからと云って「そのまま」矯正力を強く掛け続けると「過矯正になってしまう方」もいます。
◆参考文献
・爪中の水分と爪の力学的特性(第1報および第2報);菅原ら、日本化粧品技術者会誌:1999
・つめの構造弾性率の測定と曲げ剛性について;日本機械学会(会議録):2017
※医中誌に該当文献なし
爪を挙上し始めるときに一番力が必要なる
ある程度挙上できたら戻る力に対抗できる矯正力で必要充分
巻き爪矯正は、車が雪道でスタックしてしまったタイヤを脱出させる場合に似ています。小刻みにタイヤ(爪)を前後(上下)させて動かし易くしたり、周囲の雪(肉芽や爪縁皮膚・爪甲下角化物)を除いて、タイヤチェーン(爪エレバ)を装着するなどで、雪に埋もれてしまったタイヤ(肉芽・爪縁に埋もれた爪)を如何に脱出させやすくするかの準備が肝要です。
雪に埋もれたままで駆動力(矯正力)を掛けても、タイヤが雪道を抜けられないように巻いた爪も持ち上がらなかったのです。一方でマチワイヤが開発された2000年代当初は、国内における巻き爪矯正に対する研究があまり進んでいなかったため、巻いてしまった爪に合わせるように「いくら曲げても元に戻る性質」をもった超弾性ワイヤーを「爪に穴を開けていれる」という形になったようです。
爪に穴を開けるということは「必然的にワイヤーは爪の弯曲よりも強いカーブ」で曲げられることになり、かつ曲げられても元に戻るだけの超弾性的な性質が必要となってしまったのです。
もちろん、マチワイヤでも技術のある先生方では「爪端ぎりぎりに穴を開ける」、「爪弯曲の片寄りに合わせた入れ方」、「爪の巻きが強い部分に複数本のワイヤー挿入を行う」などの対処をしているようです。
一方で、マチワイヤ法では、「爪縁のみが強く曲がっている巻き爪」、「爪の奥の方が巻いてしまっている巻き爪」に対しては一般的には対処が困難になってしまっているのが現状です。
⑤実はマチワイヤ以外の巻き爪装具はすべて「超弾性でない」という事実
じつは爪甲の曲がる力自体も、そもそも超弾性では無く、ある程度の癖を付けていくと軽い力でも爪を挙上することが可能です。下記は「ぺディグラス」の施術時の画像ですが、装具を取り付けて反対側に「装具の持ち手」を倒しながら矯正を行っていますね。よく見ると術者の左手親指爪で爪甲先を持ちあげて矯正を補助していることが分かります。
実際、巻き爪矯正療法は「決して爪が一番巻いている状態」から開始する必要性はなく、近年では様々な予備矯正法が発達してきました。超弾性ではない多くの矯正装具では「一番巻いた状態」の爪にそのまま器具を装着するのではなく、様々な補助的な療法で爪に挙がり癖をつけて・・・持ち上がりやすくしてから矯正を行っているのです。
※本当に超弾性の矯正装具であれば、加工に困難を極めることは、そがわ法を開発した「十川医師」が実証確認済みの事項です。
※市販の矯正グッズ・サロンの矯正器具などで、「形状記憶・超弾性を歌うもの」がありますが折れたり、曲がったりするようです。(※著者による実物購入確認済み)
⑥プレート法の限界-爪甲表面の横幅長とプレート接触面長さとの問題-
プレート法の問題点としては、爪表面の長さとプレート下面との接触面における「ズレ」という課題があります。爪がまがっている状態では爪表面に「引張応力」が掛かっており、巻きを戻すに従い少しずつ爪幅が縮む傾向です。プレート装具本体においても「装具を爪に沿って曲げた時」には装具内側面に圧縮応力がかかり縮んだ状態となっており、爪が矯正されるに従い装具内面の「圧縮応力が軽減」して、装具内側の距離が少し伸びてきます。
このズレ力は、装具の厚さがあるほど強い傾向があり、巻き爪矯正におけるプレート装具は薄い方が爪表面とのズレが発生しにくいものと考えられます。
ワイヤー法でのズレはどうなるのか?
矯正される爪甲と装具のズレの問題はワイヤー法においては、
- マチワイヤでは矯正されるに従い、ワイヤーが爪下から突出する
- 牽引法であるVHO式ではそれ以上挙がらない
- フック+挙上法であるそがわ式においては「フック側」がやや突出する
という形で現れます。
ワイヤー法での爪甲と装具のズレは、よく言うとそれだけ効率的に矯正されているという証拠でもあります。マチワイヤにおいては、ワイヤーを元々少し短めに切断しておくなどでの対処が可能です。
また、そがわ式に於いても「事前の予備矯正」をしっかり行っておく、さらにフックをしっかりと爪端の形状に合うように調整し、きちんと爪端に装着することにより「フック側の突出」を最小限に抑えることができます。
プレート法では矯正力とズレが相殺される
プレート装具の限界は、「爪甲表面の引張応力」と「装具下面との圧縮応力」が、矯正力が掛かるに従って、逆方向のズレとなってしまい矯正力を打ち消していることになります。
プレート法においては、装着時での初期矯正効果の他に、プレートにより持続的に矯正力が掛かり続けることが理想なのですが、矯正されるにつれて「縮む傾向のある爪表面の横幅」と「真っ直ぐに戻るにつれ伸びていくプレート下面」が接着されてしまっているために、「せっかくの矯正力が相殺」されてしまっているのです。
しっかりと装具を接着するほど矯正時における装具と爪表面のズレが起きにくくなり、装具が巻いた爪を持ち上げる力を減じてしまう可能性があります。
ワイヤー法で矯正時に生じる爪甲表面と装具のズレは、「プレート法」では一体どこにいってしまうのか?
⑦どこを挙上していきたいかを追求して完成した矯正法
爪端に合致した形状のフックを現場で自由に作成出来る解放感!!
国内では2000年代にマチワイヤが「巻き爪矯正法」として医療機関向けに販売されたのを初めとして、現在では様々な巻き爪矯正装具が乱立しており、いったい本当に効果がある方法がどれなのか分からなくなってしまっています。
理想的な矯正法とは?
どの矯正法・矯正装具でも「一定以上の矯正効果」を得られることはできますが、
・爪端のより奥の方をきちんと治せる方法
・薄い爪、ぶ厚い爪など様々な巻き爪の状態に対応出来る方法
・爪が短く切られていても矯正可能な方法
・肉芽腫を形成し、浸軟した陥入爪でも確実に持ち上げられる方法
・より少ない矯正回数で改善できる方法
・ご高齢者の脆い爪にたいしても対応出来る方法
が待ち望まれていました。
理想的な矯正法の必要条件としては、
- 短い爪や浸軟した陥入爪を確実に挙上できる条件としてフック法であること
- フックで牽引するのではなく、爪端を確実に挙上できる方法であること、
- 矯正力を爪甲幅全体にしっかりと掛けれること、
- 爪前縁ではなく、爪端のより奥の効果的な部位に矯正力を掛けれること、
などが挙げられます。
矯正法の理想を満たすために
さまざまな条件を満たすには、治療の現場にて「患者さんの爪の状態」にあわせて適切な幅・大きさにフックを加工出来ることも大切でした。フック牽引法では挙がらなかった爪端も、3次元的なフック形状の大きさ・幅・長さを微調整し、かつワイヤーの太さで矯正力を調整することで爪端が割れにくい様に工夫されました。
独特の3次元フック形状は、プレート法が不得意な浸軟した柔らかい爪や短く切られてしまって「プレートを貼るスペース」がない場合にも装着が可能となりました。
爪表面の幅一杯に装着できる弾性ワイヤーは、爪に一部のみ接着しているだけなので弾性ワイヤーで挙上される爪の動きを妨げません。巻き爪を治すに当たって予備矯正として準備された「爪エレバ」などの補助装具は弾性ワイヤーが一番効率良く、矯正力を発揮できるようにサポートしてくれます。
たとえ、肉芽腫形成をしている陥入爪であっても、「コットン充填固着法」の数々の変法により、ワイヤー矯正に持ち込むことが可能となっております。
じつは、このような理想的な巻き爪矯正法が「2010年前後」には世の中には存在していなかったのです。「マチワイヤ・VHO式巻き爪矯正・ペディグラス」などを経験した「香川県三豊市のそがわ医院」の十川医師は自ら、金属加工工場と協力しながらワイヤー加工の研究に没頭し、様々な弾性ワイヤーを検討した結果として「現在、そがわ式で用いている弾性ワイヤー」にたどり着いたそうです。
⑧じつは挙がりすぎると困る面も・・・施術者が意図したように挙げたい!
当院では今年で「そがわ式巻き爪装具」を導入して10年目に入りました。当初1年はレジン樹脂硬化部分の剥がれなどの問題も多少ありましたが、慣れるに従い「フック+弾性ワイヤーによる挙上法」である「そがわ式の矯正力」に驚かされることになります。
それまでは、「マチワイヤ・VHO式巻き爪・BSスパンゲ」をメインに矯正を行っていたのですが、何度も矯正を繰り返しても「爪端の巻き・爪奥の巻きが治りきらず」に困っていました。
※令和6年1月現在
おそるおそる導入した「そがわ式」なのですが、徐々に太めのワイヤーを使い始めてみると、
・巻いている爪の反対側が過矯正となり内出血を起こす
・弯曲爪で2本ワイヤーでクロス型にワイヤーを掛けると爪母付近が持ちあがってしまい2枚爪となる
といった事象が散発してきたのです。
矯正力がつよいと「こんな事が起こってしまうんだ」ということを初めて知りました。このような案件でも実は「超弾性ワイヤーではない」という特徴により難なく問題が解決してしまうのです。
「そがわ式ワイヤー」は術者の意図に沿って、ワイヤーを元々ある程度曲げておくことで「爪の部位毎の矯正力」さえも爪をデザインするか如く調整可能なのです。
爪は左右対称に巻かない
巻き爪矯正装具のほとんどは、「爪は左右均等に巻く前提」で作られていることが多く「マチワイヤ・VHO式・BSスパンゲ・ツメフラ・巻き爪マイスター」などでは基本的に装具の左右差はありません。
比較的片側挙げを得意とする方法にはぺディグラスもありますが、じつは積極的に爪挙上の程度をコントロール出来る方法は「超弾性ワイヤーではないそがわ式のみ」なのです。
巻き爪矯正・そがわ式を学ぶには?
現在、そがわ式を習得するには下記の「十川医師のアメブロ」の連絡先にそがわ式を学びたい旨、メールを送りますと、十川医師からの個人的なレクチャーを受けることが出来ます。但し、地区ごとに施術者の人数制限が設けられております。
https://ameblo.jp/sogamaru/entry-12043410361.html
十川秀夫医師は、まだ現役で「香川県三豊市のそがわ医院」の院長をしております(令和6年1月現在)。巻き爪矯正に熱心な後任の先生もすでに決まっており、今後も希望者には講習を行っていく予定とのことです。
巻き爪矯正・そがわ式の目的
そがわ式の目的は、既存の巻き爪矯正法で治りにくかった「爪端や爪奥の巻いた状態」をきちんと治していくことです。この目的を達成するためには、患者さん毎に現場で「爪の状態にあわせたフック作成」を行う必要性があり、どのような方法論と素材(ワイヤー)が良いのかを考え抜かれて実現した巻き爪矯正手技が「そがわ式」です。
そがわ式の構成
そがわ式の構成は、①十川医師から提供される「そがわ式(SH)ワイヤー」、②十川医師からのオンライン個別講習による「ワイヤー曲げ+爪への接着手技」の指導が主となり、様々なワイヤー曲げの変法・応用、ワイヤー装着前の事前矯正手技、予防的なワイヤー装着法などから成ります。
そがわ式は年に1~2回程度、十川医師のアイディアにより「新しく手技が追加・改変」され、常にバージョンアップを繰り返しております。現在は、そがわ式は会員制となっており講習を受けたもののうち、「そがわ式」を継続して施術をおこなっていくことを希望した医師等のみに公開されています。
巻き爪矯正・そがわ式の特徴
多くの巻き爪矯正法が、超弾性ワイヤー・特別に細工されたワイヤー・弾性プレートなどの特殊な装具が必要なのに対して、「そがわ式」では一本の弾性ワイヤーのみのシンプルな構成となっております。
素材となるワイヤーがシンプルな分、独自な形状の3次元フック作成・爪甲表面にワイヤーを樹脂固定する技術に習熟が必要となります。そのため、手術などでもワイヤーを使う機会が多い整形外科や形成外科医師などの方が「そがわ式」に早く馴染みやすいかもしれません。
本当に医療機関に求められる巻き爪矯正法-そがわ式-
病院で行われる巻き爪矯正法には、代表選手として「マチワイヤ・VHO式巻き爪矯正」などがあります。一方で国の規制緩和の影響でさまざまな既存の矯正方法を模倣した巻き爪サロンが乱立してしまっています。
利便性を優先し、治療回数・費用が多少掛かって「そこそこ治れば良い」のであれば構わないのですが、本当に爪の奥が食い込み痛みが取れなくて困っている患者さんはどこに受診したらよいのか?・・・取り残されてしまっています。
このような時代だから本質的に巻き爪をしっかり矯正出来る方法が「医院・クリニックの医師」に求められているのです。「爪がぶ厚くて矯正を断られた・爪が薄くて爪専門の大学病院外来でも出来ないと云われた・他院でいきなり爪を切られてしまった・サロンの矯正料金が非常に高くて驚いて病院を探した・肉芽腫があり手術法しかないといわれた」など未だに多くの巻き爪でお困りの患者さんが当院を訪れます。
そがわ式の特徴とは?
①ぴったりフィットした3次元フックを患者さん毎に作成する
巻いてしまった爪端を確実に掴んで持ち上げるには「フック挙上法が理想的」です。一方で、爪奥のぎりぎりに隙間にフックを挿入するには「ワイヤーが皮膚に刺さらない」ような形状の工夫が必要でした。爪の厚さ・爪奥の隙間の大きさなどにも個人差があり、現場でのフック作成が必須です。
爪の厚さにぴったりフィットしたフックで、かつ爪奥の隙間にも痛くないように形状が合致し、3次元的に形成されたフックが立体的に爪端を上下から「きっちり掴む」ことよって、ワイヤー弾性による挙上力を余すこと無く「爪端の巻いた部分」にダイレクトに掛けることができるのです。余裕をもって形成された3次元フックは、矯正されるに従い「爪甲とワイヤーに多少のズレ」が生じても外れることはありません。
その場でのフック作成が無限大のバリエーションに対応
なお、矯正に使用される弾性ワイヤー自体を「その場で加工」し爪端の一番奥の隙間に装着可能な「そがわ式」を市販のグッズなどで模倣・実現することは不可能でしょう。既成品のフック法で患者さん毎にぴたりと合ったフックを作成することは極めて困難であり、緩いフックですと「爪端に余分な負担」を掛けてしまい効率的に矯正できなくなってしまいます。
★爪端の形状にぴたりと合致したフックが、ワイヤー矯正力をしっかりと巻き爪に伝える!
②矯正点が爪脇奥の理想的な位置!
巻いてしまっている爪全体をバランス良く持ち上げるには、「爪端のより奥側を挙上」することが理想的です。上記の現場で作成する3次元フックは爪脇の理想的な位置に矯正力を掛けるために必要な工夫です。
既存の矯正法や矯正グッズは「爪前縁にのみ装着」できるタイプか、爪脇に装着できるものでも「装具のフックが大きすぎて」手前にしか掛けられないものしかありません。フック牽引法である「VHO式」が唯一そがわ式と同等の爪端奥に装着可能なのですが、残念ながら爪端を牽引しても巻いた爪は効率的に持ち上げられません。
爪奥の「効率的に矯正できる部位」にフックを掛けることが出来て、かつダイレクトにその部位に「挙上力」を掛ける巻き爪矯正法が既存の方法論では不思議なことになかったのです。
そがわ式でしっかり爪端奥に施術を行っていくと、既存の巻き爪矯正ではみることのなかった爪根元が過矯正されてしまう現象に出会います。個々の爪の硬さ・柔軟性・脆さなどを考えて、矯正力を加減しなければいけないほど、「しっかりと爪奥の効率的な・理想的な部位」に矯正力をきちんと掛けていけるのが「そがわ式」なのです。
★まさに爪脇の少し内側の痛みのトリガーポイントを挙げられる矯正法
③巻いている爪縁を奥まで均等に矯正可能=フック側樹脂固定により矯正力を全体に
そがわ式はワイヤー法のため、爪端の一部のみが持ち上がり「前後の爪端が垂れやすい」という問題が残っていました。当院では「フック側の樹脂固定」を爪甲表面に施すことによって、爪端をプレート法同様に面での矯正をおこなうよう改良しております。
しかも、爪端下面に掛かった立体的なフックと表面の樹脂の押さえが相まってより確実にフック部分が爪をしっかり把持することで強力に爪端を挙上するのです。
爪下に掛かったフック先端は、独特な3D形状により爪下側の少し内側の「巻き爪を効果的に挙上できるポイント」を面で支えて持ち上げます。
★爪端に対する強力な矯正力をフック側樹脂固定により爪端全体に!
④爪全幅に渡り矯正・爪甲表面上をワイヤーが抑える形となり、爪が割れにくい
そがわ式では、3次元のフック形状が爪端をしっかりと挙上できるだけでなく、爪表面の上に沿ってピタリと弾性ワイヤーが「ストレートな形状なまま密着」することによって、ワイヤー反発力が全て爪端を挙上する矯正力に置換されることが特徴としてあげられます。
爪の上側に沿ってワイヤーが「直に接する」ことで、爪に余分な剪断力が働かないため、爪が割れることが少ないばかりか、多少割れてしまった場合でもそのまま矯正していくことが可能です。
爪に穴を開けないので「穴を開けた場合」に比べて余分な負荷が爪に掛からず、ワイヤーによって作用する矯正力が「完全に爪を挙上すべき方向と一致」しているので、効率的に矯正できるのです。ワイヤーが爪甲より浮いて装着したり、波打った形のワイヤーでは爪は持ち上がらないのです。
★ワイヤー矯正力と巻き爪を挙上すべき「ベクトルが完全一致!」するため爪が割れにくい
⑤爪の状態に応じて、爪の部分ごとに矯正力を調整可能!
巻き爪は全ての部分で均等に巻いていることは稀で、爪の両側がステープル状に巻く、片側のみ「つの字状」に巻く、真ん中部分が「三角屋根型」に巻くなど、巻き方・巻く部位は様々です。全ての部分に強い矯正力を掛けてしまうと、そのほかの部分が過矯正になってしまうことがあります。
その様な場合には、一番巻いている部分に最大の矯正力を掛けて、その他の部分には矯正力を余り掛けないようにする必要性が生じます。あえて「超弾性ではないワイヤー」を選択したそがわ式では、ワイヤーの曲げ具合と樹脂固定部分のバランスを加減することで爪の部位ごとの矯正力の微調整さえできてしまうのです。
★そがわ法のみ唯一=必要な部分に最大の矯正力を掛けることができる!
⑥短い爪、切り込んだ爪、割れた爪も3次元フックにより矯正可能
そがわ式では、先端のフック形状・大きさ・幅・向きを矯正の現場で調整していきます。深く食い込んだ巻き爪には3次元的に前方より矯正力を掛けたり、深く切り込まれてしまった巻き爪・陥入爪のわずかな隙間に斜め前から矯正を掛けたりすることも、そがわ式では朝飯前です。
フックの掛け方のバリエーションがケースによって「無限大」といって良いくらい応用が効く矯正法がそがわ式なのです。
★他法では爪横同士の矯正しかできない⇔そがわ式では前方・斜め・後方から前方など矯正方向が自由自在!
⑦フック+1本ワイヤーによる片側挙げ矯正が可能
そがわ式の原法は2本のワイヤーを爪の両側に掛けて、互いに倒し込むことで矯正を行っていました。ワイヤー固定法が、「光硬化性樹脂」に進化してからは、1本ワイヤーによる片側挙げ巻き爪矯正にも対応出来るようになりました。
じつは、巻き爪のほとんどは左右対称に巻いているように見えても、片側が強く巻いていることがほとんどです。そがわ式は現在、ほとんどの巻き爪矯正が1本ワイヤーによる施術で済むようになり、施術時間や患者さんへの費用負担も抑えられるようになりました。
★実は、巻き爪のほとんどは片側巻きが多い⇒対処できる矯正法は少ない
なお、上記の3次元フック作成、基本的ワイヤー装着法、短い爪へのフック装着、1本ワイヤーによる片側挙げ矯正は、「現在のそがわ式」における基本手技となりますので、本稿では詳しく触れません。
もし、そがわ式を学びたい先生がいらっしゃいましたら「そがわ医師のアメブロ」より直接、十川秀夫先生にご連絡をとり、オンライン個別講習をお受けになることをお勧めいたします。
そがわ式巻き爪矯正を最大限に活かすコツとは?
これより以下は、そがわ式巻き爪矯正の施術を行ってる先生方のみを対象とした内容となります。
①そがわ式ワイヤーの特性とは?
「施術者の技術によって爪端奥の一番挙げたいところを、フック挙上法によりしっかり持ち上げられる唯一の方法がそがわ式」
超弾性でないことが「そがわ式」最大のメリットであり、フックを3次元にぴたりと形成する「ワザ」が必要となります。さらに、本稿では「正式なそがわ式で採用」とされていない当院で独自に工夫している内容を全国のそがわ式を行っている先生方へ発信していきたいと思います。
ワイヤー特性について詳しく解説!!
そがわ式のワイヤーは超弾性でないことが特徴なのですが、肝心の矯正力を爪に掛けていくときには、どのように使えばよいのでしょうか?ワイヤーが超弾性でない件については、十川医師からは「多少曲がってしまってもすぐに矯正力が落ちる訳ではない」という説明になっています。
たしかに、ある一定以上「そがわ式ワイヤー」を曲げてしまうと「曲がり癖」が付いてきてしまいます。「曲がり癖が付く=フック作成が自由にできる」という良い面もあるのですが、どのようなイメージで矯正をすれば良いのか、はじめて「そがわ式」を行う先生は迷ってしまうと思います。
幸い当方は大学医局に在籍時、骨固定力に関する実験を行っていた時期があり「プレートやワイヤー固定時の強度」に関しては多少なりの知識と測定に用いるプルプッシュゲージを持ち合わせていました。解剖学教室に出入りしていたときに使わせて頂いた「プルプッシュゲージ」とは、押しても引いても荷重の程度を測定できるフォースゲージ(計り)のことです。
そがわ式SHワイヤーの弾性は優秀だった
ワイヤー弾性や強度については調べても文献が見あたらず、わずか当方出身大学よりの会議録があるのみです。
測定方法については、巻き爪のカーブに見立てた直径1cm、2cm、3cm、4cm、5cmの円柱状の棒を用意し、爪幅を成人男性でおおよそ20mmと想定しました。「爪端から対側の爪端までワイヤーを曲げて倒し込んだ場合」を想定して必要な力をプッシュゲージ側で計測しました。測定したそがわ式ワイヤーは、0.30、0.38、0.42、0.46(mm)の4種類となります(第10世代ワイヤー)。
測定結果は以下のグラフのとおりです。どの太さに於いてもカーブが強くなるについてワイヤー反発力(=矯正力)は挙がりますが、直径2cmより強い弯曲でワイヤーを倒し込むと矯正力の上昇カーブは緩やかになります。また、直径2cm以上より強く曲げてしまうと曲がり癖がつき始め、ワイヤーを離しても元のまっすぐなワイヤーに戻らなくなります。
一方で、元の直線には戻らないものの「そがわ式ワイヤー0.46」で直径1cmのカーブまで曲げたときに測定できた反発力は、「超弾性ワイヤー0.6」よりも強かったのです。すなわち、直径1cmまでのカーブでは曲がり癖はつくものの「そがわ式ワイヤー」では大きく矯正力が落ちることはないことが判明しました。
そがわ式ワイヤーを最大限活かすには?
また、ワイヤーを曲げても元の直線にまで戻る「限界のカーブ値」は直径2cm+αのところにあるようです。すなわち、本ワイヤーがきちんと元のまっすぐまで戻る「フックの法則」が働く範囲は直径2cmより緩いカーブということになります。
ワイヤー反発力を落とさないよう使用するには、予備矯正などを前もって行って「できる限り直径2cmの弯曲以上」の状態で巻き爪に装着できれば、「ワイヤー矯正力を最大に活かせる」ことになります。
当院では「ワイヤー装着時にも」、単にフックを掛けてワイヤーを倒し込むだけでなく、補助的にそがわ式用ペンチ、モスキートペアンおよび用手的にも爪の挙上を補助して、ワイヤーだけに負担を掛けないように矯正するようにしております。
ワイヤー矯正力の一番美味しいところを活用できる技術が必要
★様々な予備矯正法、補助手技を使ってワイヤーだけに負担を掛けないようにして挙上するのが、そがわ式を最大限に活かすコツの一つです。
②予備矯正=爪エレバの改良強化版・・・今すぐ治したい!
そがわ式の基本は爪端の隙間に、フックを掛けて巻き爪を挙上していくので、多少の予備矯正が必要となります。軽度の巻き爪では、ピンセットや爪ゾンデなどで軽く挙上して、爪横に少しだけ隙間を作れれば、そがわ式ワイヤーは挿入可能となります。
一方で、「爪の巻きが強い・陥入爪で肉芽が出来ている」などで爪端の隙間が出にくい場合には、いくつかの工夫が必要となります。
・用手的挙上+爪縁引き下ろし
・爪ゾンデでの爪前縁下確保+掃除
・コットン爪縁挿入+底すくい
・ピンセットで爪下挙上+爪ゾンデで爪端挙上補助
・そがわ式ペンチでの挙上
・モスキートペアンでの爪アイロン法
・爪表面を削る、溝掘り+爪下角化物除去
・爪縁横の確保・掃除
・爪エレバ強化版
当院で行っている主な予備矯正(事前矯正)は上記の通りですが、詳しくは別ページにまとめていますので、ご参考にされてください。
イメージとしては、予備矯正で巻き爪の3分の1程度は治してしまい、ワイヤー施術により残りの3分の1を挙上して、さらに残りの3分の1は施術後のワイヤー弾性により1~2週間掛けて徐々に持ち上がってくる感じとなります。
③3次元フック作りについて
そがわ式における具体的な「フック作成方法」は、本矯正法の根幹に関わる部分ですので、本稿では詳しく述べません。新規ワイヤー法ではなく、1本の「生ワイヤー」からの作成を前提にお話ししますので、ご了解の程お願い申し上げます。
上記の様々な予備矯正法にて、フック挿入時には、ある程度爪端奥の隙間が確保されていると思います。爪甲遊離縁の隅の形に沿って「ピタッと綺麗にフックが掛かる」ことがそがわ式での理想形となります。
フック挿入準備として、爪をピンセットで持ち上げながら、爪端ゾンデで更に爪奥の隙間を少し広げたり、爪下の角化物をきれいに掃除をしていきます。更に「強化型爪エレバ」にて爪挙上を行うと、爪端がぐんと持ち上がりやすくなります。
そがわ式フック作成のコツ
フック作成において参考となるポイントは、
・爪遊離縁の隅と爪側縁が作る角度
・爪側縁の幅(奥行き)
・爪縁の厚さ
・爪端の巻き具合
などになります。
まずは、フック先端が奥の皮膚に当たらないように第一フック部分を曲げていきます。第一フックは90度以上しっかりと角度を取るようにします。
第二フックは爪下の隙間の幅を参考に曲げていきます。第二フックまでの距離はそのまま、爪下に引っかかる部分となりますので、可及的に長めのほうが爪下を安定して持ち上げることが可能です。余り第二フックまでの幅が長いと爪下皮膚を刺激してしまうので、微調整は必要です。
なるべく、ピッタリの3次元形状のフックを作る為には、第二フックを曲げきる前に、一度仮に爪に引っ掛けてみるのも良いでしょう。フックの爪への仮装着を行うと、必然的に第三フックの幅と角度が決まりますので「爪端の厚さ・形状」にフィットしたフック作成が容易となります。
フックを真横から見た形状は「U字状」というより「つの字状」とした方が、爪挙上時に安定して爪端をフックが把持してくれるイメージです。さらに、ワイヤーを対側に接着するときの方向を考えて、第四カーブを作ると良いでしょう。
そがわ式のフックは基本曲げを2回した後に、フックを立体的に形成していくので、正確には合計4~5回程度の曲げ操作を行っていることになります。最盛期には年間で500例以上の矯正を行っていましたので、当院では上記の立体的フック作成は10~15秒程度で行っております。
★爪端の形状・厚さ・奥行きにピタリとあったフック作成がそがわ式の神髄であり、爪を効果的に挙上する原動力となる=既成のフックでは再現不可
④ワイヤー対側のへ字の作成のコツ
そがわ式のワイヤーを最大限活かすコツは、ワイヤー弾性の特徴を考慮しつつ、事前矯正をしっかりとおこない、ピッタリと爪端にフィットする3次元フックを作成することにあります。これらのコツをマスターし、ワイヤーを対側に倒し込んで固定をそのまま行うと起こり得ることとして、対側の爪が過矯正されてしまうことがあります。
巻き爪矯正をしっかりと行えるようになると「分かるのです」が、爪が一見両側ともおなじように巻いていても、爪の厚さ・硬さの微妙な違いにより、巻き方に左右差があることが多いのです。そがわ式原法では、「対側のへの字」作成を1箇所としていますが、当院では「への字作成」の追加をもう1箇所作成して2箇所で「への字」を常に作るようにしています。
への字2回曲げが爪対側の安定性につながる
この操作を行うようになってから、「巻き爪の対側がわの過矯正」が出来ないようになりました。巻き爪矯正では、ひたすら爪全体に強い矯正力を掛けることは避けるべきであり、部位により矯正力をコントロールする必要性があったのです。
さらに、対側の過矯正が解決することで「巻いている側の爪端」に最大限の矯正力を掛けることが出来るようになってくると、巻いている側の過矯正も起こるようになります。これは既存の矯正方法では経験しないことでした。
そがわ式以前では、巻き爪がなかなか持ち上がらなくて困っていたのが、各種予備矯正法も取り入れたいまでは使用するワイヤーも以前より「やや細め」となってきています。
★唯一過矯正が起きてしまうのがそがわ式=矯正しすぎにも注意が必要なほど効果的な巻き爪矯正手技
⑤より奥をしっかり矯正するフック側樹脂固定
フック挙上法のメリットは、狭い隙間でも確実に爪端を引っ掛け挙げられることです。一方、爪端全体が手前~爪奥まで巻き込んでしまっている場合には、「一点で爪端を持ち上げるワイヤー法」がやや不利となります。
上記の写真はペディグラスの根元上げですが、奥行きのある装具で面での矯正を行っていることが分かります。BSスパンゲに於いても、ノーマルタイプより端が幅広いハイフォームタイプがあるように、「爪端が奥まで巻き込んで」いる場合には「面での矯正が有効」です。
フック側樹脂固定のメリット
そがわ式で面での矯正を行うには、「矯正を掛けたい巻き側」に小肌の背切りを行い、樹脂を小さな小判状に付けて光硬化を行うだけの処置で完成します。より奥まで巻いている場合には爪奥の表面の甘皮をしっかり除去してから「長細めの小判状に樹脂」をつけていきます。
本法を行ってみると分かるのですが、爪下側の3次元フックによる支え+巻いている爪端表面を樹脂がしっかりと掴んで、そがわ式ワイヤーを倒し込むにつれて面での矯正となっていきます。これにより、当院ではワイヤー法の弱点である「ワイヤーが掛かった部分」のみが挙がりやすいという問題がほぼ解決されております。
爪端が薄いor弱い方では、細めのワイヤーを並列に2本掛けるなどのオプションやプレート法同様にフックを掛けないで「より奥側に」ワイヤー+光硬化性樹脂のみで固定するという方法もあります。
なお、フック側の樹脂固定をおこなったあとには、一気にワイヤーを対側に押し倒すのではなく、爪端全体の挙がり具合をみながら、そがわ式ペンチや爪ゾンデなどで挙上を補助しながら持ち上げていった方が、ジワジワと巻き爪が治ってくるイメージです。
硬くなった関節やスジを伸ばすように、この段階でゆっくり時間を取って力を間欠的に掛けながら徐々に持ち上げて行った方が、爪や爪下の皮膚などに負担が掛かりにくくなります。
フック側を樹脂固定しても問題なく矯正される
フック側の樹脂固定はそがわ式では「正式に採用」されておらず、その理由として矯正されていく巻き爪表面と装具のズレの問題を十川医師より指摘されております。一方で、予備矯正をしっかり行っておく・フック形状をピッタリに作成する・フックをしっかり爪脇に装着するなどの対策で、矯正時に起こる爪表面と装具のズレは最小限で済みます。
実際にフック側樹脂固定を行っても問題なく矯正されてきますし、矯正が効いてくると「樹脂固定した側のフック」も少しだけ爪端から出てきます(最大0.5mm程度)。
すなわち、矯正をきちんと掛けていけば樹脂固定(幅2,3mm)を行った下で「ワイヤーと樹脂」の間に地層が少しずつズレるような滑り現象が起きてくるものと考えられます。但し、この滑り現象が期待できるのは表面が平滑な生ワイヤーのみとなりますのでご注意ください。
更に、そがわ式でしっかり矯正を掛けていくと、巻き爪の過矯正という問題も起こります。矯正したい側の爪根元上げが効き過ぎてしまい、根元が挙がりすぎて内出血を起こす現象も生じます。巻き爪矯正法のなかで唯一スピード違反な方法がそがわ式であり、当院でも矯正のし過ぎには注意をして施術を行っております。
★フック側樹脂固定で面での矯正が可能となる!
⑥爪甲面への固定法と樹脂の処理について
そがわ式でワイヤーを爪に装着するにあたり、現在は光硬化性樹脂を主に用いております。そがわ式は十川医師により、年に1,2回のアップデートが常に行われており樹脂固定法も少しずつ改良されてきました。
なお、当院では11世代で行われていたDカッターでの小肌の背切りをメインに固定面を作成しております。改良当初のDカッターはやや細めで弱かったので、自院にて独自に大きめの鎌メスを改良して強化型Dカッターを作成し、小肌背切り法にて固定を行っております。
現在ではキノコドリルによる溝掘り法に固定法が変わっておりますが、爪の薄い方などでは「小肌の背切り法」が「安全性が高いか」と感じております。
当院ではフック側樹脂固定と供に、対側樹脂固定もやや大きめとしてワイヤー固定側の過矯正を予防し、かつ樹脂を取れにくくなるように工夫しております。樹脂固定はあまりに大きいと審美的に問題ですので、取れない範囲で周囲に馴染むよう平滑に削っております。
★樹脂固定部分は各々の先生方の気に入った方法でも問題ありません
⑦平行2本掛けについて;クロスではなく・・・
そがわ式では非常に巻きが強い症例において、両側面からワイヤー2本での矯正を行う場合があります。そがわ式のオリジナルのアイデアは平行型2本装着なのですが、より根元側も含めた矯正効果を狙って「2本クロス掛け装着」が十川医師より指導があります。
クロス2本掛けのメリットは、爪先と根元側に同時に矯正力が掛かるので大変効果が高いことです。当院でも、当初はクロス2本掛けを多用して、根元まで高度に巻いた巻き爪を効果的に矯正出来ていました。クロス掛けのデメリットはワイヤーと樹脂の爪表面に占める割合が多くなり、見た目がやや悪いことです。
一方でそがわ式巻き爪矯正に慣れて、より効果的に矯正が出来るようになると、やはり根元の過矯正という問題が生じてしまいます。そのため、各種予備矯正やフック作成になれた当院では、現在クロス2本掛けを行うことはほとんど無くなり、変わりとして「オリジナルに近い平行型2本掛け」を行うようになっております。
そがわ式に慣れたら平行2本掛けを!
平行2本掛けは、2本のワイヤーを同時に扱い「互い違いに」きれいに並べて装着するので、手技は1本ワイヤーより煩雑です。
メリットとしては、プレート法に劣らず審美性が良いこと・根元の挙がりすぎが起きないこと・超弾性でないワイヤーであることにより、それぞれのワイヤー曲げを調整してどのように爪を挙上するかデザインできることになります。
なお、本法で効果的に矯正を行うと内出血や剥離は起きないものの、かなり巻いている弯曲爪も治ってしまうので、連続矯正に爪が耐えられない場合があります。その場合には一旦、矯正ワイヤーが限界になるまで爪が伸びたときに、「根元で仮固定を行って」しばらく爪を休ませてから再び時間を置いて矯正を何度か行っていく必要も生じます。
爪が強く巻いていたり、高度の弯曲爪では下床の爪床部分も固くなってしまっていることがあり、爪矯正のスピードについてこられない場合があるのです。爪の状態に応じて矯正スピード・矯正力の調整が必要なこともそがわ式の注意点となります。
★そがわ式に慣れた先生方では、平行2本掛けもオススメ!そがわ式のきれいな平行2本掛けは「スキーのパラレル」と一緒=上級者ほど綺麗に2本がピッタリ揃う
⑧挙上しない方が良い場合は?
3次元装着法・より小さなフック作り・対側の矯正力調整などその他多くのコツがそがわ式にはありますが、これらは「そがわ式」の本編にて十川医師より直接ご指導があります。
一方で以前は、当院でも陥入爪の矯正も積極的に行って来たのですが、多くの症例を経験させていただく内に、爪の巻きが余り強くなく陥入爪の肉芽形成のみの方は「長谷川式変法コットンパッキング」で治ってしまうことが分かって来ました。
爪端が余程巻いている陥入爪以外では、当院ではまず通院して頂き「コットンパッキング法」をご自身で行えるようにご指導させていただいております。
せっかくワイヤーを掛けても、結局コットンパッキングがうまく出来ないと治ってこない・・・、ワイヤーを掛けても若い方では1ヶ月足らずで爪が伸びてしまい、ワイヤーの効果が続かないなどが理由となります。
以上が、当院が独自に工夫を行っているそがわ式を最大限活かすコツとなります。せっかく「そがわ式」をはじめても、中には曲がってしまう弾性ワイヤーをみて、他法に流れてしまう先生もいるようで、残念でなりません。
そがわ式を行っている施設の中で、もしご質問などありましたら、当院までメールでお問い合わせ頂けますと幸いです。
そがわ式巻き爪矯正のメリット・デメリット
次にそがわ式巻き爪矯正療法のメリットとデメリットをまとめてみます。
メリット
・どのような巻き爪でも対処可能な唯一の方法論!
・陥入爪で肉芽があっても矯正療法に持ち込める!
・弾性ワイヤーの反発力が、すべて最大限に巻き爪を治す力に!
・特殊に工夫された3次元形状のフックが巻き爪を確実に挙上
・爪に剪断力が掛からず割れにくい矯正法、陥入爪や短い爪でも矯正可!
・片側巻きなどの特殊な巻き爪、厚い爪・薄い爪にも対応!
・爪エレバを初めとする事前矯正手技群!
・爪を伸ばさなくても、短い爪でも矯正が出来る!
・わずか5種類の太さのワイヤーでほとんどの巻き爪に対応可能!
・難易度の高い巻き爪では、3~4本の同時装着が可能!
・施術者の腕でプレート法同様の美しい仕上がりに!
・予防的な矯正も根元側樹脂固定により可能に!
・従来法で治りにくかった爪端・爪根元の矯正も!
・過矯正になることもありえる強い矯正力!
・常にアップデートされている進化し続ける矯正法である!
デメリット
・3次元的なフックを作成する技術が必要
・超弾性ではないので、ワイヤー特性を活かして使いこなす技術を要する
・フック作成+樹脂固定が正確にできない初心者の施術だと取れることがある
・術者が慣れないうちは、矯正されるにしたがってフックが突出することがある
・過矯正を防ぐために術者の経験が必要となる
・十川医師のアップデートにより方法がしばしば変更となる(大先生のきまぐれ?)
・個人の先生が開発したアイディアについていく気量が必要
などが挙げられます。
そがわ式巻き爪矯正の問題点
非常にすぐれた巻き爪矯正法である「そがわ式」ですが、患者さんにとっての問題点として、
・巻き爪サロンの様に宣伝をしている訳ではないので、中々対応医院が見つけにくい
・マチワイヤ、VHO式に比べてマイナーであり対応できる医院の絶対数が少ない
・医院での施術のため、順番待ちや施術時間の制限がある(利便性が悪い)
また、医院・クリニック側の問題点としては、矯正をまじめにしっかり行うほど時間が掛かり、医師一人が対応すると自費料金も含めても、採算が取れない場合が多いことです。事実、そがわ式を導入したいと思った病院勤務医の先生が上層部から巻き爪矯正は不採算となるため、本法採用を見送るように通告された例もあったようです。
実際に1回の矯正施術で、7割以上の方が治ってしまうそがわ式では、全ての患者さんがリピートしないため、決して営利優先でおこなう方法ではありません。
★本当に巻き爪で困っている方をなんとかしてさしあげたいという気概をもって施術・治療に取り組む必要があるのが「そがわ式」
巻き爪は自分で治せ・巻き爪無痛治療の内容抜粋
①巻き爪は自分で治せ!
平成25年(2013年)に十川医師が執筆した著書となります。2012年当初、そがわ式巻き爪矯正(SH法)を発表した十川医師は本法をひろく患者さんご自身で行うことを前提にお考えになったそうです。本書は現在でもamazon等で市販されており購入が可能です。
著書の目次は、
・巻き爪と陥入爪
・従来の治療法
・弾性ワイヤー法、VHO式、SH式の比較
・SH式巻き爪治療装具の実際の症例
・SH式巻き爪装具自己治療の諸条件
・SH式自己治療装具の実際
・自己治療は困難と判断した時どうすればいいか。
となっております。
当初は「そがわ式」は、SH式と呼称され「Spring & Hook法の略」とされていました。偶然にも十川秀夫医師のイニシャルもSH (=Sogawa Hideo)であることから、SH式という呼び方が気に入られていたようです。
自分で治せは自己治療をめざした
本書の内容は、巻き爪と陥入爪の違いから説明がはじまり、従来の手術法やガター法・人工爪法の問題点について言及しています。巻き爪矯正については、弾性ワイヤー法(マチワイヤ)・VHO式と本法の矯正理論の違いについて触れております。
実際の症例提示のあとで、装具は買い取り品とレンタル品を想定していたようです。もしも、ご自身でできない場合には、その時点では全国で8施設でしか本法を行っておらず、地区限定で広告を行っているとあります。
本著書以降は、全国の巻き爪を行っている施設に個別にダイレクトメールを郵送しており、翌年になり当院にも「そがわ式」へのお誘いがありました。
②巻き爪無痛療法―そがわ式はなぜ痛くないのか?―
2020年に出版された本書は、「巻き爪は自分で治せ!」が巻き爪患者さん自身を対象としていたものを、主に医師向けに詳しく書き直したものとなります。
名称も「そがわ式」に統一され、ワイヤーの名称がSHワイヤーとなっております。そがわ式が開発されてから8年経過しており、その時点での「そがわ式に関する手技の大集成」となっております。
本書の内容は、
・巻き爪と陥入爪
・陥入爪の装具療法、
・従来の手術治療法
・そがわ式巻き爪矯正法
・母趾の麻酔について
・そがわ式をマスターするには?
・爪はなぜ巻くのか?カンジキ理論など
・全国のそがわ式実施施設紹介
となっております。
そがわ式手技の総まとめ
主な記載事項としては、①巻いていないのに喰い込む陥入爪・従来の矯正法および手術療法をはじめ、②「そがわ式が得意とする」手繰り寄せ手法の「外堀、内堀、本丸攻め」について、③長谷川式コットン充填法およびそがわ式観血的プルイン法(ワイヤー併用法も含む)、④斜めがけおよび3次元装着、⑤巻き爪の予備矯正である爪エレバ法についてとなっています。
★巻き爪に関するメカニカルフォース理論やカンジキ理論は興味深いものとなっており、現在でも当院の巻き爪・陥入爪治療の基本コンセプトとなっております。
そがわ医院訪問記/香川県三豊市
2014年春に、そがわ式を取り入れた当院ですが「そがわ式巻き爪矯正」に次第にはまっていくことになります。何故なら、自身でVHO式とマチワイヤを試験的に組み合わせたり、マチワイヤを曲げたこともある経験から本法を使いこなせたら「まさに理想的な巻き爪矯正になる!」との直感があったからです。
当時は、そがわ式の手技・理論に疑問が生じると、十川医師にすぐにメールをしてしまって「質問魔」と化していました。まあ、中学受験塾などでも質問をよくする子は、「出来るようになる」とも云われておりますので、十川先生からも当時は根気よくお返事をいただいておりました。
翌年の2015年になり教授交代をきっかけに大学を退職予定だった当方は、親の跡を継いで開業したら2度とチャンスはないと思い、ついには「そがわ医院の見学」をお願いしてしまいました。
そがわ医院は、香川県の西部・観音寺の近くにあり、東京からですと「新幹線と在来線」を乗り継いで4時間半ほど掛かります。
十川医師との対談とそがわ医院訪問
岡山駅からは予讃線特急しおかぜで、1時間少しで観音寺駅までいくことが出来ます。日曜日夕方に現地につき、十川先生とお会いすることが出来ました。その後、観音寺近くの琴弾荘で会食をしながら、そがわ式について直接さらに詳しくお話しを伺う機会を得ました。
翌日は、そがわ医院を実際に訪問させていただき、そがわ式巻き爪矯正の患者さんも見学させていただくことが出来ました。そがわ式が開発された現場での治療を見ることができ、非常に感激したのを覚えております。
いつかは、そがわ医院訪問につきブログ等に残したいと思っていましたが、なかなかHP上で巻き爪に関して詳しく書く機会もなく、10年近く経ってしまいました。そがわ式の聖地巡礼をさせていただいた以降、未だにそがわ式以上の巻き爪矯正に出会うことはなく、現在に至ります。
★本稿の原案は、十川先生とのメールのやりとり、及びその当時の十川医師との対談が元となっております。
まとめ
施術者の技術を必要とはしますが、現時点で巻き爪の奥の方の「本当の巻き」を治せる理想の巻き爪矯正法が「そがわ式」です。一方で、「あまりに巻き爪がなおってしまう・手技をマスターするためにややコツが必要」などの理由から十川医師は本法を、一つの都道府県に1~2名のそがわ式をマスターしたもののみがいれば良いとお考えのようです。
そがわ式は、ご興味を持った先生のみに「一子相伝」の如く個別にご指導があるだけなので、あまり多くの医師に広まっておりません。十川医師は、「そがわ式を手術術式のひとつ」のようなものとお考えのようで、けっして装具を広く販売して利益を得ようとはまったく考えておりません。
そがわ式は、「そがわ式SHワイヤー・そがわ式に必要なフック作成のコツ・樹脂固定法」の基本手技と、3次元フック作成の変法などの数々の応用手技からなる治療手技体系みたいなもので、決して上記の本や文献を読んだり、見よう見まねで針金を曲げてみても、ご自身で出来るものではありません。
そがわ式の講習を一度受けたあとには、ご自身で施術を行ってみて「ワイヤー曲げをマスターしたり・樹脂接着手技を完全に」していく必要もあります。実際に当院にかなり熱心にそがわ式を見学にきていた先生も、ワイヤー曲げを1回で完全に覚えることは難しいようでした。患者さんの爪の状態毎に現場でぴったりのフックを作っていくには、ある程度の数をこなして、慣れていく必要があります。
あとがき
今回このような形で、そがわ式について長い文面を書かせていただいたのは、「少しでも全国のそがわ式実施医院の先生方へのヒント」になればという思い、および当院で取り組んできた工夫をなんらかの形でまとめて残して置きたいという気持ちがあったからです。
たぶん、今後にも余程画期的な素材や方法論がでてこない限りは、「そがわ式以上の巻き爪矯正法はない」と確信しております。
「そがわ式」は未だにマイナーな矯正手技で、施行医院も少ないのですが「本当に巻き爪・陥入爪でお困りの患者さん」のためにこの世に残さなければならない治療手技です。
今回、「当院でのそがわ式に関するコツ・理論」などを公開した訳は、全国でそがわ式を行っている先生方の「そがわ式をマスターするための足掛かり」となり、そがわ式が今後も少しずつ広まっていくことに当院も寄与できればと考えているからです。
★巻き爪矯正の理想形・奥義とも云えるそがわ式は、今後も世の中に残るべき「巻き爪・陥入爪治療体系集」です。